広島の子育て世代に向けた、医療・健康・暮らしにまつわる情報を発信

減量成功のコツは“燃やす力”を高める食べ方

2021/11/12

スポーツ選手の減量は「体重」を減らすということではなくて、「体脂肪」を減らすことが目的です。

体重を減らしたいからといって、食事回数を減らしたり、欠食したり、ある食品だけを控えたりすると、トレーニングに必要な栄養素が不足してしまうことで筋肉が分解され筋肉量が減ってしまう可能性もあります。また、疲れがとれなかったり、集中力が低下してしまったりと練習の質の低下やコンディション不良を招くこともあります。

成長期の選手も競技によっては減量を行っている場合もあるようですが、体や心が著しく発達する時期なので、むやみな減量を行わずまずは管理栄養士や公認スポーツ栄養士に相談し、減量の必要性や競技目標、将来のことも含め検討することをおすすめします。

減量するための食事のポイントは?

減量時の食事量は、選手個人によって異なりますが、共通の考え方として摂取エネルギー量のうち脂質摂取を適量に抑え、主食・副菜・主菜は毎食揃え、低脂肪・高たんぱく質の食品を中心に、代謝を助けるビタミンやミネラルが豊富な野菜を多めに摂ることが大切です。
下記にポイントをいくつか挙げてみました。

point

  1. 主食はパン(洋風)よりもご飯にする
  2. 主菜の肉や魚は脂質が低い食品を選ぶ
    例)豚肉・牛肉→バラ>ロース>もも>ヒレ
      鶏肉→もも>むね>ささみ
  3. 洋風より和食中心に食材カットは大きめにする
  4. サラダよりも汁物で野菜をたっぷり摂る
  5. 野菜、きのこ類、海藻類、根菜類、豆類など色んな種類の食品を積極的に摂る
  6. 飲み物は甘いものや炭酸飲料などは控え、お茶はお水で水分補給をする
  7. 減量目標は計画的に、そして長期的に実施する

減量となると、食べてはいけないものがある印象が強いですが、我慢や制限、ストレスは何よりも大敵です。食品の特徴を知り、調理方法を工夫していくことで、継続できる食習慣を身につけていくことで自ずと結果がついてくるのです。「継続できるか」が鍵になります。
栄養サポートをしている選手の場合は、現状を把握し、目標の期間にもよりますが上記に示した7つのポイントを全部実践していくというよりは個人に合った食べ方を1つずつ実践し習慣化していくようサポートしています。

燃やす力を高めよう

減量期もやむを得ない理由がない限り食事は抜きません。理由としては、先述したように、トレーニング時のエネルギーが不足することで、必要な筋肉が分解される可能性や身体を動かしたり脂質を燃やすための必要な栄養素を摂ることができない場合が考えられるからです。

そして、食事を摂ることでカロリーを消費(燃焼)しています。これを食事誘発性熱産生(DIT)と言います。食事をとると、体が温かくなったり汗をかいたりする経験はありませんか?これは熱を産み出していて、カロリーを消費しています。DITは1日の消費エネルギー量の約10%も占めていて、減量期では無駄にしたくないエネルギー消費量です。食べて燃えるって嬉しいこと、食事を抜くことはもったいないことです。

さらにDITは朝>昼>夜と朝が高く、たんぱく質>炭水化物>脂質とたんぱく質代謝で高まります。そして、流動食よりもよく噛んで食べる食事のほうがDITは高くなると言われています。ということは、朝食の欠食や朝食におかずがなくパンだけの食事、スムージーやヨーグルトだと、かなり損をしていることになります。

燃える材料と燃やす材料のチームワーク

燃やす力を高めるためには、さらにポイントがあります。カロリーが消費(燃焼)する力は、栄養のチームワークが上手くいっていて栄養素が不足しておらず、食べたものをしっかり使い切っている状態です。いわゆる「代謝がいい」という状態と考えてもらえるとわかりやすいかと思います。

燃やす力が高い状態は、燃える材料と燃やす材料があることです。燃える材料とはカロリーのある栄養素の「炭水化物、たんぱく質、脂質」のことで、燃やす材料は、カロリーはない栄養素で代謝に欠かせない「ビタミン、ミネラル」のことです。

燃える材料と燃やす材料のチームワークをイメージしやすいよう例えると、燃える材料が1㎏、燃やす材料が1㎏の場合、1㎏分全部が燃えエネルギーや身体の材料として消費されます。しかし燃える材料1㎏、燃やす材料が0.5kgの場合、0.5kgは燃え(消費する)ますが、0.5kgは余ってしまいます。余ったものは体脂肪になったり処理するために余分な栄養が必要になる場合があります。

特に減量期は普段よりも少ない栄養で、体をフル稼働させる必要がありますので、燃やす材料が不足していると、食事量は少ないのに減量が上手くいかないということもでてきます。

PFC比って何だろう?

