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ポリファーマシーとは?原因や問題点、解決方法を解説

2023/11/13

ポリファーマシーという言葉を聞いたことがありますか?

高齢者の割合が増え、薬を服用している方が多くなった現代、ポリファーマシーが問題となることが増えました。

ただし、たくさんの薬を飲むことそのものに問題があるわけではありません。ポリファーマシーでは、薬が多いことによって副作用が出やすくなったり医療費が増加したりすることが問題視されているのです。

今回は、ポリファーマシーとはそもそも何なのか、どういった問題があるのかについて解説します。ポリファーマシーを解消する方法についても紹介しているので参考にしてみてください。

ポリファーマシーとは

ポリファーマシーとは、複数の薬を服用することで有害事象が起こりやすくなっている状態のことです。「複数」を意味する「ポリ(poly)」と「調剤」を意味する「ファーマシー(pharmacy)」を組み合わせて作られた言葉として知られています。

複数の薬を服用している方は少なくありません。高齢になるほど、服用する薬の種類が増える傾向にあるのです。日本老年医学会によると、40~46歳で7個以上の薬を服用している方は10%しかいませんが、75歳以上になると26%になるとされています。

ここで注意したいのは、「薬を何個以上飲むとポリファーマシーに該当する」という明確な定義がないことです。一般には6個以上の薬を服用すると有害事象が起こりやすくなると言われています。

参考

ポリファーマシーが起こりやすくなる原因

ポリファーマシーが起こる原因としては、主に4つあります。自分自身も当てはまっていないかチェックしながら原因を見ていきましょう。

複数の病気にかかるから

複数の病気にかかると、それだけ服用する薬の種類も増えやすくなります。高齢になると高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病をはじめ、骨粗鬆症や変形性膝関節症などさまざまな病気にかかるリスクが上がるのです。

それぞれの病気に対して治療薬が必要となるため、病気の種類が増えると必然的に薬も増えることになります。

かかりつけ医をもたないから

かかりつけ医をもたないと、薬の種類が増えやすくなるので注意しましょう。体の調子が悪くなるたびに違う医療機関を受診すると、それぞれで薬が処方されるためポリファーマシーが問題になりやすくなるのです。

たとえば、膝が痛くて整形外科を受診して鎮痛剤を処方してもらい、頭痛で頭痛外来を受診すると、ここでも鎮痛剤が処方される恐れがあります。しかし、別々の医療機関で処方されている薬のため、患者は気にせず両方の鎮痛剤を服用してしまうことになるでしょう。

重複して鎮痛剤を服用すると、胃腸障害や腎障害を起こしやすくなります。かかりつけ医をもてば、このような事態にはなりません。

薬の副作用を薬で抑えようとするから

薬の服用によって起こった副作用を新たな薬で抑え込もうとするケースも時々見られます。これは処方カスケードと呼ばれており、薬の副作用だと気づかずに体調が悪化したと勘違いして受診してしまうことが原因です。

本来なら薬の変更や中止をすべきところ、副作用を薬で対処しようとすることで服用数が増えてしまいます。

お薬手帳を医療機関ごとに分けているから

お薬手帳を医療機関ごとに1冊ずつ使い分けていると、服用している薬の一元的管理が難しくなるためポリファーマシーに陥りやすくなります。

お薬手帳は医療機関ごとではなく、一人1冊携帯するものです。1冊にすべての医療機関でもらった薬の情報を記載します。誤った使い方をしていると、飲み合わせの悪い薬が処方されていたり効果が重複していたりする薬に気付くことができません。

なぜポリファーマシーが問題なの?

