胃酸の分泌を抑えるパリエットSは、2025年6月に登場した新しい市販薬です。ガスター10と並び、医療用と同一の成分を含む薬として注目を集めています。
新しい薬ということもあり、どのような特徴があるのか気になっている方が多いのではないでしょうか。また、ガスター10と何が違うのか疑問に思っている方もいるでしょう。
そこで本記事では、パリエットSの特徴や効果に加えて、ガスター10との違いや使い分けについて分かりやすく解説します。
パリエットSとは、PPI(プロトンポンプ阻害薬)を含むエーザイから販売された日本初の市販薬です。1錠あたりに有効成分のラベプラゾールが10mg含まれています。
パリエットSの発売日は、2025年6月2日です。6錠入りで希望小売価格は一箱1,480円(税抜)となっています。1錠あたりの価格は約247円(税抜)とやや割高ですが、1日1錠の服用で良いため、一箱購入すれば6日間服用できます。
パリエットSの有効成分は、ラベプラゾールナトリウムです。PPIの仲間であり、胃酸分泌に関与しているプロトンポンプを阻害して胃酸分泌を抑えます。医療用の「パリエット錠5/10/20mg」とまったく同じ成分です。
パリエットSは、以下のような症状に対して効能効果を取得しています。
- 胃痛
- 胸やけ
- もたれ
参考:パリエットS 添付文書
パリエットSは15歳以上の方から服用できます。1日1回、1回1錠を水またはお湯で服用してください。なお、続けて服用できるのは2週間までです。2週間を超えて服用する必要がある場合は、医療機関を受診してください。
参考:パリエットS 添付文書
主な副作用として、次のものが報告されています。
皮膚 発疹・発赤、かゆみ 消化器 便秘、下痢、腹部膨満感、吐き気・嘔吐、口内炎、腹痛、苦み、飲み込みにくい、・胸やけ・口腔内白斑、胃もたれ、口の渇き、食欲不振、舌炎 精神神経 頭痛、めまい、ふらつき、眠気、四肢脱力、知覚鈍麻、握力低下、口のもつれ、失見当識、せん妄、昏睡、一時的にボーっとする、意識の低下、気を失う 循環 血圧上昇、動悸 その他 貧血、目のかすみ・ちらつき、浮腫、倦怠感、発熱、脱毛症、しびれ感、顔や手足の筋肉がぴくつく、手足の筋肉が硬直しガクガクとふるえる、関節痛、筋肉痛、女性化乳房 このような症状があらわれた場合は副作用の可能性があるため、服用を中止して医師や薬剤師に相談してください。
参考:パリエットS 添付文書
パリエットSは、すべての方が服用できるわけではありません。服用できない方、購入時に相談が必要な方もいるので確認しておきましょう。
以下に該当する方は、パリエットSを服用できません。
以下に該当する方は、購入前に医師や薬剤師に相談してください。
市販の胃薬として販売されているパリエットSとガスター10は、どちらも胃酸の分泌を抑えるタイプの薬です。しかし、有効成分や作用の仕組みが異なります。
パリエットSはPPIに分類されるラベプラゾールナトリウムが有効成分です。一方、ガスター10は、H2ブロッカーであるファモチジンを主成分としています。
パリエットSとガスター10の効能効果は、以下のとおりです。
パリエットS ガスター10 効能効果 胃痛、胸やけ、もたれ 胃痛、胸やけ、もたれ、むかつき ほとんど変わりませんが、ガスター10は「むかつき」にも効果があります。だからといって、ガスター10の方が効果が高いわけではありません。
パリエットSは胃酸の分泌をより強力に抑える働きがあるため、症状の程度が強い方はパリエットSが向いている場合があります。
参考:パリエットS 添付文書
ガスター10は朝と夜の2回服用する必要がありますが、パリエットSは1回で済む点が大きな違いでしょう。また、ガスター10は80歳以上の方は使用しないこととされていますが、パリエットSは年齢の上限が設定されていません。
これは、ガスター10が主に腎臓で排泄される薬であり、高齢者では腎機能が低下して作用が強くあらわれる可能性があるためです。
パリエットS ガスター10 用法用量 15歳以上:1日1回、1回1錠を服用する 15歳以上80歳未満:1回1錠を1日2回まで服用できる 参考:パリエットS 添付文書
パリエットSとガスター10のどちらを選ぶべきかについては、症状の出方や体質によって異なります。たとえば、胃酸の逆流による胃痛や胸やけに悩んでいる場合は、強力に胃酸の分泌を抑えるパリエットSの方が適しています。
一方で、飲み過ぎや食べ過ぎなど一時的な胃の不快感や急な胸やけに関しては、ガスター10を使用しても問題ないでしょう。
パリエットSは、要指導医薬品のため使用する人が対面で薬剤師から説明を受けなければ購入できません。さらに、購入点数は一人1点までと制限があります。
要指導医薬品は法律上インターネット販売が禁止されているため、購入したくてもできない方もいるでしょう。ここでは、薬剤師不在でも購入できる市販の胃薬を紹介します。
胃酸の逆流によって起こる不快な症状を抑える胃薬です。「胃酸の分泌抑制」「胃酸の中和」「胃粘膜の保護」という3つの作用を兼ね備えています。透析を受けている方は使用できないので注意してください。
