現代人の多くが悩まされる腸のトラブル。下痢や便秘は日常生活に大きな影響を与えます。
便秘症に至っては、日本人の約10人に1人に見られ、高齢者の増加に伴い患者数も増えることが予想されています。
実は、下痢や便秘は整腸剤を服用したり生活習慣を見直したりすることで改善できるケースも少なくありません。
今回は、下痢や便秘で悩んでいる方に向けて、市販の整腸剤を紹介します。日常生活で腸内環境を整える方法も解説しているので参考にご覧ください。
整腸剤は、腸内の善玉菌のバランスを整え、悪玉菌の増殖を抑制して腸の健康を促進するものです。主に下痢や便秘といった腸のトラブルを改善し、腸内環境を正常化します。
ただし、服用したからといってすぐに排便したり下痢が止まったりするわけではありません。
整腸剤には、さまざまな種類の菌が含まれています。ここでは、それぞれの菌の特徴を見ていきましょう。
乳酸菌は、糖を分解して乳酸を作り出す菌のことです。驚くことに、35億年前には地球上に存在していたといわれています。代表的な乳酸菌は、以下のとおりです。
アシドフィルス菌は、もともと人間の腸内に存在しており、酸や熱に強く腸に直接働きかけられることが特徴です。
ビフィズス菌は、人間の腸内にも多く存在している菌です。乳酸の他に短鎖脂肪酸を作る働きもあり、悪玉菌の働きと増殖を抑える効果があります。乳酸菌と混同されることもありますが、まったく別の菌だということに注意しましょう。
酪酸を作り出す働きがある菌です。酪酸には悪玉菌の増殖を抑制したり大腸にある粘液の層を保ったりする効果があります。
糖化菌は、小腸の上部に近い部位で活動することが特徴です。デンプンや炭水化物を分解し、糖類に分解する働きがあります。乳酸菌やビフィズス菌の増殖を高める働きがあることが分かっています。
ここからは、下痢や便秘に使える市販の整腸剤を5つ紹介します。それぞれに含まれている菌の種類や効能効果、用法用量を参考に、自分に合うものを見つけてみてください。
新ビオフェルミンSは、人の腸と相性が良いヒト由来の乳酸菌を配合した整腸剤です。健康な人の腸内にすむ乳酸菌を研究して作られました。
主に大腸にすみつくビフィズス菌、主に小腸にすみつくフェーカリス菌とアシドフィルス菌が配合されています。生きた状態で腸まで届き、大腸だけでなく小腸まで広く定着します。
成分 ●コンク・ビフィズス菌末
●コンク・フェーカリス菌末
●コンク・アシドフィルス菌末
効能効果 整腸(便通を整える)、軟便、便秘、腹部膨満感 用法用量 15歳以上:1回3錠、1日3回
5歳~14歳:1回2錠、1日3回公式サイト:新ビオフェルミンS
整腸作用のある生菌以外にも、生薬や制酸剤、ビタミン剤など多くの成分が含まれている整腸剤です。消泡剤としてジメチルポリシロキサンが配合されているため、胃や腸にガスが溜まりやすい方に向いています。
生薬の力で弱った胃の働きを高める効果も期待できるため、胃と腸の両方の不調に悩む方におすすめです。
成分 ●納豆菌末
●ラクトミン(乳酸菌)
●ビフィズス菌
●ジメチルポリシロキサン
●センブリ末
●ケイヒ末
●ウイキョウ末
●メチルメチオニンスルホニウムクロリド
●沈降炭酸カルシウム
●水酸化マグネシウム
●パントテン酸カルシウム効能効果 整腸(便通を整える)、軟便、便秘、胃部・腹部膨満感、消化不良、もたれ、 胃弱、食欲不振、食べ過ぎ、飲み過ぎ、はきけ、嘔吐、胸やけ、胸つかえ、 胃部不快感、胃重、胃酸過多、げっぷ、胃痛 用法用量 15歳以上:1回3錠、1日3回
8歳以上15歳未満:1回2錠、1日3回
5歳以上8歳未満:1回1錠、1日3回公式サイト:ザ・ガードコーワ整腸錠α3+
3つの活性菌を配合することで、小腸から大腸まで働きかけられる処方になっている整腸剤です。腸内フローラを整え、大腸のバリア機能を改善し、便通を整えます。
特に特徴的なのは、酪酸菌を含んでいることでしょう。酪酸菌は主に大腸で働き、善玉菌がすみやすい環境を作ったり大腸のバリア機能に必要な粘液の分泌を促したりする働きがあります。
成分 ●酪酸菌
●ラクトミン(乳酸菌)
●糖化菌
効能効果 整腸(便通を整える)、便秘、軟便、腹部膨満感 用法用量 15歳以上:1回3錠、1日3回
8歳以上15歳未満:1回2錠、1日3回
