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クリニック開業時の金融機関の選び方について

クリニック開業時の金融機関の選び方について

クリニック開業時の金融機関の選び方について

開業する診療科により大きくばらつきはありますが、開業時には多額の資金が必要です。
建物の内装費(賃貸の場合を想定)、高額な医療機器、医師会入会金等に加え、当面の運転資金まで含めると、開業資金は数千万円から数億円程度かかるケースもあります。全額自己資金で対応できるケースは稀で、大半は金融機関からの借入に頼らざるを得ません。

一言で金融機関といっても多くの種類があります。
では医療機関を開業する場合、どの金融機関から借入を行うのがよいのでしょうか?ここでは、金融機関の種類ごとの特徴と借入時の検討ポイントについて解説します。金融機関には、それぞれに一長一短があります。そこを理解したうえで借入を検討することが必要です。

金融機関の種類

都市銀行

都市銀行は大都市に本店を構え全国各地で銀行業務を行います。取引先は大手上場企業が中心で、海外展開にも力を入れています。
信用力は高くインフラも整備されており、低い金利での資金調達が可能なため、一般的には貸出金利も低い傾向があります。但し、貸出スタンスは非常にドライであり、業績悪化時の資金の引き上げは早い傾向があります。

地方銀行・信用金庫

地方銀行・信用金庫は地域密着型の金融機関であり、取引先は地元の中小企業が中心です。
フットワークが軽く集金や両替に訪問してくれるケースもしばしばあります。都市銀行に比べ資金調達力が乏しいため、貸出金利は高くなる傾向があります。貸出スタンスは地域密着型のため、業績悪化時であっても資金の引き上げは行いにくい傾向があります。

政府系金融機関(国民政策金融公庫、日本政策金融公庫等)

政府系金融機関は日本政府が経済発展、中小企業の支援などの目的を達成するために設立した銀行で、出資金の多くが政府出資になります。 したがって、利益追求というよりは、公益性を重視する傾向があります。制度融資が豊富に用意されており、リーマンショック、東日本大震災、新型コロナウイルス感染症等による景気悪化時でも、貸出スタンスは基本的に業績悪化時であっても変わりません。むしろ積極的なスタンスをとるケースもあり、何かあったときの保険として取引をしているクリニックが多いのではないかと考えます。

借入時の検討ポイント

借入時の検討ポイントは大きく、①金利、②借入期間(据置期間含む)、③取引支店(金融機関)との物理的距離の3つに分けられます。
項目ごとに順を追って説明します。

①金利

借入をする際の金利はもちろん低ければ低いほど良いです。
その“金利”には「固定金利」と「変動金利」があることをご存知でしょうか?

固定金利 契約時から完済時までの金利が一定であるもの
変動金利 一定期間ごとに金利が変動するもの

一般的には、変動金利の方が固定金利よりも低い利率で借りることができます。
しかし、現在日本はマイナス金利政策を実施しているので、金利がこれ以上下がる余地はあまりありません。よって固定金利を選択するメリットもおおいにあると考えます。

②借入期間(据置期間含む)

借入期間は長ければ長いほど良いと考えます。なぜなら借入期間が長い方が月々の返済額が少額になるからです。
特に新規開業時には実績はありませんし、計画はあっても、計画通りにいかないことも多々ありますので、資金計画は固めに考えておいた方が良いです。但し、借入期間が長期になればなるほど、借入金利は高くなる傾向があります。金融機関に要望すれば、期間別の複数の提案書をだしてもらえるケースもありますので、開業資金に限らず、融資申込みの際は必ず確認が必要です。
据置期間とは、借入利息の支払いのみの期間をいいます。開業当初は、日々の資金繰りもなかなか読めませんので、一定の据置期間を設定することがオススメです。

③取引支店(金融機関)との物理的距離

クリニック内では日々現金が動きます。現時点では窓口負担金の支払手段がほとんどの場合現金だからです。全てがキャッシュレスになれば、現金が動くこともなくなるかもしれませんが、まだ時間がかかると思います。
という事は、当面は誰かがクリニックの釣り銭を準備し、日々の窓口負担金を銀行口座に入金する作業が発生します。開業すると、お金の管理の多くはドクター自身が行うことになります。したがって、釣り銭準備のための両替や、現金入金はドクターのルーティン業務になります。銀行は平日の昼間しか営業しておりません。両替や集金に足繁く通ってもらえる金融機関であれば良いですが、そうでない場合、ドクター自身が平日の日中に金融機関に通う必要があります。なので取引支店は近ければ近いほど良いです。

まとめ

一般的には、個人事業主として開業された場合、金融機関とは長いお付き合いとなります。
事業が軌道に乗った後もCTやMRI等の高額医療機器の購入や建物の修繕など、資金ニーズが発生するタイミングは必ずあります。
ぜひ長期的な視点をもって、お付き合いする金融機関を選択いただければと思います。

この記事の執筆・監修

ユアーズブレーン

ユアーズブレーンは広島市中区に事務所を構えるコンサルティング会社です。広島県内はもとより中国・四国エリアを中心に、大学病院から地域密着型の病院やクリニックに至るまで、それぞれの規模や特性に合ったかたちで医療機関の皆様がより充実した医療を提供できるよう、各種支援コンサルティングを提供しています。病院・クリニックにおいて、開業・経営・事業承継などでお困りの際はお気軽にご相談ください。

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