市販薬で精神を落ち着けたい」と考える方は少なくありません。
病院に行くほどではないけど不安やイライラをやわらげたい、眠れない日が続いてつらいといった悩みを抱える方にとって、市販薬で精神安定剤が購入できるのは心強いと感じる方もいるでしょう。
しかし、そもそも精神安定剤が市販で手に入るのか、その代わりに使える薬にはどのようなものがあるのか疑問に思う方も多いでしょう。
この記事では、精神安定剤が市販されているのか、どのような種類の市販薬があるのかなどについて詳しく解説します。
精神安定剤とは、不安感や緊張感、恐怖感など、過剰な精神的ストレスをやわらげるために使用される医療用医薬品の総称です。
主に「抗不安薬」とも呼ばれ、脳内の神経伝達物質のバランスを調整することで、気持ちを落ち着かせる働きがあります。
ベンゾジアゼピン系は、脳にある神経と神経の情報をつなぐ働きを持つGABAの働きを強める効果があります。これにより、日常生活に支障をきたすほどの不安や緊張をやわらげ、より穏やかな精神状態を取り戻せます。
ただし、この働きは一時的なものであり、根本的な治療のためにはカウンセリングや生活習慣の見直しなども必要です。
代表的な副作用としては、眠気や倦怠感、ふらつきなどの中枢神経抑制作用が挙げられます。また、長期間服用を続けることで依存性が出たり、薬の減量や中止を行う際に離脱症状を伴ったりする場合もあります。
さらに、記憶力や注意力の低下を感じる方もいるため、運転や機械作業に従事するときは特に注意が必要です。
精神安定剤は医療用医薬品に分類されるため、市販では購入できません。依存性や副作用のリスクがあり、医師の診察と処方のもとで使用する必要があります。
市販薬として自由に流通させると健康被害を招く恐れがあることから、法律で一般向けへの販売が許可されていないのです。市販薬で精神安定剤と謳う商品は存在せず、精神を落ち着かせる成分を含む漢方薬や睡眠改善薬などが代用品となります。
精神安定剤は市販されていませんが、不安や緊張、気分の落ち込みをやわらげる手段として、市販薬や漢方薬をうまく取り入れることは可能です。
眠れない不安や寝付きの悪さが気になるときは睡眠改善薬、不安感やイライラ、ストレスを軽減したいときは漢方薬を検討するとよいでしょう。
寝つきが悪い、夜中に目が覚めるなどの不眠傾向が続くと、精神的な不安感やイライラも増幅しやすくなります。一時的な不眠症状が気になる場合は、睡眠改善薬を使用するとよいでしょう。
睡眠改善薬は抗ヒスタミン薬の副作用である眠気を利用して入眠を促す薬です。あくまで一時的な不眠症状の改善を目的としたものであり、根本的な不安障害の治療薬ではありません。
日常的なストレスや軽い不安感で気持ちが不安定になる場合は、漢方薬を取り入れるのも一つの方法です。
漢方薬は体質や症状のバランスを整える働きを持ち、心身の不調をやわらげる効果が期待できます。抑肝散や半夏厚朴湯は、イライラや緊張感を緩和する目的で使用される代表的な漢方薬です。
市販で精神安定剤の取り扱いはありません。現在市販で手に入るのは、睡眠改善薬や漢方薬のみです。ここでは、精神安定剤の代わりとなる市販薬を5つ紹介します。
抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミン塩酸塩が主成分の睡眠改善薬です。脳におけるヒスタミンの働きを抑え、一時的な不眠を改善します。疲れているのに神経が高ぶって寝られない、心配事があって夜に目が覚めるなどの症状に対して有効です。
| 有効成分 | ジフェンヒドラミン塩酸塩 |
|---|---|
| 効能効果 | 一時的な不眠による寝つきの悪さ、眠りの浅さを緩和する |
| 用法用量 | 15歳以上:1日1回、1回1錠 |
抗ヒスタミン薬であるジフェンヒドラミン塩酸塩が主成分の睡眠改善薬です。寝つきが悪い、眠りが浅いといった症状を改善します。脳の覚醒物質であるヒスタミンの働きを抑制し、自然に近い眠りに導きます。慢性的な不眠には使用できないので注意してください。
| 有効成分 | ジフェンヒドラミン塩酸塩 |
|---|---|
| 効能効果 | 一時的な不眠による寝付きの悪さ、眠りの浅さを緩和する |
| 用法用量 | 15歳以上:1日1回、1回2錠 |
