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市販薬に吸入の薬はある?喘息に効果があるのはどれ?

2024/02/16

喘息をもっている方にとって、吸入薬は欠かせない薬です。

しかし、うっかり外出先にもっていくのを忘れてしまったり、病院に行くのを忘れて薬を切らしたりした経験がある方もいるのではないでしょうか。

そのようなときに市販で吸入薬を購入できると便利ですよね。しかし、病院で処方されるすべての薬が市販で購入できるわけではありません。

今回は、市販で吸入薬を購入できるのか、喘息に効果がある市販薬にはどのようなものがあるのかについて詳しく解説します。

市販薬に吸入の薬はない

現時点で吸入薬は市販されていません。吸入薬が必要な場合は、医療機関を受診して処方してもらう必要があります。アドエアやシムビコート、レルベアなど吸入薬にはいくつか種類がありますが、すべて処方箋が必要です。

ちなみに、零売薬局でも吸入薬の取り扱いはありません。零売薬局とは、一部の医療用医薬品が処方箋なしで購入できる薬局のことです。

吸入薬は処方箋が必要な「処方箋医薬品」に分類されています。そのため、零売薬局で扱うこともできないのです。吸入薬が欲しい方は医療機関を受診するしか方法はありません。

そもそも吸入薬にはどのような種類があるの?

吸入薬と聞くと、喘息発作が起きたときだけ使用する薬を想像される方がいるかもしれません。たしかに発作のときにも使用しますが、それ以外に日常的に使用する吸入薬もあります。

発作を抑えて喘息を予防するコントローラー

喘息が起こらないように普段から使用する吸入薬を、コントローラーと呼びます。喘息は、気道に炎症が起こって狭くなることで咳や呼吸困難などの症状が出る病気です。炎症が起こった状態が長く続くと、気道が過敏になり発作を起こしやすくなります。

気道の炎症を防ぐために使うのがコントローラーです。コントローラーとして使われる吸入薬には、炎症を抑える効果のあるステロイドが含まれています。

参考

発作のときに症状を緩和するリリーバー

発作が起きたときに使うのがリリーバーです。リリーバーを使うと気管支が広がり、すぐに効果が発揮されます。気道の炎症を抑える効果はないため、発作が起きたときだけに使うのが基本です。

喘息を根本的に治療することはできませんが、発作で苦しいときに助けてくれる重要な存在として知られています。リリーバーにはステロイドが入っておらず、気管支を拡張する成分が入っています。

喘息に使える市販薬の種類

市販で吸入薬の取り扱いはありませんが、喘息に使える薬がまったくないわけではありません。手元に吸入薬がない場合は、代わりとなる薬を一時的に使うのもよいでしょう。

ただし、喘息そのものを治す薬ではないため、長期的な使用は避けてください。基本的な治療は医療機関で受けるようにしましょう。

β2刺激薬

β2刺激薬とは、気管支にある受容体を刺激することで呼吸を楽にする薬です。気管支が広がるので咳を抑えることができます。

内服のβ2刺激薬は医療機関で処方されることもありますが、頻度としてはそこまで高くありません。よく使われるのは、やはり吸入薬のほうです。市販では内服薬のみの取り扱いとなっています。

キサンチン系気管支拡張薬

キサンチン系気管支拡張薬は、気管支平滑筋に直接働きかけることで気管支を拡張する成分です。代表的な成分として、ジプロフィリンやテオフィリンが知られています。

テオフィリンは薬が効果を発揮する有効域と、副作用が出てしまう中毒域が非常に近いため、用法用量をしっかり守って服用することが大切です。

喘息に効果が期待できる市販薬

喘息は医療機関で治療を受けることが原則ですが、どうしても時間がない場合や薬を切らしてしまったときなどは、一時的に市販薬を使うのを検討しても構いません。

ただし、一時的な使用にとどめてなるべく早めに医療機関を受診するようにしてください。ここでは、喘息の方にも使える市販薬を3つ紹介します。

アスクロン

有効成分 メトキシフェナミン塩酸塩
ノスカピン
カンゾウ粗エキス
グアヤコールスルホン酸カリウム
無水カフェイン
マレイン酸カルビノキサミン
服用可能な年齢 8歳以上
用法用量 8~14歳:1日3回、1回1/2包
15歳以上:1日3回、1回1包