5歳以上8歳未満:1回1錠、1日3回公式サイト:ビオスリーHi錠
強ミヤリサン錠は、酪酸菌の仲間である宮入菌が配合された整腸剤です。宮入菌は芽胞を形成する性質があり、生きたまま腸まで届く菌として知られています。
芽胞のおかげで熱や胃酸、抗生物質に抵抗性を持つため大腸まで辿りつくことができるのです。また、宮入菌は日本人によって発見された菌としても知られています。
成分 宮入菌末 効能効果 整腸(便通を整える)、軟便、便秘、腹部膨満感 用法用量 15歳以上:1回3錠、1日3回
11歳以上15歳未満:1回2錠、1日3回
5歳以上11歳未満:1回1錠、1日3回公式サイト:強ミヤリサン錠
整腸作用のあるビフィズス菌やラクトミンの他、乾燥酵母やビタミンも配合された整腸剤です。ビフィズス菌は主に小腸下部から大腸にかけて、ラクトミンは主に小腸に存在します。
エビオス整腸薬の一番の特徴は、乾燥酵母が配合されている点です。乾燥酵母には、乳酸菌の発育を促進する効果があります。
成分 ・ビフィズス菌
・ラクトミン(フェカリス菌)
・ラクトミン(アシドフィルス菌)
・乾燥酵母
・チアミン硝化物(硝化チアミン)
・リボフラビン(ビタミンB2)効能効果 整腸(便通を整える)、便秘、腹部膨満、軟便 用法用量 15歳以上:1回6錠、1日3回
11歳以上15歳未満:1回4錠、1日3回
8歳以上11歳未満:1回3錠、1日3回
5歳以上8歳未満:1回2錠、1日3回公式サイト:エビオス整腸薬
腸内環境は、日常生活の影響も大きく受けます。便秘や下痢で悩んでいる方は、普段の生活を一度見直してみましょう。
食物繊維は、善玉菌のエサとなります。そのため、普段の食事で食物繊維を摂るように心がけましょう。漬物やキムチ、納豆やヨーグルトなどは食物繊維を手軽に摂れる食品として知られています。
適度な運動は自律神経の働きを整え、腸内環境を整える効果が期待できます。ウォーキングやジョギングなど、軽めの運動を習慣化してみましょう。また、腹筋を鍛える筋トレを行ってお腹に刺激を与えるのも効果的です。
十分な睡眠をとって脳を休ませると、腸内環境を整えられると考えられています。人によって必要な睡眠時間は違いますが、「翌日の昼間に眠くならない程度」を目安に睡眠をとりましょう。
ここからは、整腸剤に関するよくある質問にお答えします。
便秘をすぐにでも改善したいときは便秘薬を使いましょう。腸を刺激したり便の水分量を増やしたりして便通を促す効果があります。下痢止めは、腸の蠕動運動を正常化して水分量を調整する薬です。
整腸剤は毎日服用しても問題ありません。多くの整腸剤は、腸内の善玉菌を増やしたり働きをサポートしたりして腸内環境を整えるものであるため、継続的な服用が効果的です。ただし、長期間使用しても症状が改善しない場合は医師や薬剤師に相談してください。
整腸剤には即効性がないことが一般的です。腸内環境を徐々に整えていくものであり、効果を実感するには1~2週間ほどの時間が必要となります。そのため、急性の下痢に対しては即効性のある下痢止めの使用が適している場合もあります。
次のような症状があるときは、早めに胃腸科や消化器内科などを受診しましょう。
下痢や便秘が気になる場合は、市販の整腸剤が有効なことがあります。整腸剤によって含まれている菌が異なるため、腸との相性を見ながら自分に合うものを見つけてみてください。
下痢や便秘を繰り返していたり、血便や黒色便があったりするときなどは、自己判断で整腸剤を使わず医療機関を受診しましょう。
薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。
「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」
こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。
市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。
そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。
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