トコジラミ刺症ってどんな虫刺されなんですか?
トコジラミはナンキン虫と呼ばれ、かつては第二次世界大戦前までは日本において珍しいものではなく、現在は発がん物質として使用が禁止されたDDTが戦後に殺虫剤として散布されることにより激減しました。ところが海外渡航の増加や簡易宿泊施設の利用、リサイクル家具などが普及したこと、またダニやゴキブリには有効であるピレスロイド系殺虫剤には耐性の、いわゆる〝スーパートコジラミ〟の出現によりいまだ本疾患がみられることは少なくありません1)。
トコジラミは特に不潔な環境を好むわけではなく、吸血すべきヒトと隠れ場所があれば,清潔不潔や新旧に関係なく生息すると考えられています。シーツやタオル類をしっかり交換している施設でも繁殖がみられ、自宅やホテル、簡易宿泊所やホームレス収容施設、サウナ施設からも生息の報告があります2)。
トコジラミはあらゆる隙間に入り込み、ベッドをはじめ家具の隙間や裏側、シーツやマットの縫目、畳の裏、クロスの隙間や絵画の裏など、あらゆる場所が生息場所となり巣を作ります。トコジラミは吸血すると血糞とよばれる糞を排泄し周囲を汚すため、とくに潜伏している場所の周辺には茶褐色のシミが多数付着しており、居場所の特定に役立つとされます。
トコジラミは吸血の際に皮膚に唾液腺物質を注入し、皮膚症状としてそれに対するアレルギー反応によって皮膚炎を生じます。トコジラミに初めて吸血された場合は感作が成立していないため皮疹は出現しません。
トコジラミ刺症による皮疹は刺されてから1~2日後に紅色丘疹を呈し強いかゆみを伴います(これを遅延型反応と呼びます)が、1~2週程度で色素沈着となり軽快します。同一個体が近接部を複数回刺し変えることもあり、皮疹が狭い範囲に不規則に並んで認められる臨床像を呈することがあります。
なお、繰り返し刺されることにより刺されてすぐにかゆい赤みがみられることもあります(これを即時型反応と呼びます)。臨床的には、首や腕、手、下腿、足などの露出部に爪ほどの大きさのかゆみの強い赤い丘疹がみられます。なお、トコジラミは刺し口が二個並ぶというのは俗説であり正しくありません3)。
治療は通常の虫刺されと同じでステロイド外用薬が有効です。かゆみや症状が強い場合は抗ヒスタミン薬やステロイドの内服を行うこともあります。個々の皮疹は通常,1~2週間で軽快しますが、居住環境内にトコジラミが生息する場合は,適切な駆除対策を立てる必要があります。
いま国内で蔓延しているトコジラミの多くはカやゴキブリに対し通常使用されるピレスロイド系殺虫剤に抵抗性を有しているとされています4)。現時点で、家庭で使用できる最も効果的な薬剤は、カーバメート系殺虫剤のプロポクスルあるいはオキサジアゾール系殺虫剤のメトキサジアゾンを有効成分とする「待ち伏せ型」のスプレー式殺虫剤です。
生息場所の特定が困難で、虫体の数が多く、いたる所にトコジラミが潜んでいるような場合は個人での完全な駆除は難しく、専門の駆虫業者に依頼し徹底した駆除が必要となってきます。
その駆虫方法の例として、有機リン系の殺虫剤を室内にくまなく散布し、家具類への吸引や高熱処理を実施する必要があり、その間は室内にいることはできないため外泊が必要となり、費用も高額になります。なお、衛生害虫駆除の相談先には公益社団法人ペストコントロール協会などがあります。
長年にわたり人類を困らせてきたトコジラミですが、一度はいなくなったかのようにみえましたが殺虫剤耐性を獲得しながら人々が世界中を旅行するとともに生息域を拡大しています。
この虫の厄介なところは、襲われていること自体に気づきにくく、医療機関を受診してもトコジラミ刺症と診断するには虫体を確認する必要があること、また、トコジラミと判明しても駆虫には相当な手間と労力が必要になることです。
海外からの梱包物や旅行者に紛れて入ってきたり、流行地域に旅行することにより持ち込んでしまったりするかもしれません。手首や足首などの露出部位に強いかゆみをともなう赤みがみられればトコジラミかもしれません!どうぞお気を付けください!
みなさま、はじめまして。
このたび2023年4月、広島市中区紙屋町に「紙屋町やなせ皮ふ科クリニック」を開業いたしました。
私は広島大学病院や広島総合病院で皮膚科の基礎を研修後、東京虎の門病院に国内留学する機会を頂き、診断学やレーザー、皮膚外科の研鑽を積みました。広島大学病院ではたくさんの重症なやけどや皮膚がん患者の皆様の手術・治療を最前線で行う一方で、大学院では悪性黒色腫など皮膚がんの新規診断法の研究にも従事しました。尾道総合病院、安佐市民病院では地域基幹病院の部長としておよそ10年間勤務し、お子さんからご高齢のかたまで診察し、皮膚のかゆみからアトピー性皮膚炎、乾癬、じんましん、膠原病にいたるまで、特に治療が難しい患者の皆さまを対象に最前線で治療に取り組んで参り、また皮膚がんや皮膚の良性腫瘍をはじめとした手術も数多く執刀いたしました。
開業後は、以下のことをお約束したいと思います。
①常に高い専門性をもち正しい検査と診断のもと、わかりやすいご説明をいたします。
②医師、スタッフともに患者の皆さまに寄り添ったあたたかい診療を心がけます。
③肌の若返りや脱毛、シミ取りなどの美容診療もご希望に応じて対応します。
④さまざまな皮膚のできものの手術にも対応します。
皮膚の治療を通じて、患者の皆さまを明るく元気にしたいと考えています。よろしくお願いいたします!
専門分野
皮膚外科、皮膚悪性腫瘍、乾癬、アトピー性皮膚炎、レーザー治療
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