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市販薬に咳止めの貼り薬はある?代用できる市販薬や注意点を解説

2023/10/23

咳止めの貼り薬としてよく知られているのがホクナリンテープです。

貼り薬なので小さな子どもや高齢者でも使いやすく、多くの方に使用されています。

風邪を引いて咳が出ている方、気管支喘息の方などによく使用される薬です。この咳止めの貼り薬が市販でも購入できたら便利ですよね。ホクナリンテープと同じ効果をもつ市販薬は販売されているのでしょうか。

今回は、市販で咳止めの貼り薬を購入できるのか、代わりとなる市販薬があるのかなどについて詳しく解説します。

咳止めの貼り薬でよく知られているホクナリンテープとは

ホクナリンテープは、マイランEDP合同会社から販売されている咳止めの貼り薬です。0.5mgと1mg、2mgの規格があります。まずはホクナリンテープについて、詳しく見ていきましょう。

ホクナリンテープの成分

ホクナリンテープの主成分は、ツロブテロールです。ツロブテロールはβ2刺激薬と呼ばれる種類の成分で、気管支を広げる働きがあります。これによって呼吸をしやすくし、咳を止めたり息苦しさを改善したりするのです。

皮膚に貼るだけで成分が吸収されるため、嚥下が困難な方でも使いやすいことがメリットとして挙げられます。

ホクナリンテープの適応

ホクナリンテープは、次のような適応をもっています。

  • 気管支喘息
  • 急性気管支炎
  • 慢性気管支炎
  • 肺気腫

これらの疾患による呼吸困難などの緩和に有効です。ホクナリンテープには3種類の規格があり、年齢によって使い分けられています。

成人はツロブテロールとして2mg、0.5~3歳未満の小児には0.5mg、3~9歳未満の小児には1mg、9歳以上の小児には9mgを1日1回貼付する方法が一般的な使い方です。

ホクナリンテープの副作用

ホクナリンテープの副作用としては、次のものが報告されています。

5%以上CK上昇
0.1~5%未満心悸亢進、振戦、頭痛、不眠、悪心、嘔吐、適用部位そう痒感、適用部位紅斑、接触性皮膚炎、血清カリウム値の低下
0.1%未満発疹、そう痒感、全身倦怠感、めまい、興奮、しびれ感、筋痙縮、食欲不振、下痢、胸痛、浮腫
頻度不明蕁麻疹、顔面紅潮、不整脈、頻脈、胃部不快感、口渇、筋肉痛など

ホクナリンテープと同じ咳止めの貼り薬は市販薬にある?

ホクナリンテープは便利な薬ではありますが、同じ効果をもつ貼り薬は市販では販売されていません。そのため、ホクナリンテープが欲しい場合は医療機関を受診する必要があります。

なお、ホクナリンテープ以外の咳止めの貼り薬も市販では扱いがありません。そのため、市販で咳止めの薬を購入したい場合は、貼り薬ではなく飲み薬が候補となります。

ホクナリンテープと似た効果が期待できる市販の咳止め

ホクナリンテープは、気管支を拡張する働きがある咳止めの貼り薬です。まったく同じ貼り薬の扱いはありませんが、飲み薬なら似たような効果が期待できる市販薬があります。

アスクロン

アスクロンには、気管支を広げて呼吸を楽にするメトキシフェナミン塩酸塩が配合された飲み薬です。このほか、咳を止めるノスカピンや痰を出しやすくするグアヤコールスルホン酸カリウム、アレルギー反応を抑えるマレイン酸カルビノキサミンなども配合されています。

成分メトキシフェナミン塩酸塩
ノスカピン
カンゾウ粗エキス
グアヤコールスルホン酸カリウム
無水カフェイン
マレイン酸カルビノキサミン
効能効果咳、喘鳴を伴う咳、痰
服用できる年齢8歳から
公式サイト:アスクロン

ミルコデ錠A

気管支を拡張させるテオフィリンが配合された飲み薬です。市販薬としては最大量となる300mgのテオフィリンが配合されています。同時に配合されているdl‐メチルエフェドリン塩酸塩も気管支を広げる成分です。第1類医薬品のため、薬剤師による説明を受けて購入する必要があります。

