おむつかぶれは、赤ちゃんから高齢者まで幅広い世代に起こる皮膚トラブルです。
まずは市販薬で対処したいと考える方も少なくありません。しかし、部位や症状の程度によっては、薬の選び方を間違えると悪化する可能性があります。
この記事では、おむつかぶれの症状や原因を解説し、効果が期待できる市販薬の成分や選び方、おすすめの製品まで詳しく紹介します。
おむつかぶれとは、尿や便、摩擦、通気性の悪さなどが原因となり、おむつが触れる皮膚が炎症を起こした状態です。赤ちゃんや高齢者に多く見られ、特に長時間おむつを着用している場合に起こりやすくなります。
おむつかぶれの症状は、主におむつが直接当たる部分に赤みやかゆみが生じるのが特徴です。軽度の場合は皮膚がわずかに赤くなる程度ですが、症状が進行すると湿疹やただれが見られるようになり、痛みを伴う場合もあります。
ひどくなると細菌やカビによる二次感染を引き起こすこともあるので注意が必要です。
赤ちゃんは大人に比べて皮膚が非常に薄く、水分を保持する力やバリア機能が未発達なため、おむつかぶれになりやすい傾向があります。加えて排泄の頻度が多く、長時間おむつを着用することが多いため、皮膚が常に湿った状態にさらされやすいことも一因です。
おむつかぶれは皮膚炎の一種です。アトピー皮膚炎やカンジダ性皮膚炎と混同されることもありますが、おむつかぶれは基本的におむつが接触している部位に限定されるのが特徴です。一方、アトピー性皮膚炎やカンジダ性皮膚炎は他の部位にも症状が出ます。
おむつかぶれの市販薬には、皮膚の炎症を抑えたり保護したりする目的で、さまざまな有効成分が配合されています。市販薬を選ぶ際は、それぞれの成分の作用を理解し、症状の程度や使用する年齢に応じて適切なものを選ぶことが重要です。
ワセリンは皮膚を保護するための基剤として広く用いられており、おむつかぶれの予防や軽度のかぶれに有効です。皮膚に薄い膜を作り、外部刺激や湿気、摩擦などから皮膚を守る働きがあります。赤ちゃんや敏感肌の方にも使用しやすいことが特徴です。
酸化亜鉛は、皮膚表面を保護する効果に加え、軽度の抗炎症作用や収れん作用を持ちます。これにより、皮膚のただれや赤みを抑え、患部の修復を促すのです。赤ちゃんのデリケートな肌にも使用しやすいのですが、使用時に塗布部位がやや白く残ることがあります。
ジフェンヒドラミンは、抗ヒスタミン作用を持つ成分で、かゆみを抑える目的で配合されています。おむつかぶれによって生じる強いかゆみによる掻き壊しを防ぎ、悪化や二次感染のリスクを減らすことも可能です。
抗炎症作用を持つ非ステロイド系の有効成分です。おむつかぶれに伴う赤みや腫れ、かゆみを緩和する目的で用いられ、特に炎症が明らかに認められる場合に効果を発揮します。広範囲の使用にも適しており、乳児や高齢者にも使用しやすいとされています。
市販薬といっても、効果や肌への刺激性は成分によって大きく異なります。また、軟膏やクリームなどの剤形の違いも、使用感や症状の適応に影響するため、使用者の年齢や症状の重さなどに応じて適切な市販薬を選ぶことが大切です。
市販薬の効果は、配合されている有効成分によって左右されます。皮膚を保護したいときはワセリンや酸化亜鉛、炎症が気になるときはウフェナマート、かゆみが強いときはジフェンヒドラミンを選ぶとよいでしょう。
おむつかぶれに使用する薬には、軟膏やクリームなどの剤形があります。軟膏は油分が多く、皮膚にしっかりと密着して患部を保護できる点が特徴です。
一方クリームは、水分と油分のバランスがよく肌なじみが良いため、広範囲に塗布しやすくなっています。ただし、軟膏と比べてクリームの方が刺激となりやすいため、刺激を最小限に抑えたい方は軟膏を選ぶとよいでしょう。
ここからは、おむつかぶれに使える市販薬を5つ紹介します。それぞれの効能効果や特徴を解説するので、症状に合うものを見つける参考にしてみてください。
酸化亜鉛を主成分として含む軟膏です。酸化亜鉛には、患部を保護したり炎症をやわらげたりする効果があります。浸出液を吸収する働きもあるため、ベタベタしている患部にも効果的です。抗炎症成分は含まれていませんが、ステロイドと違い長期的に使用できます。
