その病態や分類などは意外に奥が深く、ほくろのがんである悪性黒色腫の発生についてなどまだまだ未解決な点が残されています。
日本語の病名では、いわゆる〝ほくろ〟は専門的には〝母斑細胞母斑〟や、〝色素性母斑〟とか、〝色素細胞母斑〟と呼ばれます。色がついた母斑はすべて色素性母斑ではないですし(Becker母斑という扁平母斑(ちゃあざ)は色素性母斑ではありません)、あらゆる母斑が母斑細胞母斑というわけではないので(脂腺母斑は異なる疾患です)、〝メラノサイト母斑〟というのが適切な呼び名だとする専門家もおられます1)。
母斑の訳語はnevusといい、nevusとはbirth-mark、つまり母親からつけられた生まれつきの印、という意味ですから2)、〝母斑〟はまさに適訳といえましょう。生まれつきの皮膚の色調や形状の限局的な異常を母斑とするなら、形成異常、組織奇形、過誤腫(かごしゅ:特定の細胞が臓器内で過剰に増殖した状態)の概念と共通するものといえるかもしれません。正確には、母斑とは〝遺伝ないし胎生的な素因に基づき、生涯の様々な時期にあらわれ、かつきわめて徐々に変化しうる皮膚面の色ないし形の異常を主体とする限局性皮膚病変である〟と定義されています。
ここからはかなり専門的な話になります。出生時あるいは生後間もなく生じる母斑を先天性色素細胞母斑といい、後天的に(生まれてから時間が経過してから)生じてくるものを後天性色素細胞母斑と分類します。大きさによる分類で代表的なものはKopfの分類で、小型のものを最大径1.5cm未満、大型のものを20cm以上と分類しました3)。
後天性色素細胞母斑の組織学的な分類としては存在部位によって以下の3型に分類されます(1)より引用)。
後天性色素細胞母斑は、年齢とともに境界部型から複合部型を経て、真皮内型へ移行すると考えられています。
結論から言うと悪性黒色腫のほとんどは、後天性色素細胞母斑とは無関係に発生すると考えられています4)。ですから、後天性色素細胞母斑のうちの一部が悪性黒色腫になるわけではなく、後天的に生じる(生後に発症する)黒色病変のうち一部のものがもともと悪性黒色腫として発生していると考えられます。
ただしこの考え方には反論もあって、先天性巨大色素細胞母斑の一部のものは悪性黒色腫を生じる危険性が高いことが知られていますし、一部の色素細胞母斑のなかにはBRAF遺伝子という悪性黒色腫でみられる遺伝子異常がみられることがあり、一部の色素細胞母斑のなかには悪性黒色腫の前がん病変的性格がある可能性もあり、今後のさらなる研究がまたれます。
まとめますと、ほとんどの場合ホクロから悪性黒色腫は発生せず、悪性黒色腫はもともと悪性黒色腫として発症するが、巨大なホクロの中にはわずかに例外もある、と考えて問題ないと思われます。
悪性を疑うのでなければ、母斑は辺縁ぎりぎりに切除して縫縮する方法や炭酸ガスレーザーで焼灼する方法などがあります。症例によっては局所皮弁を用いた再建を要すこともあります。整容的な(見た目の)改善を目的することが多いですので、経験の多い皮膚科や形成外科で治療することが望ましいでしょう。
まれにみられる先天性巨大色素細胞母斑は悪性黒色腫の発生母地になりえますので、可能な限り切除できる範囲を順に切除して縫縮または植皮を繰り返したり(連続切除)、エキスパンダーという皮膚を引き伸ばす特殊な器具を用いて皮膚を伸ばして植えたりする方法を繰り返す方法などがありますが、いずれも専門的施設での加療が望まれます。
ほくろだと思われるけれど黒いあざが急にできてご心配な場合は、皮膚科専門医の受診をお勧めします。
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