
2020/02/03
1月28日に日本国内で人から人に感染されたとみられる新型コロナウイルス感染者が確認されました。
そして31日の緊急事態宣言。連日のニュースに戸惑いや不安な方がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?インターネットで調べても色んな情報が錯綜し何を信じたら良いのかわからない。そんな状況だと思いますので、今回専門の先生にお話を伺うことにしました。
お相手は峰 宗太郎先生です。先生は薬剤師かつ病理医でもあり、2018年からはアメリカの米国国立衛生研究所 (National Institutes of Health; NIH) でウイルス学、免疫学の研究をされていらっしゃいます。
峰 宗太郎(みね そうたろう)

- 国立国国際医療研究センター病院 初期研修・後期研修
- 国立感染症研究所 客員研究員→研究生
- 日本赤十字社医療センター・聖路加国際病院 非常勤医
- 獨協医科大学埼玉医療センター 腫瘍センター・病理診断科 助教
- 米国国立衛生研究所 アレルギー感染症研究所 博士研究員
- 資格:薬剤師・医師 (死体解剖資格・病理専門医)・博士 (医学)・行政書士
京都府生まれ(亀岡市)
名古屋大学 医学部医学科(3年次編入) 卒 東京大学 大学院医学系研究科 病因・病理学専攻 医学博士課程 卒
名古屋大学 医学部医学科(3年次編入) 卒 東京大学 大学院医学系研究科 病因・病理学専攻 医学博士課程 卒
- いんべ
- 先生、よろしくお願いします。
- みね(敬称略)
- よろしくお願いします。
新型コロナウイルスによる新型肺炎って?
- いんべ
- 早速ですが新型コロナウイルスによる新型肺炎って何なのでしょうか?もともとコロナウイルスというのは風邪の原因のひとつくらいにしか思ってなかったのですが。
- みね
- コロナウイルスは1本鎖RNAをもつウイルスで、ヒトに感染するものが今までに6種類知られていました。
今回、発見された新型コロナウイルス 2019-nCoV は7種類目ということになります。
既知の6種類のうち4種類はHuman Coronavirus:HCoV と名付けられており、先生のおっしゃる通りいわゆる「風邪」のウイルスで、風邪の10~15%程度、流行期で35%はこれらによるものとも言われています。残りの2種類は、2002年に流行した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)と2012年に話題となった中東呼吸器症候群コロナウイルス(MARS-CoV)で、これらもお仲間になります。
ただウイルスについて掘り下げるとマニアックな話になりますので本題に戻りましょうか。
- いんべ
- 助かります。。。
- みね
- まず簡単にこれまでの経緯を確認しましょう。
昨年(2019年)12月31日に武漢市が発表した原因不明の肺炎の起因ウイルスは、新しいコロナウイルスであることが中国当局によって確認され(2020年1月9日)、世界保健機構(WHO)は新型コロナウイルスに 2019-nCoV という名前を付けました(1月10日)。
日本では1月28日に新型コロナウイルスは、感染症法に基づく「指定感染症」・検疫法の「検疫感染症」に指定する政令が閣議決定されています。
- いんべ
- 1月29日から武漢からのチャーター機が羽田空港に到着したり、1月30日のニュースでは患者数が7711人、中国国内の死亡者は170人となったと伝えられたりすごく脅威に感じます。
日本国内では、武漢からのツアー客をのせていたバスの運転手さんと同乗していたガイドさんへの感染も確認されました。
- みね
- WHOの専門家委員会もヒトからヒトへ感染が起こる病態であると発表しており、早速行われている研究ではどの程度感染しやすいかの推測もすでになされています。
国内でもそれを裏付ける患者さんの報告があったということになりますね。飛沫感染・空気感染かは未だ不明ですが、コロナウイルスであれば飛沫感染が疑わしいと考えられます。つまり咳やくしゃみ、そこで飛ぶ唾液などによって感染が広がっている可能性があります。
ワクチンや正しい対処法などの情報は?
- いんべ
- ワクチンや特効薬はないのでしょうか?
