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「胎教にいいこと」って音楽?絵本?それとも…気軽にできる7つの方法

2022/11/18

最近はあまり聞かなくなった「胎教(たいきょう)」という言葉。

今回は、「いま妊娠中だけど胎教ってどんなものなのか分からない」という人、「特になにもしていないけどいったい何に気をつければいいの?」と疑問な人へ、胎教の意味や具体的に何をすればいいのか、おすすめの方法などをお伝えします。

そもそも「胎教」とは。どんな効果があるの?

「胎教」は古くは中国から伝わった言葉で、当時の書物には「妊娠中の婦人はつま先立ちせず、奇妙な味のものは食べず、醜いものを見ずに過ごすべし」といった注意書きが残っているそうです。

日本でも昔から「妊娠中に火事を見ると赤ちゃんにあざができる」と言い伝えられ、最近では「モーツァルトを聴かせると情緒が安定して夜泣きをしない赤ちゃんになる」なども聞くのではないでしょうか。

ただ実際は、これらのことで赤ちゃんに直接影響が及ぶわけではありません。

妊婦さんが火事を見てショックを受けたり興奮したりすると交感神経が優位になって赤ちゃんに酸素が行き渡らず苦しい思いをする、あるいはママが音楽を聴いてリラックスすると副交感神経が優位になり、血管の収縮がゆるんで、胎盤へ新鮮な酸素を含んだ血液が豊富に流れ込み、赤ちゃんの発達にもプラスになる……という考え方が現在では主流になっています。

つまり胎教とは、妊娠中は危険を遠ざけリラックスして過ごすことで、赤ちゃんがすくすく育つ環境を整え、出産や育児をスムーズにしよう…というのが目的だといえます。

参考

胎教はいつから始めるとよいのか

「胎教はいつごろ始めるべき?」と疑問に思う方もいるのではないのでしょうか。

胎教を「できるだけ妊婦さんがゆったりリラックスした時間を過ごすこと」と考えれば、時期は気にせず、妊娠が分かったときからいつでも始めてかまいません。

ただ妊娠初期は体型の変化も少なく、つわりで気分がスッキリしない日も多いので、少しずつおなかが大きくなり胎動を感じはじめる妊娠5ヶ月頃からが特に始めやすいといえます。

また、おなかの中の赤ちゃんは妊娠6ヶ月(20~22週)頃から少しずつ耳が聞こえはじめると言われています。声や音を聞かせてあげたい場合は、その時期であればより赤ちゃんに伝わる可能性が高いでしょう。

気軽にできる「胎教にいいこと」7選

つづいて、妊婦さんや赤ちゃんの身体に負担をかけず、ちょっとした時間に気軽にできる「胎教にいいこと」を7つ紹介します。

1)音楽を聴く

「モーツァルトなどのクラシック音楽を聞かせると胎教にいい」という話はよく聞きますよね。

しかし子宮内の羊水の中にいる赤ちゃんには、ママの心臓や呼吸などの音(胎内音)に遮られ、私たちと同じようにクラシック音楽が聞こえているわけではないと考えられています。

一方、モーツァルトの楽曲には自然界のリズムを表す「1/fゆらぎ」が多く見られると言われていて、このリズムを聴いた人の脳波からは、リラックスしていることを示す「α波」が検出されるそうです。

つまり、音楽はどちらかというとママにとって効果的ということ。クラシックに限らずジャズやポップス・推しアイドルの曲など、ママが心地よいものなら他のジャンルでもちゃんと胎教に効果が期待できます。

2)話しかける

「おなかの赤ちゃんに話しかける」は、ほとんどの妊婦さんがやっているとは思いますが、いつでも気軽に行えるもっともかんたんな胎教かもしれません。

あらためて何を言えばいいんだろう…という人は「おはよう、今日はいいお天気だよ」「よく動くようになったね」というひとことだけでも大丈夫です。

体の中に響くママの声と違って、パパや上の子の声はおなかの赤ちゃんにはやや聞こえにくいかもしれません。

おなかに当てる聴診器や糸電話のようなグッズも市販されていますが、どこまではっきり伝わっているかは未知数です。

でも、大切なのは家族で生まれてくる赤ちゃんとコミュニケーションし、誕生を楽しみにしているよという気持ちを伝えること。ぜひ楽しんで話しかけてあげて下さいね。

3)絵本を読み聞かせる

「おなかの中で読んでもらった絵本を、生まれてきた子に聞かせると目を輝かせて反応する」という話を時々耳にします。

もちろん偶然かもしれませんが、いずれにしろ出産後はバタバタしてゆっくり絵本を選ぶ時間もなくなりがちなので、妊娠中に図書館や書店を回ってお気に入りの絵本を見つけておくのもおすすめですよ。

