「お薬によるアレルギーはありませんか?」と先生や薬剤師の方に尋ねられる機会は多いと思います。
薬疹の定義は、少し難しいのですが、〝全身投与された薬剤またはその代謝産物により直接的・間接的作用により誘導される皮膚粘膜病変〟とされています1)。その症状や経過は多岐にわたり、薬疹はあらゆるタイプの皮膚症状を示すと言われています。本項では薬疹の診断方法や病型分類、発症機序、治療法などをお示しします。
薬疹の診断において最も大切なことは、その症状がお薬が原因によるものであることを疑うことですが、丁寧に患者さんにお聞きする問診を通して、あるいは血液検査などのさまざまな検査によって被疑薬(原因であると疑う薬)を確認することです。
これまでに内服しても安全であった薬剤でも原因となりますし、発症までに投与を開始された薬剤のみならず、今までに問題なく内服されていた常用薬や内服中のサプリメント、時々内服する市販薬も含めて鑑別する(そうでないか確認する)必要があります。
症状はいつからどのように広がっていったか、また発熱の有無や唇やまぶたなどの粘膜のただれがないか丁寧に確認する必要があります。鑑別として、麻疹(はしか)や風疹(三日ばしか)、ほかに溶連菌感染症などの感染症に伴う中毒疹などが挙げられ、臨床症状や熱の経過、採血結果などから総合的に判断が必要です2)。
薬疹で最多の病型が紅斑丘疹型薬疹で、次いで固定薬疹型や光線過敏症型、多型紅斑型との報告があります。
薬疹の病型分類として最も多い紅斑丘疹型薬疹は、比較的均一な紅斑ないし紅色丘疹が左右対称性に播種状に生じるタイプで、ペニシリン系やセフェム系などの抗菌薬やロキソプロフェンやアセトアミノフェンなど解熱剤によるもの、カルバマゼピンやラモトリギンなど抗けいれん薬、ほか造影剤などが原因となるとの報告が多くなされています。
多型紅斑型薬疹は標的病変と呼ばれる大小さまざまな浮腫状の二重発赤が多発する病型で、紅斑丘疹型薬疹と同様の薬剤による報告が多くなされています。
光線過敏症型は日光の強い夏季に多くみられ、トリクロロチアジドなどの特定の降圧薬やフロセミドなどの利尿薬、テトラサイクリン系などの抗菌薬によるものがみられます(すべてではありません)。
固定薬疹型薬疹はカルボシステインなどある種の咳止めやメフェナム酸、アセトアミノフェンといった解熱鎮痛剤などの特定薬剤を内服するたびに、口唇や陰部などの粘膜の近くなど同じ場所にチリチリとした違和感をもって繰り返す円形に近い紅斑を生じ、色素沈着を残すもので、これは本症を疑わなければ診断はつきません。
薬疹の検査法としてはパッチテスト(お薬をワセリンなどで溶いたものを貼る)などの皮膚を用いた試験4)、血液からリンパ球を取り出し薬剤を反応させる薬剤リンパ球刺激試験5)、内服再投与試験6)などがありますが、偽陽性、偽陰性といって診断が確かでないことがあり、結果の解釈には医師の慎重な判断を要します。クリニックでは難しく、総合病院で検査を行われるべきかもしれません。
薬疹の治療は、まず疑わしいお薬を確定し除去することが最も大切で、可能な限り疑わしい薬剤を中止し、必要に応じて他系統の薬剤への変更が必要です。同時にステロイドの塗り薬や抗ヒスタミン薬の飲み薬で治療し、重症であればステロイドの全身投与が必要となります。ステロイドの減量方法に関しては、症状によって幅はあるものの、多くの場合症状を見ながら数日から1週間ごとに漸減されます。
最重症型のStevens-Johnson症候群や中毒性表皮壊死症型薬疹というタイプでは粘膜のただれや全身の紅斑、びらんを伴うもので、多くの場合すみやかに総合病院へ紹介されて入院治療されるべきで、ステロイドパルス療法といったステロイド大量療法や、ガンマグロブリン療法といった治療法が適応となります7)が、治療の遅れは致死的経過をたどることもあります。薬を内服したのちに全身に皮膚症状が出た場合に重要なことは、いつもと違う重篤感がないか、高熱や、唇や陰部などに粘膜疹がないかをよく確認してもらい、経時的にこのような症状の悪化がみられないかを丁寧にみてもらうことです。
お薬によるアレルギーが疑われた場合、皮膚科やアレルギー標榜医などの専門家を迷わず受診されることをお勧めします。
みなさま、はじめまして。
このたび2023年4月、広島市中区紙屋町に「紙屋町やなせ皮ふ科クリニック」を開業いたしました。
私は広島大学病院や広島総合病院で皮膚科の基礎を研修後、東京虎の門病院に国内留学する機会を頂き、診断学やレーザー、皮膚外科の研鑽を積みました。広島大学病院ではたくさんの重症なやけどや皮膚がん患者の皆様の手術・治療を最前線で行う一方で、大学院では悪性黒色腫など皮膚がんの新規診断法の研究にも従事しました。尾道総合病院、安佐市民病院では地域基幹病院の部長としておよそ10年間勤務し、お子さんからご高齢のかたまで診察し、皮膚のかゆみからアトピー性皮膚炎、乾癬、じんましん、膠原病にいたるまで、特に治療が難しい患者の皆さまを対象に最前線で治療に取り組んで参り、また皮膚がんや皮膚の良性腫瘍をはじめとした手術も数多く執刀いたしました。
開業後は、以下のことをお約束したいと思います。
①常に高い専門性をもち正しい検査と診断のもと、わかりやすいご説明をいたします。
②医師、スタッフともに患者の皆さまに寄り添ったあたたかい診療を心がけます。
③肌の若返りや脱毛、シミ取りなどの美容診療もご希望に応じて対応します。
④さまざまな皮膚のできものの手術にも対応します。
皮膚の治療を通じて、患者の皆さまを明るく元気にしたいと考えています。よろしくお願いいたします!
専門分野
皮膚外科、皮膚悪性腫瘍、乾癬、アトピー性皮膚炎、レーザー治療
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