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市販薬と処方薬の違いは?使い方の注意点や処方薬を購入する方法について解説

2023/02/01

薬には、大きくわけて市販薬と処方薬の2種類があります。市販薬は薬局やドラッグストアなどで購入できるもの、処方薬は医師に処方してもらうものです。

なかには同じような薬もありますが、市販薬にしかないものもあれば処方薬にしかないものも多くあります。

今回は、市販薬と処方薬にはどのような違いがあるのか、処方薬を処方箋なしで購入できるのかなどについて解説します。

市販薬と処方薬の違い

市販薬は薬局やドラッグストアで購入できるもの、処方薬は処方箋が必要なものというざっくりとした違いがあります。このほかにどのような違いがあるのか、具体的に見てみましょう。

市販薬の特徴

市販薬は、購入するにあたって処方箋が必要ありません。一部の商品を除いてどなたでも好きな商品を購入できます。

ところで、市販薬のパッケージに「◯◯医薬品」と記載されているのを見たことがありませんか?市販薬は、リスクに応じて次のように分類されています。

誰でも簡単に購入できるイメージが高いかもしれませんが、要指導医薬品や第一類医薬品は薬剤師による説明を受けなければ購入できません。

分類販売できる人特徴
要指導医薬品薬剤師使用する本人が薬剤師に対面で説明を受けることで、一人1個のみ購入できる。市販薬として初めて販売される成分が対象になっていることが多い。
第一類医薬品薬剤師使用者の症状や年齢などを薬剤師がヒアリングし、書面などで説明を受けることで購入できる。リアップのシリーズやガスターなどが第一類医薬品に分類されている。
第二類医薬品薬剤師、登録販売者購入者が必要としなければ、説明を受ける必要はない。ただし、指定第二類医薬品の場合は使用上の注意や確認を受ける必要がある。
第三類医薬品薬剤師、登録販売者購入者が必要としなければ、説明を受ける必要はない。

処方薬の特徴

処方薬は医師が患者さんの状態を診察し、症状に合わせて選んだ薬です。基本的に医師が処方し、薬剤師が調剤することで手に入ります。

市販にはない薬の扱いが多く、処方薬でなければ治療できない病気も少なくありません。ほとんどの薬が保険適用となるため、決まった割合のみ支払いを行います。

市販薬と処方薬は似ている薬でも違うものも多い

市販薬には処方薬と同じ成分が使われているものもあれば、市販薬独自の配合成分で作られているものもあります。次にあげる4つの市販薬は、処方薬でも取り扱いがあるものです。

  • ロキソニンS
  • アレグラFX
  • ヒアレインS
  • ガスター10

処方薬と同じ成分が同じ量だけ配合されているので、一見すると違いがないように見えます。しかし実は、これらの市販薬は処方薬とまったく同じわけではないのです。

ロキソニンS

ロキソニンは市販薬も処方薬も配合されている成分の種類、量はまったく同じです。しかし、効能効果に違いがあります。市販薬は頭痛や月経痛などにしか使用できませんが、処方薬は関節リウマチや変形性関節症、手術後の痛み止めとしても使用できるのです。

ロキソニンロキソニンS
市販薬か処方薬か処方薬市販薬
配合成分ロキソプロフェンナトリウム水和物ロキソプロフェンナトリウム水和物
成分量(1錠あたり) 68.1mg
(無水物として  60mg)
68.1mg
(無水物として60mg)
効能効果●下記疾患並びに症状の消炎・鎮痛
(関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、歯痛)
●手術後、外傷後並びに抜歯後の鎮痛・消炎
●下記疾患の解熱・鎮痛
(急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎を含む))
頭痛・月経痛(生理痛)・歯痛・抜歯後の疼痛・咽喉痛・腰痛・関節痛・神経痛・筋肉痛・肩こり痛・耳痛・打撲痛・骨折痛・ねんざ痛・外傷痛の鎮痛・悪寒・発熱時の解熱

アレグラFX

アレグラFXも処方薬と同じ成分が同じ量だけ配合されています。しかし、効能効果がやや異なるのにお気づきでしょうか。市販薬は鼻の症状にしか使用できませんが、処方薬は蕁麻疹やかゆみなど皮膚の症状にも使用できます。

アレグラアレグラFX
市販薬か処方薬か処方薬市販薬
配合成分日局フェキソフェナジン塩酸塩フェキソフェナジン塩酸塩
成分量(1錠あたり)60mg60mg
効能効果●アレルギー性鼻炎
●蕁麻疹
●皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、アトピー性皮膚炎)に伴うそう痒
●花粉、ハウスダスト(室内塵)などによる次のような鼻のアレルギー症状の緩和:
・くしゃみ、鼻みず、鼻づまり