アロパノールは、抑肝散を使用した市販薬です。人間関係に悩んでいる、イライラしやすい、寝つきが悪いなどの症状に効果が期待できます。5歳から服用でき、子どもの夜泣きや神経過敏にも有効です。
| 有効成分 | 抑肝散 |
|---|---|
| 効能効果 | 体力中等度を目安として、神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害、血の道症 |
| 用法用量 |
15歳以上:1日3回、1回3錠 5歳以上15歳未満:1日3回、1回2錠 |
生薬の力で精神不安や動悸を改善する市販薬です。2歳未満の小さな子どもでも服用できます。ただし、1歳未満の乳児の場合は、医師の診察を受けることを優先し、やむを得ない場合のみ服用させてください。
| 有効成分 |
●ブクリョウ ●ケイヒ ●タイソウ ●カンゾウ |
|---|---|
| 効能効果 | 体力中等度以下で、のぼせや動悸があり神経がたかぶるものの動悸、精神不安の緩和 |
| 用法用量 | 15歳以上:1日3回、1回1包 7~14歳:1日3回、1回2/3包 4~6歳:1日3回、1回1/2包 2~3歳:1日3回、1回1/3包 2歳未満:1日3回、1回1/4包 |
ストレスがあり、喉が詰まったような異物感がある方に向いている漢方薬です。気のめぐりをよくし、喉のつかえ感や異物感を改善します。 2歳未満から服用できますが、1歳未満の乳児の場合は医師の診察を受けることを優先し、やむを得ない場合のみ服用させてください。
| 有効成分 | 半夏厚朴湯エキス |
|---|---|
| 効能効果 | 体力中等度を目安として、気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、のどのつかえ感の緩和 |
| 用法用量 |
15歳以上:1日3回、1回1包 7歳以上15歳未満:1日3回、1回2/3包 4歳以上7歳未満:1日3回、1回1/2包 2歳以上4歳未満:1日3回、1回1/3包 2歳未満:1日3回、1回1/4包 |
市販薬で対処しきれないほどの強い不安や恐怖、気分の落ち込みが続く場合は、精神科や心療内科を受診しましょう。
例えば、眠れない状態が長期間改善しない、気分が沈んで日常生活に支障が出る、人間関係や学校、仕事に影響が及ぶなどのケースは自己判断で市販薬を選ぶだけでは不十分です。
精神的な症状は放置することで悪化したり、別の疾患が隠れていたりする場合もあるため、なるべく早めに医療機関を受診しましょう。
最後に、市販の精神安定剤に関するよくある質問にお答えします。
精神安定剤の代わりになる薬の中には、中学生でも服用できるものがあります。ただし、自己判断で購入せず、薬剤師や登録販売者に相談するようにしてください。症状の程度によっては精神科や心療内科の受診も検討しましょう。
脳のセロトニン量を直接調整する薬は市販薬にはありません。セロトニンに影響するSSRIなどの薬が必要な場合は、医療機関を受診してください。
精神安定剤の処方は精神科や心療内科で行われることが一般的ですが、内科で相談できる場合もあります。ただし、根本的な治療や継続的なケアが必要な場合は、専門医への受診が望まれます。
もし市販薬を選ぶ場合も、症状に合わせた成分や使用上の注意を確認し、薬剤師や登録販売者に相談しながら選ぶのがおすすめです。精神的な不調は一人で抱え込むと深刻化することもありますので、早めに専門的なサポートを受ける意識を持ちましょう。
薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。
「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」
こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。
市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。
そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。
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