知的障害者の性教育の実際


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2021/12/08

プライベートゾーンって何かな?

はじめに

皆さんは、小学校、中学校、高等学校時代に「性教育」を受けた体験がありますか? 学級活動の時間に担任教師から受けたのでしょうか? 保健体育の時間に体育の先生から受けたのでしょうか? 保健室の先生から受けたのでしょうか?

おそらく、その年代によって違いがあるかもしれません。また、通った学校のエリアによっても違うかもしれません。担当している先生によっても違うかもしれません。

国語や算数などの教科学習や道徳などは「学習指導要領」に学習内容が書かれています。そして、教科書を使って授業がなされます。したがって、日本全国一律に同じ内容が教えられています。性教育については保健体育や理科などに「生命の誕生」や「思春期の心」などといった内容がありますが、「性教育」というまとまった形での授業は学校の裁量になるのではないかと考えられます。

特に知的障害や発達障害などのある子どもへの性教育についてはどのように展開したらよいのかを現場の先生方も悩んでいるというのが実態のようです。もちろん、親御さんもどうしたらよいのかわからないのではないでしょうか? 今回は、「知的障害者の性教育の実際」と題して具体的にどのように授業がなされているかを報告したいと思います。

知的障害者の特別支援学校での性教育を再現

特別支援学校高等部2年、年齢でいうと17歳、知的障害のある生徒への性教育の実際です。こんな感じで行われます。もちろん、生徒の実態や教師の目的意識などにより学校や学級ごとに違いはあります。私が特別支援学校の教師をしていた頃を思い出して再現してみました。

テーマは、「プライベートゾーンと性行動のルール〜自分と他者の体を大切にするための教育〜」です。

この授業の目的は、「自分の体は自分だけの大切なもの」「他者の体は他者だけの大切なもの」という理解を促すこと、「自分と他者の体を大切にするために守るべき性行動のルール」を知ることです。
授業は3場面に分かれています。

第1場面

第1場面性器の正しい名称を学習し、プライベートゾーンがなぜ大切なのかを内性器(生殖器)の仕組みを伝えることで理解を促す。

方法は、次の2つの教材により行います。

1.性器の名称とプライベートゾーン:人体図をもとに説明
2.性行動のルールとルールを逸脱された場合の対処方法を説明

資料は、パワーポイントに示した【人体図】です。
むね、おしり、くち、ペニス、ワギナが図示されています。

【授業の導入場面】
  • 先生
    みんなの体はどこからどこまで?
  • Aさん
    「首から下」「頭から足まで」・・・
  • 先生
    体は、頭のてっぺんから足のつま先までだね。(と言いながら、生徒に立ってもらい、身体部位を各自確認)
  • 先生
    この体は誰のもの?
  • Bさん
    「自分のもの」
  • 先生
    そう。自分だけの大切な大切な体だよ。
  • 先生
    ここに、その大切な体を描いた絵があるね。
  • どっちが男の子で どっちが女の子か分かる?
  • Cさん
    「左が男の子。右が女の子」
  • 先生
    どうして左が男の子で、右が女の子って分かった?
  • Dさん
    「左はおちんちんがあるし、右は髪が長いから。」
  • 先生
    そうだね。みんなはもう高等部の生徒だから、おちんちんじゃなくて「ペニス」と言うよ!女の子のおまたは「ワギナ」と言うよ!
  • 先生
    体全部が大事な大事なところだけど、お医者さんに体をみてもらう時、みんなで一緒にお風呂に入ったり、お着替えする時以外「他の人に見せてはいけない」「他の人に触らせたらいけない」ところはどこかな?
  • Eさん
    「ペニス」「おしり」・・・・
  • 先生
    そうだね。じゃあ、正しい場所に、(名称の書いてある)札を貼ってくれるかな?
  • ※生徒に出てきてもらい貼り付けてもらう。
  • 先生
    くち、むね、おしり、ペニス、ワギナだね。
  • 先生
    じゃあ、誰にも見せてはいけないところに、「水着」を着せて隠してあげて!
  • 先生
    誰かしてくれる人は?
  • Fさん
    「僕がしたい」・・・ ※生徒に出てきてもらい、水着を貼り付けてもらう。

