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乾癬ってどんな病気?

2023/02/28

乾癬ってどんな病気なんでしょうか?

  • 頭皮やすね、体などにガサガサしたあかみが多発する皮ふ病です。
  • 生まれながらの遺伝子の特徴と、高血圧や糖尿病、喫煙などさまざまな因子 が発症の引き金になると考えられています。
  • 治療の基本は外用薬と紫外線治療ですが、関節痛を伴う場合や 10%を超える 重症な皮疹がある場合など、内服や生物学的製剤と呼ばれる注射薬が適応となり、値段は高いですが非常に有効です。

尋常性乾癬(psoriasis vulgaris: PsV,PsO)は体や四肢、特にすねや膝、頭皮などに赤いぽつぽつとした点で始まり、徐々にウロコのようながさがさを伴う赤いわずかにもりあがった紅斑局面(鱗屑性紅斑:りんせつせいこうはん)を形成して慢性的に経過する皮ふ病です。

全身が真っ赤になったり(紅皮症)、白い膿を一面に伴ったり(膿疱性乾癬)、10~15%程度の患者さんでは指や 肘・膝の関節、腰、首などの関節が痛くなることもあります(乾癬性関節炎) 1)

赤みを伴ってフケがひどくみられる病変や、なかなか治らない爪の変形など(爪甲剥離など)から脂漏性皮膚炎や爪真菌症などとして治療されているケースもあり、関節痛も乾癬とは別の病気と間違えられることもあるため診断が 遅れることがあります。

どうして乾癬になるのでしょうか?

乾癬の患者さんは日本人口の0.44%(およそ56万人)との報告があり2)、2:1で男性に多いとされています。乾癬発症の背景には遺伝子多型とよばれるDNA配列の個体差が関与しているとされ、TNFαやIL-17、IL-23という体の中の細胞がつくりだすサイトカインと呼ばれるシグナル伝達にかかわるタンパク質をコードする遺伝子3)と乾癬との関連が指摘されています。

これら遺伝的 素因に加えて、高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、肥満、虫歯などの背景に、薬剤やストレス、何らかの感染症などの悪化因子が加わり免疫学的な異常をきたした結果発症する可能性が指摘されています[図 1]。

[図 1]

乾癬にはどのような分類や重症度があるのでしょうか?

乾癬は大きく分けて以下の5型に分類されます。
  1. 尋常性(じんじょうせい)乾癬:通常の乾癬
  2. 乾癬性関節炎:指趾やアキレス腱・肘・膝、腰などの関節痛を伴う乾癬[図 2]
  3. 膿疱性乾癬(紅斑に白い膿をともなう乾癬)
  4. 乾癬性紅皮症(全身の 80-90%を超える紅斑)
  5. 滴状乾癬(小児に多く感染症後に全身に小型の乾癬皮疹がみられる)

[図 2]

重症度は、皮疹の面積が10%を超える、精神的な影響が強い(DLQI:皮膚科 学的な生活の質を点数化したものが10点を超える)、全身の10%を超える皮 膚病変がある、重症な関節痛がある、膿疱性乾癬や乾癬性紅皮症である、などから判断され、これらは全身療法の適応です4)

乾癬はどうやって治療するの?

乾癬治療はガイドラインに沿って、まずはステロイドやビタミンD製剤の外用を丁寧に行います。皮疹が広範囲に及ぶ場合や重症度が高い場合、関節痛を伴う場合などは免疫抑制剤(ネオーラル®︎)、免疫調整剤(オテズラ®︎)、メトトレキサート(リウマトレックス®︎)の内服や、生物学的製剤(トルツ®︎やルミセフ®︎、トレムフィア®︎など11種類)から合併症や既往歴、病態や注射の方法などから患者さんと相談のうえ主治医が総合的に判断します[図 3]。

[図 3]

生物学的製剤やJAK阻害薬は先ほど述べたTNFαやIL-17、IL-23といった乾癬を発症、悪化させるシグナルのみをブロックするもので、さまざまな検査が必要となり 費用も高価なのですが、ほぼ症状を抑え込むことが可能です[図 4]。