ポリファーマシーは、ただ薬を多く飲んでいることが問題なわけではありません。薬を服用している方に何か有害事象が起きたり、不必要な薬が処方されることで医療費の増大につながったりすることが問題なのです。

有害事象が発生しやすくなる

有害事象とは、薬を服用したときに起こる好ましくない症状や異常のことを指します。副作用が起きたり検査値で異常が出たりした場合は、有害事象が起きていると言ってよいでしょう。

有害事象が発生すると、患者さんの健康に影響が出る恐れがあります。薬の飲み合わせによる副作用が起きることもあれば、用法用量の間違いや飲み忘れなどが起こることもあるため注意が必要です。

医療費が増大する

ポリファーマシーによる医療費の増大も懸念されています。本来なら必要のない薬が処方されることで、無駄に医療費を圧迫してしまうのです。ただでさえ医療費は年々増えています。

厚生労働省の「医療費の動向」によると、平成29年度の医療費は42.2兆円でしたが令和4年度は46.0兆円まで増えていることが分かります。

一人ひとりの医療費は極わずかかもしれませんが、国民全体となるとここまで膨れ上がるのです。医療費の増大の原因すべてがポリファーマシーだとは言えませんが、多少なりとも影響を及ぼしています。

参考

ポリファーマシーを防ぐためにできること

ポリファーマシーは自分の力でも防ぐことができます。

お薬手帳を活用する

簡単に始められるのが、お薬手帳の活用です。服用歴を1冊のお薬手帳にまとめることで、さまざまな医療機関にかかっていてもどのような薬が処方されているのかを薬剤師や医師が管理しやすくなります。薬局や病院に行くときはお薬手帳を持参するようにしましょう。

減薬できないか医師や薬剤師に相談する

なんとなく日頃から「薬の種類が多いな」と感じている方もいるかと思います。そのような方は、薬の種類を減らせないか医師や薬剤師に相談してみてください。場合によっては不要な薬を減らせることがあります。

薬の副作用が起きていないか意識する

体調を崩しているのか、それとも薬の副作用が起きているのかを見極めることも大切です。薬の副作用が起きていることに気が付かず「体調を崩したんだ」と思い込んでしまうと、副作用に対して薬が処方され、どんどん薬が増えていく悪循環に陥ります。何か異変を感じたら、副作用かもしれないと考えるクセをつけましょう。

高齢者の服用に注意が必要な主な薬とは?

高齢者はポリファーマシーだけでなく、単剤の使用にも注意しなければなりません。とくに次に挙げるような薬は慎重に使う必要があります。副作用が起きやすいため、ポリファーマシーの原因となることもあるでしょう。

抗精神病薬

抗精神病薬とは、不安や緊張を緩和する薬のことです。安定剤や抗うつ剤などが該当します。抗精神病薬は、過鎮静や認知機能の低下、脳血管障害などのリスクを上昇させる原因です。

睡眠薬

睡眠薬はふらつきを起こして骨折やケガの原因になります。このほか、認知機能の低下やせん妄、運動機能の低下なども引き起こす可能性がある薬です。

パーキンソン病治療薬

パーキンソン病の治療に使われる薬は、認知機能の低下やせん妄、便秘、口腔乾燥や尿閉などを起こすことがあります。

抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン薬は鼻炎薬や風邪薬などに配合されているメジャーな成分です。認知機能の低下やせん妄、口腔乾燥や便秘を引き起こすことで知られています。

ポリファーマシーに関するQ&A

最後に、ポリファーマシーに関する質問にお答えします。

何種類の薬を飲むとポリファーマシーに該当しやすくなりますか?

何種類飲むとポリファーマシーになるという明確な決まりはありません。しかし一般的に6種類以上の薬を服用すると有害事象が起こりやすくなると言われています。

ポリファーマシーは高齢者だけにしか起こらないものですか?

ポリファーマシーは高齢者で起こりやすいものですが、複数の薬を服用している若者でも起こる可能性があります。

ポリファーマシーを自分で防ぐための簡単な方法はありますか?

お薬手帳を活用するのがもっとも簡単な方法です。すべての医療機関で処方されている薬を一元的に管理できるため、不要な薬が処方されるのを防げます。

まとめ

ポリファーマシーとは、複数の薬を服用することで有害事象が起こりやすくなっている状態のことです。

とくに高齢者では何種類もの薬を併用していることが多く、ポリファーマシーに陥りやすいと考えられています。もしかしたら、知らないうちにポリファーマシーに陥っている方もいるでしょう。

不必要な薬の処方を避けるためにも、お薬手帳を正しく活用することが大切です。薬が多い、減らしたいと感じたときは気軽に医師や薬剤師に相談してみてください。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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