ヒアレインS

ヒアレインSは、乾き目に有効な市販の目薬です。処方薬はドライアイに使えますが、市販薬は使えないので注意しましょう。市販薬はあくまでも乾きや異物感を改善する効果しかありません。

ヒアレインヒアレインS
市販薬か処方薬か処方薬市販薬
配合成分精製ヒアルロン酸ナトリウム精製ヒアルロン酸ナトリウム
成分量0.1%0.1%
効能効果●シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、眼球乾燥症候群(ドライアイ)等の内因性疾患
●術後、薬剤性、外傷、コンタクトレンズ装用等による外因性疾患
●目の次の症状の緩和:
・乾き、異物感(コロコロ・チクチクする感じ)、疲れ、かすみ、ソフトコンタクトレンズまたはハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感

ガスター10

ガスター10は、医療用と同じファモチジンが10mg配合された市販薬です。胃痛やもたれなどに使用されています。一方で処方薬のガスター錠10mgは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などにも使用が可能です。胃酸の出過ぎによる胃の不調には市販薬でも対応できますが、潰瘍ができるほど症状が進んでいる場合は使用できません。

ガスター錠10mgガスター10
市販薬か処方薬か処方薬市販薬
配合成分ファモチジンファモチジン
成分量(1錠あたり)10mg10mg
効能効果●胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、上部消化管出血(消化性潰瘍、急性ストレス潰瘍、出血性胃炎による)、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群
●下記疾患の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善
●急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期
●胃痛
●もたれ
●胸やけ
●むかつき

市販薬を使うときの注意点

市販薬は自分で好きなものを選び、好きなだけ購入できるものがほとんどです。自由に購入できるからこそ、使用する際は注意が必要になります。

自分の症状に合ったものを選ぶ

市販薬はパッケージやCMの印象だけで選ぶ方が驚くほど多くいます。なんとなくイメージで選ぶのではなく、自分の症状に合った成分が配合されているものを選ぶことが大切です。できるだけ薬剤師や登録販売者に相談し、適切な市販薬を購入しましょう。

用法用量を守る

「市販薬は弱いから多めに飲んでも大丈夫」と誤った使い方をする方が時々います。しかし、これはもちろん誤りです。用法用量を守らないことにより入院が必要なほど重大な副作用が起きることもありますので、必ず使用方法を守ってください。

効かないときは早めに医療機関を受診する

市販薬は決して万能ではありません。病院に行かず購入できるので便利ではありますが、市販薬で対応できる症状はごく一部に限られています。1週間ほど使用しても症状が改善しない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

処方薬を処方箋なしで購入する方法もある

処方薬を貰うためには、基本的に処方箋が必要です。しかし、処方箋なしで処方薬を購入できる方法があります。零売(れいばい)薬局を利用するのです。実は、処方薬には「処方箋医薬品」と「それ以外の医薬品」があります。

「それ以外の医薬品」は零売薬局と呼ばれる場所に行けば処方箋なしで購入が可能です。どうしても処方薬が欲しい場合は、お近くに零売薬局がないか調べて足を運んでみてください。薬剤師が常駐しているので、薬の相談もできます。

市販薬と処方薬の違いに関するQ&A

では、最後に市販薬と処方薬に関してよく聞かれる質問にお答えします。

処方薬のほうが市販薬よりも効果が強いのですか?

一概に処方薬のほうが効果が高いというわけではありません。ただし、なかには市販薬よりも成分量が多いため効き目が高いものもあります。

市販薬と処方薬を一緒に飲んでもいいですか?

同時に飲むのはおすすめできません。飲んでいる市販薬がある場合は医師や薬剤師にその旨を伝え、飲み合わせなどをチェックしてもらったうえで服用してください。

病院に行くのが面倒なので市販薬を使い続けてもいいですか?

市販薬は長期的に使い続けるものではありません。1週間程度使っても症状の改善が見られない場合は、市販薬での対処はできません。早めに医療機関を受診してください。

いろいろな成分が一緒に入っている市販薬ほど効果は高いですか?

そのようなことはありません。本来は必要のない成分まで入っていることも多くあります。

まとめ

市販薬は一部の商品を除いて誰でも購入できますが、処方薬は医師が発行した処方箋が必要です。同じ成分が使われているものでも市販薬と処方薬で効能効果が違うものもあるので気をつけましょう。

一部の処方薬は零売薬局で処方箋不要で購入できますので、そちらを利用する手段もあります。市販薬を長期的に使用すると本来必要な治療が遅れてしまうこともあるため、1週間をめどに医療機関を受診するようにしてください。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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