有効成分 酸化亜鉛 効能効果 湿疹・皮膚炎、やけどによる潮紅、かぶれ、あせも、ただれ 用法用量 1日数回、適量を患部に塗布するか、またはガーゼ、布などに塗布して患部にあててください。 公式サイト:亜鉛華軟膏
非ステロイド性抗炎症薬であるウフェナマートが主成分の塗り薬です。この他に、かゆみを抑えるリドカインやクロルフェニラミンマレイン酸塩、血行をよくするトコフェロール酢酸エステルなども配合されています。
有効成分 ●ウフェナマート
●リドカイン
●クロルフェニラミンマレイン酸塩
●トコフェロール酢酸エステル
●グリチルリチン酸二カリウム効能効果 皮膚炎、かゆみ、かぶれ、おむつかぶれ、あせも 用法用量 1日数回、適量を患部に塗布してください。 公式サイト:トレンタムGクリーム
赤ちゃんから大人まで使える酸化亜鉛が配合された塗り薬です。おむつかぶれの他、あせもや湿疹、しもやけや蕁麻疹と幅広い症状に使用できます。大きめのキャップになっているので、開け閉めを簡単に行えるのも特徴です。
有効成分 ●ビタミンA油
●リドカイン
●エルゴカルシフェロール
●トリクロロカルバニリド
●ジフェンヒドラミン
●酸化亜鉛効能効果 おむつかぶれ、あせも、湿疹、皮膚炎、ただれ、かぶれ、かゆみ、しもやけ、虫さされ、蕁麻疹 用法用量 1日1~2回、適量を患部に塗布してください。 公式サイト:ポリベビー
白色ワセリンよりも精製度が高く、より肌への負担が少なくなっています。価格は白色ワセリンよりやや高いものの、伸びがよく赤ちゃんへの肌にも刺激を与えにくい点がメリットです。肌に余分な負担をかけずに保護したいときの使用に向いています。
有効成分 白色ワセリン 効能効果 手足のひび、あかぎれ、皮膚の荒れ、その他皮膚の保護 用法用量 患部に薄く塗ってください。 公式サイト:プロペト ピュアベールa
デリケートな赤ちゃんの肌にも使えるステロイド配合の軟膏です。ステロイドの中でも「ウィーク」に分類される最もランクが弱いタイプのものを使用しています。おむつかぶれだけでなく、あせもや虫刺され、デリケートゾーンのかぶれにも使用可能です。
有効成分 ●プレドニゾロン
●グリチルリチン酸効能効果 湿疹、皮膚炎、かぶれ、かゆみ、虫さされ、あせも、蕁麻疹、しもやけ 用法用量 1日1~4回、適量を患部に塗布してください。 公式サイト:コートf MD軟膏
次のような場合は、市販薬の使用を漫然と続けずに早めに小児科や皮膚科を受診しましょう。
特に乳幼児や高齢者は症状の悪化が早いため、自己判断での対応を続けるのは避けてください。
最後に、おむつかぶれの市販薬に関するよくある質問にお答えします。
大人のおむつかぶれにも、基本的には上記で紹介した市販薬が使用できます。ただし、症状が改善しない場合やかぶれが広範囲に及ぶ場合は医師の診察を受けましょう。
おむつかぶれの症状が出ている部位にベビーパウダーを使用すると、汗腺が塞がれて余計に症状が悪化する可能性があります。
アズノール軟膏は市販されていません。使用したい場合は、小児科や皮膚科を受診してください。
軽度から中等度のおむつかぶれであれば、市販薬を使ったケアも可能です。ワセリンや酸化亜鉛は皮膚を保護し、炎症の進行を防ぐ効果が期待できます。
赤みが気になるときはウフェナマート、かゆみがあるときはジフェンヒドラミンが配合されているものを選ぶとよいでしょう。
ただし、数日経っても症状が改善しない場合や、膿やただれなどが見られる場合は、早めに医師の診察を受けてください。
薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。
「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」
こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。
市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。
そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。
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