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開業場所について

開業場所について

開業場所について

誤った選択をすると大きなダメージを負ってしまうのが、「開業場所」選びです。
今回は開業場所のパターンと地域の競合状況の把握の仕方について解説します。

開業場所のパターン

開業場所のパターンは大きく①土地を取得し開業、②ビルやクリニックモール開業、③ドラッグストア敷地内で開業の3つに分かれます。 パターン別にメリット・デメリットをまとめると下記のようになります。

※画像をクリックするとPDFが開きます。

近年は好立地の土地はなかなか売りに出ない事もあり、①土地を取得し開業するパターンは元々親族が土地を持っている等の事由がある場合を除きあまり多くありません。

②のうち、ビル開業は都市部に、医療モールは郊外に多くある開業のスタイルです。メリットとしては土地取得の必要がないため、①土地を取得し開業する場合と比較し、開業に関する費用は少なくて済みます。また、クリニックビルや医療モールであれば、他診療科のクリニックとの相乗効果が期待できます。デメリットとしては建物の大きさは既に決まっているため、自身の思い通りの設計ができない可能性があります。

③は最近多く見られる開業のスタイルです。ドラッグストアが新規開業の土地を取得し、その場所にクリニックを併設するというものです。メリットとして、土地の取得が不要であることは②ビル、医療モール開業と同様になります。
大きく異なるのが「地域住民の認知のされやすさ」です。多くの住民が利用する機会の多いドラッグストアの近くにある事で、病気になった時に「そういえばあそこに〇〇科のクリニックがあったな」と想起しやすくなります。
デメリットとしては開業する場所を自身で選定できないことが挙げられます。

競合状況の把握

いくら良い場所を確保できたとしても、地域の人口が減少する地域であったり、近隣に多くのかかりつけ患者を抱えるクリニックがあったりすると、患者を獲得する難易度が上がってしまいます。医療機関は一般的な株式会社等とは異なり、医療提供側と患者側での情報の非対称性を解消するために様々な情報が開示されています。 それらの情報を把握する事で開業を検討している地域の競合の状況が把握できます。

①地域の人口動態や医療・介護需要を把握する

開業をするという事はその土地で長く事業を行う事になります。その土地に多くの人が居住していれば、その分クリニックを受診して頂ける機会が増加します。しかし、その地域に居住する人口が大きく減ることが予測される場合、将来的に患者数が減少する可能性が高くなってしまいます。
地域の人口動態や医療・介護需要は日本医師会が公表している「地域医療情報システム(JMAP)」から把握する事ができます。 サンプルとして広島市中区の人口動態、医療・介護需要を見てみましょう。

  • (出典:日本医師会 地域医療情報システム https://jmap.jp/

広島市中区は2035年まで人口は増加する予測となっており、以後は緩やかに減少していく予測です。しかし、医療機関を受診する可能性の高い高齢者は2045年まで増加する傾向にあるため、医療需要は増加する事が予測されています。
これらの情報から2045年までは地域の患者が大きく減る可能性は低く、開業に適した地域であると考えることができます。 注意点として、他地域からの流入や流出は加味されていないことが挙げられます。他地域に患者を多く抱えているクリニックがあり患者が流出している事や、オフィス街のため日中は多くの働いている人がいることなどは加味されていません。

②近隣の医療機関を把握する

開業する場所に競合の診療科が多くある場合、患者の取り合いになってしまう可能性があります。よって近隣クリニックの状況は開業する前に確認しておく事が必要です。 厚生労働省は住民・患者による医療機関の適切な選択を支援することを目的とした「医療機能情報提供制度(医療情報ネット)」を運用しています。そこで開業を予定している場所の近隣クリニックの診療科目は何か、医師が何人勤務しているのか、1日あたりどの程度患者が来ているのか、特殊な診療を行っているのかを知ることができます。広島県では、「救急医療NET HIROSHIMA」の中で公開されています。サンプルとして千田町夜間急病センターの情報を見てみましょう。

(出典:救急医療NET HIROSHIMA http://www.qq.pref.hiroshima.jp/qq34/qqport/kenmintop/

医療機能情報提供制度の情報から、千田町夜間急病センターは非常勤の医師4人配置があり、夜間の診療時間に内科、眼科、整形外科、外科を診療しており、1日患者は約25人という事が分かります。その他に専門医の配置数や消化器系領域であれば内視鏡検査の検査数等や整形外科であればリハビリ実施件数やMRI撮影件数を公表している医療機関もあります。
こちらのデータは各医療機関がデータを更新することになっており、直近のデータが公開されていない場合があるので、更新日には注意が必要です。

まとめ

いくら最良の医療を提供していたとしても、患者さんに来て頂かなければ意味がありません。
地域の人口や医療需要動向、近隣のクリニックの状況を把握する事で自身の開業の目的が果たせるか、事業として成り立つ可能性があるかを判断していく必要があります。

この記事の執筆・監修

ユアーズブレーン

ユアーズブレーンは広島市中区に事務所を構えるコンサルティング会社です。広島県内はもとより中国・四国エリアを中心に、大学病院から地域密着型の病院やクリニックに至るまで、それぞれの規模や特性に合ったかたちで医療機関の皆様がより充実した医療を提供できるよう、各種支援コンサルティングを提供しています。病院・クリニックにおいて、開業・経営・事業承継などでお困りの際はお気軽にご相談ください。

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