成分テオフィリン
dl‐メチルエフェドリン塩酸塩
グアイフェネシン
キキョウエキス
セネガエキス
カンゾウエキス末
効能効果咳、喘鳴を伴う咳、痰
服用できる年齢15歳以上
公式サイト:ミルコデ錠A

五虎湯エキス顆粒A

五虎湯は、呼吸が苦しくなるほど咳き込んでいる方や黄色い痰が絡んだりする方に向いている漢方薬です。漢方では、激しい咳が出ているときは体に熱がこもっていると考えられています。五虎湯は、こもった熱を発散し呼吸を楽にする薬です。2歳未満の小さな子どもから服用できます。

成分五虎湯エキス粉末M
効能効果体力中等度以上で咳が強くでるものの次の諸症:咳、気管支喘息、気管支炎、小児喘息、感冒、痔の痛み
服用できる年齢2歳未満から
公式サイト:五虎湯エキス顆粒A

どうしても咳止めの貼り薬が欲しいときはどうしたらいい?

まだ薬を飲み込めない子どもが咳をしているとき、喘息の症状が酷くなってしまったときなどに、咳止めの貼り薬を使いたい場面が出てくることでしょう。今すぐ咳止めの貼り薬が欲しいときは、どのようにしたらよいのでしょうか。

医療機関を受診する

一番確実なのは、医療機関を受診する方法です。咳止めの貼り薬が欲しいことを医師に伝えれば、処方してもらえることがあります。

もちろん、処方するかどうか決めるのは医師ですので、症状によってはほかの薬を処方される可能性がゼロではありません。

とはいえ、市販では販売されていない薬ですので、まずは医師に相談してみることが大切です。

ホクナリンテープは零売薬局でも取り扱いがない

零売薬局とは、通常は病院で処方される医療用医薬品のうち、処方箋医薬品以外のものを販売している薬局のことです。

一部の咳止め薬は販売されていますが、貼り薬は零売薬局でも購入できません。そのため、貼り薬を手に入れるためには医療機関を受診するしか方法がないのです。

気管支喘息に市販薬は使える?

気管支喘息がある方にとって、薬は欠かせない存在です。市販薬にも気管支喘息に効能効果をもつ商品があります。しかし、市販薬は長期的に使うことを想定して販売されているものではありません。

市販薬は一時的に症状を抑えるもの

気管支喘息がある方は医療機関で薬を処方してもらっている方が多いと思いますが、うっかり切らしてしまったり出かけ先に持っていくのを忘れてしまったりすることもあるでしょう。

市販薬はそのようなときに一時的に使用するものです。医療機関に行けないときのつなぎとして使用するようにしてください。

市販では吸入薬の販売はされていない

市販で販売されているのは、気管支を広げて呼吸を楽にするようなタイプの飲み薬のみです。気管支喘息が起こらないように予防したり、発作が起きているときに使ったりする吸入薬の取り扱いはありません。

気管支喘息で市販薬を購入するときの注意点

市販では、さまざまなタイプの咳止めが販売されています。気管支喘息は激しい咳を伴うことがあるため、通常の咳止めを購入しようと考える方がいるかもしれません。咳止めの成分には麻薬性と非麻薬性の2種類があります。

このうち、リン酸コデインやジヒドロコデインリン酸塩などを含む麻薬性の咳止め成分は、服用することでかえって気管支喘息の症状を悪化させてしまうことがあります。

気管支喘息や気管支炎の場合は医療機関を受診しよう

気管支喘息がある場合は、市販薬を使用せず医療機関を受診して適切な治療を受けるようにしましょう。市販薬には医療機関で処方されているような気管支喘息の薬はほとんどありません。

また気管支炎が疑われる場合も、早めの受診が必要だと考えられます。市販の咳止めは、基本的に風邪による一時的な症状にのみ対応できるものと考えておいてください。

まとめ

市販薬に咳止めの貼り薬はありません。零売薬局でも販売されていないため、貼り薬を使用したい方は医療機関を受診して医師に相談するようにしてください。

なお、気管支を広げる市販薬はいくつか販売されているので、一時的に代用することはできます。市販の咳止めは一時的に使用することを前提としているので、気管支喘息や気管支炎の方、咳が長引いている方は市販薬を使用し続けずに早めに受診しましょう。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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