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過敏性腸症候群に効く市販薬はある?治療方法や改善するための取り組みを紹介

2023/07/31

過敏性腸症候群は、日本人の約10人に1人が抱えている病気です。

悪いものを食べたわけでもないのに下痢が続いたり、逆に便秘になってしまったりと症状は人それぞれ異なります。

これまでは医療機関での治療が中心でしたが、最近では市販でも過敏性腸症候群に対応した薬が販売されるようになってきました。

今回は、過敏性腸症候群に効果のある市販薬について紹介します。医療機関での治療方法や薬に頼らず過敏性腸症候群を改善する方法についても解説しているので、こちらも参考にしてみてください。

参考

過敏性腸症候群ってどんな病気?

過敏性腸症候群は、誰でもなり得る病気です。男性よりも女性でなりやすく、年齢とともに患者数が減少する傾向にあります。下痢や便秘などの症状により、日常生活に支障が出ている方も少なくありません。

過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群とはIBSとも呼ばれており、お腹が刺激に対して敏感になり、便通異常を起こしている状態のことです。明らかな便通異常があるものの、検査をしても腸に異常は見つかりません。それにもかかわらず、慢性的に下痢や便秘などを繰り返します。

最近3か月の間、月に3日以上にわたりお腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、かつ以下の項目のうち2つ以上を満たす場合は過敏性腸症候群と診断されます。

  • 排便によって症状がやわらぐ
  • 症状とともに排便の回数が増えたり減ったりする
  • 症状とともに便がやわらかくなったり硬くなったりする

過敏性腸症候群の種類

過敏性腸症候群には、大きくわけて3つの型があります。

慢性下痢型

緊張や不安により、激しい下痢の症状があらわれる型です。神経性下痢とも呼ばれており、ちょっとしたことがきっかけで下痢になるため外出が困難になる場合もあります。

不安定型

下痢と便秘を交互に繰り返す型です。腹部の不快感や腹痛を伴う下痢の症状が見られます。便秘になるとコロコロとした便しか出なくなったり、腹部が張ったりすることも多く、苦痛を伴うことが多いものです。

分泌型

分泌型は、強い腹痛が続いた後に大量の粘液が排出される型です。

参考

過敏性腸症候群の原因

過敏性腸症候群を発症する原因については、まだはっきりとはわかっていません。現在のところ、消化管の運動異常や知覚過敏、ストレスや自律神経の乱れなどが原因だと言われています。

また、細菌やウイルス感染の後に発症しやすいことも特徴です。感染すると腸の粘膜が弱くなったり腸内細菌叢のバランスが変化したりするため、刺激に対して敏感になりやすくなります。

参考

過敏性腸症候群の一般的な治療方法

過敏性腸症群の治療法は、薬物療法や心理療法を行うことが一般的です。医療機関を受診した際は、おもに薬物療法が行われることが多いでしょう。

薬物療法

薬を用いることで下痢や便秘などの症状をやわらげることができます。

5‐HT3拮抗薬

神経伝達物質の一つであるセロトニンの働きを抑えることで、下痢や腹痛などの症状を抑える薬です。セロトニンには、腸の動きを活発にする働きがあります。そのため、セロトニンの働きを抑えることで、下痢や腹痛などを抑えることができるのです。

止瀉薬

止瀉薬は、いわゆる下痢止めのことを指します。下痢の症状がメインの場合は、止瀉薬を使って下痢を抑えるのも有効です。

消化管運動機能調節薬

消化管の運動が活発になりすぎているときは消化管の運動を抑え、逆に働きが悪くなっているときは運動を促す薬です。消化管の運動をバランスの良い状態に整えることで下痢や便秘、腹痛の症状をやわらげます。

高分子重合体

腸管内で水分を吸収する薬です。下痢のときは便の水分を吸収し、便秘のときは便の水分を増やしたり薬自身が膨張したりすることで症状を改善します。

下剤

便秘がおもな症状の場合は、下剤を使うこともあります。便秘がひどいときだけ飲むことが一般的です。

心理療法

過敏性腸症群はストレスや悩みなどによって起こることもあるため、心理療法が効果を発揮することもあります。カウンセリングや認知行動療法を受けることで心理的ストレスを軽減し、症状を改善するのです。

