日本人の15.1%が貧血だと推定されています。このうち85.3%は適切な治療を受けていません。
治療を受けていない理由として「医療機関を受診するのが面倒」「治療法が分からない」といったものが挙げられます。
そのような方でも、市販薬を活用すれば手軽に貧血の治療を行うことが可能です。
今回は、貧血に使える市販薬4選や貧血で見られる症状、市販薬を使うときの注意点などについて詳しく解説します。
貧血には、次の5つの種類があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
貧血の中で最も多いのが鉄欠乏性貧血です。体内にある鉄分が不足し、ヘモグロビンを作れなくなるため起こります。ヘモグロビンとは、赤血球に存在する鉄を含むタンパク質のことです。
酸素を運搬する働きがあります。鉄分が不足するとヘモグロビンが減少し、運ばれる酸素の量が減るため、動悸や息切れ、疲労感や倦怠感などの症状が現れます。
ビタミンB12や葉酸が不足して起こる貧血です。多くはビタミンB12の不足によって起こります。
ビタミンB12を吸収できなくなる原因として、吸収に必要な内因子が免疫機能によって破壊されたり、胃を全摘したりなどが挙げられます。鉄欠乏性貧血とは違い、鉄の不足は関係ありません。
白血球や赤血球、血小板がすべて減少する貧血です。骨髄にある造血幹細胞がなんらかの原因によって障害されて起こります。
造血幹細胞とは、赤血球や好中球、血小板などを作る細胞のことです。こちらも鉄分の不足とは関係なく発症します。
腎臓の機能が低下することで起こる貧血です。腎臓では、赤血球が作られるのを促進するエリスロポエチンというホルモンが分泌されています。このエリスロポエチンの働きが低下すると、赤血球が作られづらくなり、貧血になるのです。
鉄分の不足とは関係なく起こる貧血で、エリスロポエチンを補う治療が主に行われます。
赤血球が破壊されて起こる貧血です。貧血の症状の他、黄疸やヘモグロビン尿、胆石などを伴うこともあります。赤血球が破壊される原因として知られているのが、免疫の異常やスポーツによる振動などです。
鉄分の不足とは関係なく起こります。ステロイドや免疫抑制薬などを使った治療を行うことが基本です。
若い女性の4人に1人は、鉄欠乏性貧血であるといわれています。主な症状は以下のとおりです。
立ちくらみやめまいが起こると「貧血だ」と思われる方が多いのですが、この2つの症状は低血圧や低血糖のときにも起こります。そのため、立ちくらみやめまいがあるからといって貧血だと決めつけないことが重要です。
貧血かどうかは血液検査を受けないと分からないため、気になる症状があるときはまず医療機関を受診しましょう。
ここからは、貧血に使える市販薬4選を紹介します。どれも鉄分を主成分とする薬ですので、基本的には鉄欠乏性貧血の治療をするもので
す。鉄欠乏性貧血以外の方は、市販薬では治療できないので医療機関を受診してください。
鉄剤である溶性ピロリン酸第二鉄を主成分とする市販薬です。鉄欠乏性貧血に対して効果があります。ヘモグロビンや赤血球の生成を助けるシアノコバラミンと葉酸も配合されていることが特徴です。
シアノコバラミンと葉酸が含まれていますが、再生不良性貧血の治療には使えないので注意しましょう。
有効成分 | ●溶性ピロリン酸第二鉄 ●シアノコバラミン(ビタミンB12) ●葉酸 |
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効能効果 | 貧血 |
用法用量 | 15歳以上:1日1回、1回2錠 8歳以上15歳未満:1日1回、1回1錠 |
鉄剤である溶性ピロリン酸第二鉄が主成分の市販薬です。鉄の吸収率を上げるビタミンC、赤血球を守るビタミンE酢酸エステル、ヘモグロビンや赤血球の生成を助けるビタミンB12、葉酸なども配合されています。小型の錠剤のため、飲み込むのが苦手な方でも服用しやすいでしょう。
シアノコバラミンと葉酸が含まれていますが、再生不良性貧血の治療には使えないので注意しましょう。
有効成分 | ●溶性ピロリン酸第二鉄 ●ビタミンC ●ビタミンE酢酸エステル ●ビタミンB12 ●葉酸 |
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効能効果 | 貧血 |
用法用量 | 15歳以上:1日1回、1回1錠 |
7歳から服用できる貧血の薬です。鉄分によって胃が荒れるのを防ぐために、銅クロロフィリンカリウムと銅クロロフィリンナトリウムが配合されています。また、鉄分の吸収を高めるビタミンCが配合されていることも特徴です。