[図 4]

また高額な治療になりますが様々な医療制度でこれを軽減することもできます。乾癬は治癒させることが難しいことが多く、継続的な治療が必要となりますから、症状を改善させたのちも何らかの治療を要することが多い疾患です。

乾癬とその合併症のコントロールが遅れると、関節症状を発症し変形を残したり、心筋梗塞を発症したり、精神状態にも影響を与えますので、早期に適切な治療を受け、乾癬と上手に付き合っていかれますことを願っています。

参考文献
1) 朝比奈昭彦ほか: 乾癬性関節炎診療ガイドライン 2019, 日皮会誌:129, 2675-2733, 2019
2) 照井正ほか:臨床医薬, 30: 279-285, 2014
3) Tsoi LC et al.: Nat Genet, 44: 1341-1348, 2012.
4) 佐伯秀久ほか: 乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス 2022, 日皮会 誌: 132, 2271-2296,2022

 コラムニスト紹介

紙屋町やなせ皮ふ科クリニック 院長  栁瀬 哲至 


みなさま、はじめまして。
このたび2023年4月、紙屋町に皮ふ科を新規開業いたします。
私は広島大学病院や広島総合病院で皮膚科の基礎を研修後、東京虎の門病院に国内留学する機会を頂き、診断学やレーザー、皮膚外科の研鑽を積みました。広島大学病院ではたくさんの重症なやけどや皮膚がん患者の皆様の手術・治療を最前線で行う一方で、大学院では悪性黒色腫など皮膚がんの新規診断法の研究にも従事しました。尾道総合病院、安佐市民病院では地域基幹病院の部長としておよそ10年間勤務し、お子さんからご高齢のかたまで診察し、皮膚のかゆみからアトピー性皮膚炎、乾癬、じんましん、膠原病にいたるまで、特に治療が難しい患者の皆さまを対象に最前線で治療に取り組んで参り、また皮膚がんや皮膚の良性腫瘍をはじめとした手術も数多く執刀いたしました。
開業後は、以下のことをお約束したいと思います。

①常に高い専門性をもち正しい検査と診断のもと、わかりやすいご説明をいたします。
②医師、スタッフともに患者の皆さまに寄り添ったあたたかい診療を心がけます。
③ネットやアプリから順番を予約でき、なるべくお待たせしない診療を心がけます。
④肌の若返りや脱毛、シミ取りなどの美容診療もご希望に応じて対応します。
⑤さまざまな皮膚のできものの手術にも対応します。

皮膚の治療を通じて、患者の皆さまを明るく元気にしたいと考えています。よろしくお願いいたします!

専門分野
皮膚外科、皮膚悪性腫瘍、乾癬、アトピー性皮膚炎、レーザー治療

【経歴・資格・所属学会】
【略歴】
修道高校卒業
2002年 広島大学医学部医学科卒業 
2002年 広島大学医学部附属病院 研修医(秀道広教授)
2003年 公立三次中央病院 研修医
2004年 JA廣島総合病院皮膚科(部長:古谷喜義先生)
2006年 虎の門病院皮膚科(部長:大原國章先生)
2008年 広島大学病院皮膚科 助教
2010年 広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 
2014年 JA尾道総合病院皮膚科 部長
2017年 広島市立安佐市民病院皮膚科 副部長
2018年 同上部長
2022年 広島市立北部医療センター安佐市民病院皮膚科 部長(名称改変)
2023年 紙屋町やなせ皮ふ科クリニック 開院予定

【資格】
日本皮膚科学会 認定専門医・指導医(専門医番号:07923)
難病指定医

【所属学会】
日本皮膚科学会
日本形成外科学会
日本乾癬学会
日本皮膚悪性腫瘍学会
日本皮膚外科学会
日本熱傷学会 
日本アレルギー学会
日本美容皮膚科学会 ほか

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