薬を飲むと肝臓に負担がかかるって本当?飲まないほうが健康のため?

2023/12/18

「薬を飲むと肝臓に負担がかかるらしい」と不安に思っていませんか?

肝臓に負担がかかるのが怖いから薬を飲みたくないと思っている方もいるかもしれません。

体を動かすエネルギーを生み出したり異物を処理したりする肝臓ですが、実は薬の代謝にも肝臓が大きく関わっています。

今回は、薬を飲むと肝臓に負担がかかるという話が本当なのかについて詳しく解説します。肝臓に負担がかかったときの初期症状や、肝臓への負担を最小限にする方法なども紹介しているので参考にしてみてください。

服用した薬のほとんどは肝臓で代謝される

服用した薬は、多くが肝臓で代謝を受けます。体内に入った薬の成分がすべて効果を発揮しているのではありません。肝臓で代謝されて残った成分や活性化された成分が薬効を示しているのです。

肝臓は異物を解毒する工場のような働きをもっています。薬は本来体にないものなので、肝臓にとっては異物と同じです。そのため、肝臓によって代謝を受けます。

肝臓で代謝を受け、残ったものや活性化されたものが血液中に入り全身を巡っていくわけです。そのため、薬と肝臓の関係は切っても切り離すことができません。

薬を服用すると肝臓に負担がかかることがある

薬を飲むと肝臓に負担がかかることがある、というのは事実です。ほとんどの薬が肝臓で代謝を受けるため、多かれ少なかれ肝臓に負担をかけます。ただし、負担がかかる=肝臓を痛めつけているというわけではありません。健康な方なら問題ないことがほとんどです。

しかし、薬物性肝障害といって、薬によって起こる肝障害が存在することも知られています。薬物性肝障害とは、薬によって起こる副作用の一つです。

非常にまれなもので、薬を服用したすべての方に見られるわけではありません。解熱鎮痛剤や漢方薬など身近な薬で起こることもあれば、抗がん剤で起こることもあります。

肝臓に炎症が起き、肝臓の働きが悪くなったり劇症肝炎といって命に関わる状態に陥ったりすることがあるため、薬物性肝障害は見逃さないことがとても重要です。

サプリメントや健康食品が肝臓に負担をかけるケースもある

肝臓に負担をかけるものと言うと、薬を想像される方が多いかもしれません。しかし実は、私たちの身近にあるサプリメントや健康食品が肝臓に負担をかけることがあります。ここでは、国民生活センターに寄せられた情報などをもとにサプリメントや健康食品の影響について見ていきましょう。

ウコン

ウコンはお酒のお供に良いというイメージがあるでしょう。しかし、ウコンの摂り過ぎはかえって肝臓に負担をかけることになります。

ウコン末とクルクミンを摂取していた方が胃部不快感と黄疸、劇症肝炎を発症したとの報告がされているのです。ウコンによる肝障害の報告が多いため、日本医師会でも注意喚起を行っています。

参考

青汁

通販で購入した青汁を1回飲んだところ、重症の薬物性肝障害になった例が報告されています。特定保健用食品として販売されていた青汁を脂質異常症のために飲んだ数日後、肝細胞の異常を示すASTやALTの値が高く出たことで肝障害になっていることが分かりました。その後、患者は34日にわたり入院しています。

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サプリメント

知人に勧められたサプリメントを摂取し続けたところ、倦怠感や褐色尿、黄疸が確認された例があります。検査を行ったところ、薬物性肝障害と診断されました。サプリメントの摂取を中断したところ、肝臓の状態を示す値は減少したそうです。この患者は、1か月強にわたり入院して治療を行っています。

参考

健康食品

10年ほど健康食品の摂取を続けていた方が1日分だけ総合風邪薬を服用したところ、その2週間後に腹部に不快感が出ました。病院を受診したところ、肝臓の機能を示す値が上昇しており、薬物性肝障害と診断されます。

原因は10年続けていた健康食品と、1日分だけ摂取した風邪薬だったそうです。この患者は、健康食品と風邪薬の使用を中止しただけで症状の改善が見られました。ただし、1か月以上にわたり治療を行っています。