PFC比とはカロリーのある栄養素(燃える材料)の「炭水化物、たんぱく質、脂質」のエネルギー比率のことで各々の栄養素が自分の役割を果たすことができる理想的なバランス(比率)があります。(こちらのコラムでもご紹介しています|コラム:なぜバランスよく食べるほうがいいの?

選手に関わらず日本人の食生活は脂質比が高い傾向にあり、その要因として米食の減少が挙げられています。

減量をしている選手の中にはご飯を食べると太るというイメージから量を控えたり抜いたりする選手がいますが、食パンや総菜パン、菓子パンに比べると脂質が少ないので無駄に脂質を摂らず、燃やす力を高めるために必要な炭水化物をしっかり摂ることができます。主食の脂質量が少なければ、主菜(おかず)の料理も幅広く選ぶことができるので、減量期は米食中心がおすすめです。

食材や料理の特徴を知る

食品や料理の特徴を知ることで、何かを制限した食事をする必要はなくなるかもしれません。例えば、揚げる>炒める>煮る>蒸すの順に油を使わない調理法になりますが、蒸し物を作って、付け合わせのサラダにたっぷりと胡麻ドレッシングをかけてしまえば、低脂質の料理にはなりません。また、おかずが揚げ物料理の際に主食がパン類やチャーハンなどであれば高脂質になってしまいます。

主食量が少なすぎる場合は身体がエネルギー不足のサインを出し、高カロリー・高糖質の食べ物を身体が欲してしまい、食べたい衝動にかられるかもしれません。
揚げ物も食べてはいけないものではなく、主食はごはんにし、低脂肪食品の鶏ささみや胸肉、白身魚、マグロなどに衣は薄くつけて揚げる。そして、サラダではなく、具沢山の野菜スープやみそ汁にしてみてはいかがでしょうか。

さらに、燃やす力を高めるためにはビタミン、ミネラル類が重要なので、ごはん食であれば新鮮な雑穀米をプラスすることで手間なく栄養価をアップさせることができ、噛む回数も増えるので満腹感や消化吸収をサポートすることもできます。減量期にサラダをたくさん食べる選手は多いですがドレッシングは油脂が多く、サラダに使用する野菜は色の薄い野菜が多いため、根菜類、きのこ類、海藻類、色の濃い野菜、色の薄い野菜、たんぱく源などどんな食材を組み合わせても美味しくできる汁物をおすすめしています。簡単であり栄養たっぷりな万能料理です。食材や料理の特徴を知ることで、組み合わせや食べ方を工夫することができ、減量中でも食に対してノンストレスで向き合えます。

この食材は、どんな栄養がつまっているんだろう~と興味を持ってもらえると嬉しいです!

今月のまとめ

  • 減量中こそ食事を抜かず毎食しっかり食べる意識を
  • 朝食はやせ体質づくりの要
  • 食品や料理の特徴を知ろう
  • ささいな疑問はお近くの薬局やクリニックの栄養士さんに相談してみよう!

参考資料

月刊ニューメディア2019年版増刊号 アスリートとスポーツ愛好家のためのレシピ(株式会社 食品産業新聞社)

コラムニスト

管理栄養士・公認スポーツ栄養士  馬明 真梨子 

ソフトボール部だった10代の頃からスポーツ傷害や体重管理、食事に悩まされた経験からNSCA認定パーソナルトレーナーと管理栄養士の資格を取得。
大学卒業後、大手フィットネスクラブ、パーソナルトレーニングジムでの運動・栄養指導に携わる。その後、学生から実業団アスリートの寮食献立作成や選手サポート、セミナー講師などの業務に従事。さらに専門的な知識やスキルを習得するためスポーツ栄養の専門家である公認スポーツ栄養士の資格を取得し、これまで700名以上の指導に携わる。
現在、「広島のスポーツを食で盛り上げる」をモットーに、スポーツ栄養サポート・普及教育活動・食環境整備などに力を入れ、セミナー講師、チームスタッフ、企業アドバイザー、専門学校非常勤講師など各分野で選手や広島の方を食で支える取り組みを行っている。

 関連記事

column/btn_column_page
トップ