有効成分 ●水酸化マグネシウム
●沈降炭酸カルシウム
●合成ヒドロタルサイト
●炭酸水素ナトリウム
●ピレンゼピン塩酸塩水和物
●チンピ末
●アルジオキサ効能効果 胃痛、胸やけ、胃酸過多、胃部不快感、胃部膨満感、もたれ(胃もたれ)、胃重、胸つかえ、げっぷ(おくび)、吐き気(むかつき、胃のむかつき、二日酔い・悪酔いのむかつき、嘔気、悪心)、嘔吐、飲み過ぎ(過飲) 用法用量 15歳以上:1日3回、1回1包 公式サイト:パンシロンキュアSP
胃酸分泌を抑制するピレンゼピン塩酸塩水和物、胃酸を中和して胃粘膜を保護するメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、胃酸を中和する炭酸水素ナトリウム、消化を促すビオヂアスターゼ2000が配合されています。消化剤も含まれているので、食べ過ぎによる症状にも有効です。
有効成分 ●ピレンゼピン塩酸塩水和物
●メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
●炭酸水素ナトリウム
●ビオヂアスターゼ2000効能効果 胃痛、胸やけ、胃酸過多、胸つかえ、げっぷ、胃もたれ、胃重、胃部不快感、胃部膨満感、吐き気(むかつき、胃のむかつき、二日酔い・悪酔いのむかつき、嘔気、悪心)、嘔吐、飲み過ぎ、食べ過ぎ、消化不良、消化不良による胃部・腹部膨満感、消化促進、食欲不振 用法用量 15歳以上:1日3回、1回3錠 公式サイト:ガストール錠
8歳から服用できる胃薬です。出過ぎた胃酸を中和し、荒れた粘膜を保護する働きがあります。食間または就寝前の空腹時に服用してください。銅クロロフィリンカリウムの影響で便が緑色になることがありますが、心配はありません。
有効成分 ●銅クロロフィリンカリウム
●無水リン酸水素カルシウム
●沈降炭酸カルシウム
●水酸化マグネシウム
●ロートエキス効能効果 胸やけ、飲みすぎ、胃痛、胃酸過多、胃もたれ、胃部不快感、胃部膨満感、胃重、 胸つかえ、げっぷ、吐き気(むかつき、胃のむかつき、二日酔い・悪酔いのむかつき、嘔気、悪心)、嘔吐 用法用量 15歳以上:1日3回、1回4錠
8歳以上15歳未満:1日3回、1回2錠公式サイト:サクロン錠
8胃の働きを良くする7種類の生薬と、胃粘膜を修復するスクラルファート水和物、胃酸を中和する炭酸水素ナトリウムと合成ヒドロタルサイトが配合された胃薬です。食間、就寝前、または食後に服用してください。
有効成分 ●スクラルファート水和物
●炭酸水素ナトリウム
●合成ヒドロタルサイト
●健胃生薬末効能効果 胃痛、もたれ(胃もたれ)、吐き気(むかつき、二日酔い・悪酔いのむかつき、胃のむかつき、嘔気、悪心)、胸やけ、胃酸過多、げっぷ(おくび)、胃重、胃部膨満感、胃部不快感、胸つかえ、食べ過ぎ(過食)、消化不良、消化不良による胃部・腹部膨満感、消化促進、食欲不振(食欲減退)、飲み過ぎ(過飲)、嘔吐 用法用量 15歳以上:1日3回、1回3錠 公式サイト:スクラート胃腸薬S
以下のような症状があるときは、市販の胃薬を使い続けずに医療機関を受診しましょう。
最後に、パリエットSに関するよくある質問にお答えします。
パリエットSを連続で服用できるのは2週間までです。2週間を超えても症状がある場合は、服用を続けず医療機関を受診してください。
妊娠中の方に対して、パリエットSは禁忌ではありません。しかし、服用する際は医師や薬剤師への相談が必要です。
医療用のパリエットは「治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合のみ投与すること」となっています。妊娠の可能性がある方も含め、自己判断で使用せず、事前に必ず相談してください。
パリエットSは15歳以上から服用できます。15歳未満の方は別の薬を使用してください。
パリエットSは、日本で初めて市販薬として販売されたPPIが主成分の胃薬です。胃痛、胸やけ、もたれに効果があります。
2025年6月時点では要指導医薬品に分類されているため、使用する本人が薬剤師から説明を受けないと購入できません。ネット販売はされていないので、お近くの薬局やドラッグストアでお求めください。
薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。
「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」
こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。
市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。
そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。
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