参考

肝臓に負担がかかっているときに見られる初期症状

肝臓は沈黙の臓器と言われており、病気になってもなかなか症状があらわれません。85%以上に障害が出ても肝臓は動き続けることができると言われています。

そんな肝臓ですが、薬物性肝障害のように何かしらの負担がかかっているときは症状が出ることがあるので見逃さないようにすることが大切です。薬物性肝障害の初期症状としては、次のものが知られています。

  • 倦怠感
  • 食欲不振
  • 発熱
  • 黄疸
  • 発疹
  • 吐き気・嘔吐
  • かゆみ

倦怠感や食欲不振などは、風邪を引いたときやほかの病気にかかったときでも見られるため、肝臓が原因かどうかを見分けるのは難しいかもしれません。

しかし、黄疸は肝臓に負担がかかっているときに出やすい症状です。白目や肌が黄色っぽくなってきたら、黄疸を疑って早めに医療機関を受診しましょう。

肝臓に良い薬も存在する

すべての薬が肝臓に負担をかけるわけではありません。なかには、肝臓の働きをサポートするために使われている薬もあります。

ウルソ

肝臓病をもつ多くの患者に処方されている薬です。ウルソは胆汁の成分で作られており、肝細胞を保護する働きがあることで知られています。コレステロール系胆石の溶解や胆道系疾患および胆汁うっ滞を伴う肝疾患、慢性肝疾患による肝臓機能の改善などに効果を発揮します。

強力ミノファーゲンシー

強力ミノファーゲンCは、肝臓の機能をあらわす酵素を低下させるための注射薬です。慢性肝炎や肝硬変の方に使用されます。主成分は、甘草に含まれているグリチルリチン酸です。肝臓の働きを改善するほか、口内炎や蕁麻疹、薬疹や皮膚炎などの治療にも用いられます。

薬による肝臓への影響を最小限に抑える方法

薬による肝臓の影響を最小限にするためには、薬を正しく服用し、定期的に肝臓の機能をチェックすることが大切です。

肝酵素の値をチェックする

肝臓の機能は、ASTやALTなどの肝臓の値をチェックすることで簡単に確認できます。ASTもALTも肝臓で作られる酵素です。

肝臓に障害が起こって細胞が壊れると、血液中にこれらの酵素が漏れ出してくるようになります。値が正常値よりも上昇しているときは、肝臓に負担がかかっているかもしれません。

必要な薬を正しく服用する

正しく薬を服用することはとても大切です。用法用量を守らず大量に服用すると、過度な負担が肝臓にかかることになります。自己判断で飲む量を調節しないようにしてください。薬の効き目が悪いと感じたときは、量を増やすのではなく医師や薬剤師に相談しましょう。

薬による肝機能障害を治療する方法

薬によって肝機能障害が起きてしまった場合は、適切な治療を受けなければなりません。肝臓は沈黙の臓器と言われていますが、体にとってなくてはならない臓器です。

原因となる薬の服用を止める

まず、肝臓に負担をかける原因となっている薬の服用を止めましょう。薬以外にサプリメントや健康食品が原因となっていることもあるので注意してください。肝機能障害の程度によっては、服用を止めるだけで症状が改善していく場合があります。

肝機能改善薬を服用する

肝臓の機能に影響を与えている薬やサプリメント、健康食品の使用をやめても症状が改善しない場合は、肝機能改善薬を使用することがあります。ウルソデオキシコール製剤やグリチルリチン製剤などを使うことが一般的です。

肝機能障害が起こるほど薬の影響が出ることはまれ

薬は肝臓に負担をかけることがありますが、肝機能障害が起こるほど影響を及ぼすことはそう多くありません。ただし、いつ誰が薬で肝機能障害になるか分からないのも事実です。薬物性肝障害になりやすい体質の方もいますので、薬で肝臓を悪くした経験がある方は慎重に服用する必要があります。

まとめ

薬を服用すると肝臓に負担がかかることがあります。これは、多くの薬が肝臓で代謝されて効き目を発揮するためです。薬だけでなくサプリメントや健康食品で肝臓に負担がかかることもあるので注意しましょう。

倦怠感や食欲不振、黄疸や吐き気などの症状が出ている場合は肝臓に影響が出ている可能性が考えられます。薬を服用したすべての方に肝機能障害が出るわけではありませんが、気になる症状があるときは早めに医療機関を受診して相談しましょう。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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