過敏性腸症候群に効果がある市販薬

過敏性腸症群に効能効果をもつ市販薬には、おもにコルペルミンとセレキノンSの2種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

コルペルミン

コルペルミンは、ペパーミントオイルを主成分とする過敏性腸症群の治療薬です。下痢と便秘、両方の症状に効果を発揮します。ペパーミントオイルは、欧州を中心に一般用医薬品として用いられている成分です。腸管の異常な収縮を抑制し、下痢や便秘などの症状を改善します。

公式サイト:コルペルミン

セレキノンS

セレキノンSは、トリメブチンマレイン酸塩を主成分として含む過敏性腸症群の治療薬です。トリメブチンマレイン酸塩は消化管の運動を調節する働きがある成分として知られており、下痢にも便秘にも効果を発揮します。

公式サイト:セレキノンS

過敏性腸症候群を改善するために取り組みたいこと

過敏性腸症群は薬を使った治療がメインになりますが、生活習慣や食生活の見直しによっても症状の改善が可能です。

食生活を見直す

暴飲暴食を避けて胃腸に負担をかけない生活を送りましょう。また、1日3食を決まった時間に摂ることも大切です。これにより、自律神経の働きを整える効果も期待できます。

高FODMAP食を控える

FODMAP(フォドマップ)とは、腸内で分解や吸収がされにくい糖類のことです。高FODMAPに該当する食べ物は下痢や腹痛を引き起こす原因となりやすいため、低FODMAP食に切り替えていきましょう。

高FODMAP食小麦粉、さつまいも、たまねぎ、りんご、しいたけ、大豆、牛乳、生クリーム、カシューナッツ、ピスタチオなど
低FODMAP食米、じゃがいも、トマト、いちご、カマンベールチーズ、マヨネーズ、ポップコーン、紅茶、アーモンドミルクなど

ストレスを溜め込まずに発散する

ストレスは自律神経のバランスを乱すため、過敏性腸症群の症状を悪化させることがあります。溜め込まずにこまめに発散することが大切です。体を休めたり趣味の時間を取ったりして自分なりのストレス発散方法を見つけましょう。

適度に運動を行う

運動には過敏性腸症群の症状を軽減する効果があると言われています。ウォーキングやジョギングなど、軽い運動で構いませんので、毎日の生活に取り入れてみてください。

過敏性腸症候群でも安心して出かけるためには?

過敏性腸症群になると、「途中でお腹が痛くなるかも…」と心配になり、出かけることが難しくなる方もいるでしょう。そのような方でも、少し対策をするだけでお出かけが少し楽になります。

出かけ先のお手洗いの場所を確認しておく

出かけ先にお手洗いがあることがわかっているだけでも、気持ちが楽になるものです。できれば2か所以上のお手洗いがあることを確認しておくと、いざというときに困らず済むでしょう。

薬を常備しておく

過敏性腸症群用の薬を持ち歩くのもおすすめです。何かあっても薬があるという安心感から、外に出かけても症状が起こらなくなる場合があります。

「大丈夫」という自信をもてるように少しずつ外に出る練習をする

外出が苦手だと感じる方は、まずは徒歩圏内ですぐに帰れるところに出かけてみたり、電車に1駅だけ乗ってみたりなど、少しずつ外出の練習をしてみましょう。「出かけられた」という経験を積むことで、それが自信につながり徐々に外出できる範囲を広くできます。

お腹の調子が優れないときは医療機関を受診しよう

よく下痢になるから下痢止めを飲んで済ませているという方は意外と珍しくありません。繰り返し下痢や便秘に悩まされている場合は過敏性腸症群の可能性もあります。過敏性腸症群は専用の薬を使うことで症状を楽にできますので、お腹の調子が優れないときは早めに医療機関で相談してみましょう。

まとめ

過敏性腸症群とは、お腹が刺激に対して敏感になり、下痢や便秘などの症状を繰り返すことです。市販薬には、コルペルミンやセレキノンSなどがあります。自分に合う薬を見つけることで過敏性腸症群は症状が改善されますので、長引く下痢や便秘に悩んでいる方は早めに医療機関を受診しましょう。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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