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10月から自己負担増となる保湿薬「ヒルドイド」について

2024/05/13

ヒルドイドってどんなお薬なんですか?

ヒルドイド®はヘパリン類似物質と呼ばれる高い水分保持作用を持つ保湿剤で、アトピー性皮膚炎や皮脂欠乏症などの乾燥性皮膚疾患を適応症として処方可能な薬です。ソフト軟膏、クリーム、ローション、フォーム(泡製剤)の4剤型があり、いずれも高い保湿効果が示されています。貨幣状湿疹やアトピー性皮膚炎などの湿疹・皮膚炎群の背景には皮脂欠乏症が関与していることが多く、保湿剤の併用により肌を保湿し、症状を軽減させます1)

ジェネリック医薬品とはなんでしょうか?

〝後発(ジェネリック)医薬品〟は、「先発医薬品と同一の有効成分を同一料含み、同一経路から投与する薬剤で、効能・効果、用法・用量が原則的に同一であり、先発医薬品と同等の臨床効果・作用が得られる医薬品」と定義されています2)

医師が処方する〝医療用医薬品〟のうち、いわゆる〝新薬〟と呼ばれるものは、製薬会社が何年にもわたる歳月を経て、数百億ともいわれる費用をかけて開発されるもので、開発した製薬会社は10年間の特許期間中はその薬剤を独占的に製造・販売する権利が与えられています。

ただし特許期間を過ぎると、他の製薬会社が「同じ有効成分」を使用した薬を①安価な開発期間や開発費で、②臨床治験も必要なく、③人体に対するデータも先発品に比べ20%以内に収まっていればよい、という基準をクリアすれば製造・販売することができ、したがって新薬より低価格で販売できるようになります。

厚生労働省によれば有効成分が同等でその有効性や安全性に違いがないとされています3)

ジェネリック医薬品が推奨される理由はなぜでしょうか?

日本では国民医療費が45兆円と増大しておりそのうち約10兆円が薬剤費であると報告されており4)、健康保険組合でも医療費の増加により財政が危機的状況となっています。それに伴い、低価格で新薬と同等の治療効果とされるジェネリック医薬品の普及が求められています3)。保険薬局でジェネリック医薬品を希望すれば、後発薬品がある場合は変更が可能です。

ジェネリック医薬品の問題点はなんでしょうか?

ジェネリック医薬品は、新薬と有効成分が同じとはいえ、添加物や製造過程が異なるため十分な効果が得られないことや、予期せぬ副作用がみられる可能性も指摘されています。

また、医療薬品情報担当者の数が少ないため、医師への情報提供が不十分であるとされています。先だっても、2020年大手ジェネリックメーカーが製造販売した抗真菌薬に睡眠導入剤が混入、数百名から健康被害が生じる事案が発生しました5)。その後、複数の製薬企業において医薬品の製造上の問題や不正が発覚し、業務停止命令などの行政処分がなされた結果、全国的に一部の医薬品において供給不足に陥り現在も解決に至っていません6)

このたび自己負担増となるのはどんな制度なのでしょうか。

今年、厚生労働省は2024年の10月から特許が切れた医薬品について、ジェネリックの販売から5年が経過した医薬品や、後発薬への切り替え率が50%以上になったものについて患者負担を引き上げることが決定しました7)。わかりにくいのですが、先発薬と後発薬の差額の25%が自己負担化されることになります。ヒルドイド®では100g約550円から約810円へと負担が増大します。

対象となるお薬として保湿薬「ヒルドイド®」のほか、抗ウイルス薬「タミフル®」、抗不安薬「デパス®」、湿布薬「モーラス®」などになります。特にヒルドイドでは美容目的に保湿薬を処方するケースもあり問題となっていました。ただし、医師により医療上必要があると判断した場合は引き上げの対象外であり、現場での判断が必要となります。

先発品がお肌に合い、先発品が必要な患者さんは〝医学的に診断を満たし、先発品の投与が医療上の必要があるかどうか〟を医師に判断いただき、先発品をこれまで通りの3割負担のお値段で処方してもらうか、診断を満たさないため追加の料金をお支払いいただいても先発品を希望されるか、あるいは後発品に変更するかを担当医師と患者さんに判断いただく必要がありそうです。

参考文献

  1. 医薬品インタビューフォーム ヒルドイド, 2023
  2. 厚生労働省、後発医医薬品の使用促進について
  3. ジェネリック医薬品 Q&A 厚生労働省, 2012
  4. 令和3(2021)年度 国民医療費の概況 - 厚生労働省
  5. 薬剤学, 83 (4), 195-198, 2023
  6. Organ Biology, 30(1), 28-35, 2023
  7. 日本経済新聞社, 2024.4.22 記事より引用

コラムニスト|紙屋町やなせ皮ふ科クリニック 院長:栁瀬 哲至

紙屋町やなせ皮ふ科クリニック

診療内容

皮膚科・皮膚外科・美容皮膚科・小児皮膚科・医療脱毛・レーザー治療・ケミカルピーリング

所在地・アクセス

〒730-0031 広島市中区紙屋町2丁目3−20 SOCIO SQUARE KAMIYACHO 3階 Tel:082-236-1212
  • 紙屋町やなせ皮ふ科クリニックまでは 広島電鉄(宇品線)「本通」電停から徒歩約3分 アストラムライン「本通駅」から徒歩約3分
  • 紙屋町やなせ皮ふ科クリニックには、専用駐車場はございません。 車でお越し方は近隣のパーキングをご利用ください。

院長  栁瀬 哲至 

みなさま、はじめまして。
このたび2023年4月、広島市中区紙屋町に「紙屋町やなせ皮ふ科クリニック」を開業いたしました。
私は広島大学病院や広島総合病院で皮膚科の基礎を研修後、東京虎の門病院に国内留学する機会を頂き、診断学やレーザー、皮膚外科の研鑽を積みました。広島大学病院ではたくさんの重症なやけどや皮膚がん患者の皆様の手術・治療を最前線で行う一方で、大学院では悪性黒色腫など皮膚がんの新規診断法の研究にも従事しました。尾道総合病院、安佐市民病院では地域基幹病院の部長としておよそ10年間勤務し、お子さんからご高齢のかたまで診察し、皮膚のかゆみからアトピー性皮膚炎、乾癬、じんましん、膠原病にいたるまで、特に治療が難しい患者の皆さまを対象に最前線で治療に取り組んで参り、また皮膚がんや皮膚の良性腫瘍をはじめとした手術も数多く執刀いたしました。
開業後は、以下のことをお約束したいと思います。

①常に高い専門性をもち正しい検査と診断のもと、わかりやすいご説明をいたします。
②医師、スタッフともに患者の皆さまに寄り添ったあたたかい診療を心がけます。
③肌の若返りや脱毛、シミ取りなどの美容診療もご希望に応じて対応します。
④さまざまな皮膚のできものの手術にも対応します。

皮膚の治療を通じて、患者の皆さまを明るく元気にしたいと考えています。よろしくお願いいたします!

専門分野
皮膚外科、皮膚悪性腫瘍、乾癬、アトピー性皮膚炎、レーザー治療

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