4)ゆっくり呼吸する

妊娠後期になると、少し動くと息が上がったり、大きくなった子宮に肺が圧迫されたりして呼吸も浅くなりがちです。

いつもよりゆっくりとしたペースの呼吸を心がければ、取り込む酸素の量も増え、自律神経のバランスが整って気分も落ち着くことが期待できます。

5)マタニティヨガ

ヨガの中でも、おなかが大きい妊婦さんでも行えるポーズと動きでゆったりと行う「マタニティヨガ」は、初心者でもトライしやすく人気です。

産院で開催される体験クラスやオンラインスクール・動画講座などがあります。

また、着替えや移動などで少し本格的になりますが、体を動かすのが好きな人はマタニティスイミングもおすすめです。

6)散歩する

妊娠中の散歩(ウォーキング)には、お産に向けての筋力維持、腰痛予防、体重の増えすぎ防止、血流の促進やお通じの改善などさまざまな良い効果が報告されています。

単純に気分転換やストレス発散できるだけでも、ママにも赤ちゃんにも有益ですよね。

なおウォーキングやヨガなどの運動は、おなかが張るときや出血があるとき、医師から運動を控えるように指示があったときは行わないようにしましょう。

参考

7)おなかに触れる、キックゲーム

仕事中や病院・電車の中など声を出せない時は、赤ちゃんに話しかけるつもりでおなかをさすったり、やさしくポンポンとたたいてみるのも良いですね。

なかには、ママがタッチした場所を押し返してくる赤ちゃんもいて、ママが2回タッチすると赤ちゃんが2回キックするなど、「キックゲーム」が楽しめることも。

おわりに

「胎教」というちょっと古めかしい言葉ですが、難しく考える必要はありません。

もうすぐ生まれてくる赤ちゃんが、おなかの中でも心地よく過ごせているかな?と考えながらおなかに手をあてて、ゆっくり呼吸するだけでもOKです。

一生のうちごく限られた妊娠期間を、赤ちゃんと一緒にゆたかな気持ちで過ごす。それだけですばらしい胎教だといえます。

コラムニスト

認定子育てアドバイザー/育児教育ライター  高谷みえこ 

私が結婚・出産を経験したのは今から20年前の2000年。当時は今のようにインターネットやSNSが発達しておらず、育児書以外での情報源は雑誌くらいという限られたものでした。

娘たちが小さい頃はいわゆる「ワンオペ育児(核家族で平日は母親が1人で家事や育児を担うこと)」で、娘たちには喘息やアレルギーなどの持病もあり、当時は本当に毎日大変でした。

親にとって、妊娠~出産から赤ちゃんのお世話や成長発達・幼児の「イヤイヤ期」やトイレトレーニング・園や学校でのトラブル・ママ友付き合いまで、育児の悩みや苦労はその時々で大変大きなものだと思います。

しかし、せっかく工夫してその時期を乗り越えても、子どもの成長ステージにつれ受験や教育費など次々と新しい課題が現れ、過去の悩みは記憶の隅に追いやられがち。次の世代に伝えていく機会はなかなか得られません。

まさに今、かつての自分のように悩んでいるママ・パパがいたなら、自分の経験と知識から少しでも役に立ちたい…という思いから、お役立ち情報や先輩たちの体験談をもとにした解決のヒントなどを、WEBメディアでライターとして発信するようになりました。

より的確で悩みに寄り添ったアドバイスができるよう、NPO法人日本子育てアドバイザー協会の「認定子育てアドバイザー」資格も取得。発達心理学や医学・行政支援などに関する幅広い知識を身につけています。

現在は、育児教育ライターとして子育て情報やコラムを年間100本以上連載中。

かつての自分のように子育てで悩むママやパパへ、正しい知識に基づき心がふわっと軽くなるようなあたたかみのある記事をお届けしていきたいと思います。

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