メトキシフェナミン塩酸塩は、β2受容体を刺激することで気管支を広げる成分です。このほか、咳を止めるノスカピン、痰の粘度を下げて出しやすくするグアヤコールスルホン酸カリウムとカンゾウ粗エキス、アレルギー反応を抑えるマレイン酸カルビノキサミンも配合されています。喘息を予防する効果はないため、症状があるときのみ使用してください。

アスゲン錠EX

有効成分 マオウ乾燥エキス
カンゾウエキス
無水カフェイン
ジプロフィリン
クロルフェニラミンマレイン酸塩
服用可能な年齢 5歳以上
用法用量 15歳以上:1日3回、1回3錠
11歳以上15歳未満:1日3回、1回2錠
5歳以上7歳未満:1日3回、1回1錠

アスゲンEXは、キサンチン系気管支拡張薬のジプロフィリンが配合された市販薬です。このほかに、生薬成分のマオウ乾燥エキスやカンゾウエキス、アレルギーを抑えるクロルフェニラミンマレイン酸塩も配合されています。5歳からと、比較的小さな子どもから服用できることが特徴です。

ミルコデ錠A

有効成分 テオフィリン
dl-メチルエフェドリン塩酸塩
グアイフェネシン
キキョウエキス
セネガエキス
カンゾウエキス末
服用可能な年齢 15歳以上
用法用量 1日3回、1回2錠

ミルコデ錠Aは、気管支を拡張する働きがあるテオフィリンが配合された市販薬です。同じく気管支を広げるdl-メチルエフェドリン塩酸塩も配合されています。15歳以上からしか服用できないので注意してください。子どもから服用できる市販薬が欲しい場合は、アスクロンやアスゲン錠EXなどを検討しましょう。

喘息の一般的な治療方法

喘息の治療は、通常どのように行われるのでしょうか。主に使用される薬の種類を紹介します。

吸入ステロイド薬

吸入ステロイド薬は、喘息の発作が起こらないように普段から使う薬です。気管支の炎症を鎮めて症状を抑えます。発作が起きているときに使用しても効果はありません。喘息の症状が治まっているときも継続して吸入することで、気管支の状態を安定させる効果があります。

β2刺激薬

β2刺激薬は、気管支を広げて呼吸を楽にする薬です。喘息の予防としてではなく、発作時に使用します。通常、喘息発作を予防するステロイドの吸入薬と一緒に使われることが多いでしょう。

気管支拡張薬

キサンチン系気管支拡張薬も医療機関で処方されることがあります。狭くなった気管支を広げて呼吸を楽にする薬です。

抗アレルギー薬

気管支が過敏になっているのを抑えることで喘息の症状を改善します。慢性的な炎症を抑えることが目的で使われる薬です。プランルカストやモンテルカストなどのロイコトリエン受容体拮抗薬が使用されます。

喘息で病院を受診する目安

強い喘息発作が出ている場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。具体的には話すのが苦しい、発作の影響で眠れない、意識が朦朧としている場合です。このような症状がある場合は、必要に応じて救急車を呼ぶことも検討してください。

とくに強い喘息発作はないものの、初めて発作を起こした場合や吸入薬を使っても症状が落ち着かない場合も医療機関を受診しましょう。

まとめ

市販に吸入薬の取り扱いはありません。万が一、吸入薬を切らしてしまったり外出先に忘れたりしたときは、早めに医療機関を受診してください。調子が落ち着いているように見えても吸入を忘れることで発作が起きてしまうことがあります。

市販では吸入薬の代わりに使える咳止めとして、アスクロンやアスゲンEXなどが販売されていますが、これらの薬の使用は一時的なものにとどめましょう。喘息は医療機関を受診して治療を行っていくことが原則です。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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