第2場面

プライベートゾーンについて教える。
  • 先生
    「水着で隠れるところと口」を何というか知ってる?
  • Aさん
    ・・・
  • 先生
    ここを「プライベートゾーン」っていうよ!みんなで一緒に言ってみよう!
  • 生徒全員
    一斉に「プライベートゾーン」
  • 先生
    この大事な「プライベートゾーン」を誰かに見せて欲しいと言われて、見せてあげるのはいいことかな?ダメかな?
  • Bさん
    「ダメ」
  • 先生
    じゃあ、プライベートゾーンを触らせてって言われて触らせてもいいかな?
  • Cさん
    「ダメ」
  • 先生
    赤ちゃんや幼児さんのお世話をする時、例えば、オムツ交換やお風呂に入れる時に、大人がプライベートゾーンに触るのはいいかな?
  • Dさん
    「ダメ」
  • Eさん
    「いいよ」
  • 先生
    いいよね。じゃあ、お友達や先生の「プライベートゾーン」を触るのはいいことかな?
  • Eさん
    「ダメ」
  • 先生
    みんながいるところで「プライベートゾーン」を見せびらかしてもいいかな?
  • Eさん
    「ダメ」
  • 第3場面

    プライベートゾーンと内性器の理解させる。
  • 先生
    プライベートゾーンはなんで大事なのかな?
  • Aさん
    「見せてはいけないから。・・・・」
  • 先生
    日本のルールでは、プライベートゾーンを見せることも、触ることも許されていないよね。裸で外を歩くのは犯罪だもんね。
    もう一つ、大事な理由は、プライベートゾーンはお父さん、お母さんになるために大事なところだからだよ。
    プライベートゾーンの中を覗いてみると、男の子はこんな風になっていて、あかちゃんをつくるもと(せいし)が入っているんだよ。
    女の子の中は、こんな風になっていて、あかちゃんを育てる袋がはいっているんだよ。
    女の子の胸は、あかちゃんにおっぱいをあげるところだよね。
  • 【対処方法についての学習】

  • 先生
    もし、誰かに「プライベートゾーン」を触られたらどうする?
  • Aさん
    「嫌だ」
  • 先生
    「プライベートゾーン」を触られると、とっても変な気持ち・怖い気持ち・嫌な気持ちがするよ!
    嫌だと言って、逃げる、先生に報告することを守ってね!
    みんなで言ってみよう!
  • 生徒全員
    「嫌だ」「逃げる」「先生に言う」
  • 先生
    体は自分だけの大事なもの。自分の大事な体と友達の大事な体を大切にしてください。
  • 全ての子どもにとってもわかりやすい知的障害者の性教育

    教師や親の側も性について教えることについては躊躇があるというのが現実かもしれません。しかし、知的障害者は性的な被害に合うこともあります。子どもの時からわかりやすく性のことを教える必要があります。特に対処法を教えておかなければいけません。

    知的障害がなければ、ある程度のことは友達との交流の中で自然に学ぶようなこともあるかもしれません。知的障害がある子どもは、自然に学ぶことが難しいということを認識して親や教師は課題意識を持って教える必要があるのではないかと私は考えています。

    特別支援学校の教師時代にいつも思っていたことがあります。知的障害者への教育は、実は知的な遅れのない子どもにとってはさらにとても分かりやすい教材となるということです。今回は、性教育の授業展開を紹介しましたが、皆さんのお子さんにもこのように教えるとわかりやすいかもしれません。

    現在では、インターネットを活用すると具体的な教材にヒットすることができます。興味関心のある方は、「知的障害者 性教育」と検索してみてください。新しい発見があるかもしれません。