シアノコバラミンと葉酸が含まれていますが、再生不良性貧血の治療には使えないので注意しましょう。
有効成分 | ●フマル酸第一鉄 ●硫酸銅 ●硫酸コバルト ●硫酸マンガン ●ビタミンB6 ●ビタミンB12 ●ビタミンC ●ビタミンE酢酸エステル ●葉酸 ●銅クロロフィリンカリウム ●銅クロロフィリンナトリウム |
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効能効果 | 一般の鉄欠乏及び諸疾患にともなう貧血。妊娠時の貧血。小児の栄養障害による貧血、虚弱児・腺病質児・発育不良児の増血及び栄養補給。寄生虫性貧血。貧血に原因する全身倦怠・動悸。病中・病後の増血及び回復促進。 |
用法用量 | 15歳以上:1日2回、1回2~3錠 7歳~14歳:1日2回、1回1錠 |
溶性ピロリン酸第二鉄に加えて、造血に関与しているシアノコバラミンや葉酸も配合されている薬です。こちらも鉄欠乏性貧血の治療に用いることができます。胃腸障害が起きにくいよう、胃ではなく腸で溶ける腸溶性糖衣錠になっています。
シアノコバラミンと葉酸が含まれていますが、再生不良性貧血の治療には使えないので注意しましょう。
有効成分 | ●溶性ピロリン酸第二鉄 ●シアノコバラミン(ビタミンB12) ●葉酸 |
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効能効果 | 貧血 |
用法用量 | 15歳以上:1日1回、1回2錠 8歳以上15歳未満:1日1回、1回1錠 |
貧血のうち、鉄欠乏性貧血であれば市販薬を使って治療を行うことができます。市販薬を使用する際は、以下の注意点をしっかりと押さえておくようにしましょう。
貧血の薬をドラッグストアに買いに来られる方の多くが「立ちくらみやめまいがあるから貧血の薬をください」と相談されます。しかし、立ちくらみやめまいがあるだけで貧血だと確定することはできません。低血圧や低血糖の場合でも同様の症状が現れることがあります。
鉄欠乏性貧血だと医師から診断を貰ったことがない方は、自己判断で市販薬を使用せず医療機関を受診して検査を受けましょう。
鉄分を含む薬は、食後の服用が推奨されています。空腹時に服用すると、胃に負担がかかり吐き気や食欲不振の副作用が出やすくなるので気をつけましょう。
鉄欠乏性貧血の場合、1~2週間ほどで効果が出始め、3~4カ月ほどでヘモグロビンの値が正常になります。
2週間ほど服用しても症状に変化がない場合は、そのまま市販薬を使用し続けず医療機関を受診してください。貧血の原因をしっかりと調べてもらい、適切な対処を行うことが大切です。
最後に、貧血の市販薬に関するよくある質問にお答えします。
サプリは毎日の食事で不足する栄養素を補うものです。貧血を治す効果はありません。一方で市販薬は有効成分の働きにより貧血の改善効果が認められています。
貧血の市販薬に即効性があるものはありません。どの市販薬を使った場合でも、症状が改善されるのに1~2週間ほどかかります。
生理に伴う貧血にも市販薬を使用できます。ただし、効果が出るまでに1~2週間ほどかかるため、飲んですぐに症状が改善するわけではありません。
生理の度に貧血の症状が出る方は、経血量を減らす低用量ピルなどの服用も検討するとよいでしょう。
貧血には5つの種類がありますが、このうち市販薬で治療ができるのは鉄欠乏性貧血のみです。その他の貧血の方は、市販薬では対処できないので医療機関を受診してください。
また、自己判断で貧血だと思い込み、正しい治療を行えていない方が多いのも実情です。立ちくらみやめまいは貧血以外のものが原因で起こることもあります。
気になる症状があるときは安易に市販薬を使うのではなく、医師に診てもらうのをおすすめします。
薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。
「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」
こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。
市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。
そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。
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