- みね
- 早速研究は進んでおり期待できるものもでてきそうですが、現時点でこれだとはいうものはありません。
基本的には手洗いなどの一般的な感染対策(飛沫感染対策+接触感染対策)が予防策として重要です。治療は一般的な肺炎治療などが行われます。
- いんべ
- 普段われわれができることはマスクをつけ、人混みに行かないといった風邪やインフルエンザ対策と同じと考えて良いですか?
- みね
- そうですね。
デマを含めた色々な情報が流れていますが、冷静に対応していただきたいと思います。
- いんべ
- 正しい情報を得るにはどうした良いでしょうか?
- みね
- 厚生労働省(外部リンク)や国立感染研究所(外部リンク)のページには豊富な情報がまとまっています。英語が得意な方はWHOの情報提供ページ(外部リンク)も良いでしょう。
良くわからないという方はSNSの情報は鵜呑みにせずに信頼できるかかりつけ医に相談するのが安心だと思います。
- いんべ
- そうですね。クリニックにも医師会を通じ厚生労働省や国立感染研究所からの情報がはいってきます。まずは冷静に対応したいですね。
- みね
- まとめておきますと、中国武漢から広がっている新型コロナウイルス 2019-nCoV による肺炎を主症状とする感染症は、すでに中国国外にも広がっています。
感染力は麻疹などよりは低いものの、ヒトーヒト感染があり、色々な報告をまとめると死亡率は3% 以下と見積もられています。先ほどは申し上げませんでしたが基礎疾患(糖尿病、高血圧、心臓病など)があると死亡リスクが高いようです。
ウイルス学的特徴は次々に判明していますが、現時点でワクチン・特効薬はありません。しかし中国をはじめ、日本を含めた各国で対応が進んでいます。
こういった新たな病原体による感染症の流行に対しては、正しい情報を入手し、決してパニックにならず、国であっても個人であっても、できることを粛々と行うことが重要です。
煽られたり焦ったり、過剰に不安に思ったりせず、デマ・流言飛語に騙されないようにし、情報に注意しつつ、できる感染対策をして、日常を過ごすことが肝要ですね。
- いんべ
- ありがとうございます。わかりやすくて勉強になりました。まずはうがいや手洗い、咳エチケットですね!
先生のブログは新しい情報がでると適切に更新されていると伺いました。ちょっと専門的かもしれませんが先生のブログも紹介させていただいてよろしいですか?
- みね
- もちろんです。私の一番ハンサムに写っている写真もあげておりますので是非ご覧ください。笑
最後に
新型肺炎のような病気の場合、わからないことが多く、不安を煽るような記事もでるためどうしたら良いのか不安に思われる方が多いと思います。もっとも大切なことは正しい情報(今どこまでわかっていて、どこからがわかっていないのか)と冷静な行動ですね。インフルエンザや風邪も流行っていますのでうがい、手洗い、咳エチケットといった基本的な感染対策を心がけましょう。
コラムニスト紹介


小田内科 院長 忌部 航
当院は昭和26年に創立して以来地元に根差した医院です。大きな病院に行くのは抵抗をお持ちでも「ちょっと小田で診てもらってきんさいや〜」と言われ受診される患者さん、診察時に「あんたのちっちゃい頃よぅ知っとるで」と私の記憶にないことまで話をされる患者さん、私が診察室に座っているとこの医院のもつ歴史、皆様からの期待を感じます。
これまでは東京で消化器内科を専門とし内視鏡検査やエコー検査を中心に診療を行ってきました。その経験を活かし最新の経鼻内視鏡(胃カメラ)やエコーを用いて辛くない検査を行い、患者さんにあった医療の提供を目指しています。また高血圧や糖尿病といった生活習慣病、インフルエンザなどの感染症も適切に診療し皆様に信頼されるかかりつけ医でありたいと思います。
【経歴・資格・所属学会】
※経歴
平成19年3月
金沢大学医学部卒業
平成19年4月
三井記念病院
平成21年4月
国立国際医療研究センター
平成25年4月
福島県立医科大学 会津医療センター
平成27年4月
国立国際医療研究センター
平成31年1月
小田内科勤務
令和元年5月
小田内科院長
※学会・専門医
医学博士
日本内科学会:総合内科専門医
日本消化器病学会:消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会:日本消化器内視鏡学会専門医
日本膵臓学会
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