     コラムニスト紹介

    公認心理師・臨床心理士・特別支援教育士スーパーバイザー
      竹内 吉和 


    私が大学を卒業してすぐに教師となって教壇に立ってから30年が過ぎ、発達障害や特別支援教育について講演をするようになって、10年以上が経ちました。特別支援教育とは、従来知的な遅れや目が不自由な子供たちなどを対象にしてきた障害児教育に加えて、「知的発達に遅れがないものの、学習や行動、社会生活面で困難を抱えている児童生徒」にもきちんと対応していこうと言う教育です。
    これは、従来の障害児教育で論議されていた内容をはるかに超えて、発達障害児はもとより発達障害と診断されなくても認知機能に凹凸のある子供の教育についても対象としており、さらに子供だけでなく我々大人も含めたコミュニケーションや感情のコントロールといった、人間が社会で生きていくうえにおいてもっとも重要であり、基礎的な内容を徹底して論議しているからであるととらえています。

    そのためには、児童生徒一人ひとりの教育的ニーズを把握して適切な教育的支援を行う必要があります。ここで、単に教育とせず、教育的支援としているのは、障害のある児童生徒については、教育機関が教育を行う際に、教育機関のみならず、福祉、医療、労働などのさまざまな関係機関との連携・協力が必要だからです。また、私への依頼例からもわかるように、現在、小・中学校さらに高等学校において通常の学級に在籍するLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、知的に遅れのない自閉症(高機能自閉症・アスペルガー障害)などの児童生徒に対する指導及び支援は、喫緊の課題となっており、これら児童生徒への支援の方法や指導原理や全ての幼児・児童生徒への指導は、私達大人を含めて全ての人間が学び、関わり合うための基礎といえるコミュニケーション力を考える上で必須の知識であることを色々な場で訴えています。

    今までたくさんの子供たちや親、そして同僚の先生方と貴重な出会いをしてきました。また、指導主事として教育行政の立場からもたくさんの校長先生方と学校経営の話をしたり、一般市民の方からのクレームにも対応したりと、色々な視点で学校や社会を見つめてきたつもりです。ここ数年は毎年200回近くの公演を行い、発達障害や特別支援教育について沢山の方々にお話をしてきました。そして、満を持して2014年3月に広島市立特別支援学校を退任し、2014年4月に竹内発達支援コーポレーションを設立致しました。
    今後は、講演、教育相談、発達障害者の就労支援、学校・施設・企業へのコンサルテーション、帰国子女支援、発達障害のセミナーなどを行っていく所存です。

    【経歴・資格・所属学会】
    【紹介】
     昭和34年広島県出身。五日市中学校、廿日市高校を卒業。広島大学総合科学部、法学部を卒業。 佛教大学文学部教育学科養護学校課程修了。広島修道大学大学院修士課程法学研究科国際政治学専攻修了。広島市立大学大学院後期博士課程国際学研究科教育経営学専攻単位取得満期退学。安田女子大学大学院文学研究科教育学専攻臨床心理学コース修了。公認心理師、臨床心理士、特別支援教育士スーパーバイザー等多数の資格を取得。広島市立中学校、養護学校を経て広島市教育委員会主任指導主事、特別支援教育専門家チーム委員を歴任。広島市立広島特別支援学校を経て2014年4月竹内発達支援コーポレーション設立、代表となる。2015年から広島医療秘書子ども専門学校講師、飛鳥未来高等学校スクールカウンセラー、近畿大学豊岡短期大学非常勤講師。
    現在、竹内発達支援Co.代表。小田原短期大学保育学科(教育心理学・特別支援教育学)専任講師。岩国短期大学、広島都市学園大学兼任講師。広島県教育委員会スクールカウンセラー。広島市教育委員会幼児教育アドバイザー、特別支援教育専門家チーム委員を務める。講演、教育相談、発達障害者の就労支援、学校・施設・企業へのコンサルテーション、帰国子女支援、発達障害のセミナーなどを行っている。

    【著書・論文】
    論文:「中学校における特別支援学級担任が授業できる学科と教育職員免許に関する法解釈についての一考察」『LD研究第18巻第2号、2009,6,25』、単著  他に生徒指導、人権教育、平和教育関係多数。
    著書: 『発達障害と向き合う』(幻冬舎ルネッサンス新書,2012,4,25)、単著
    『障害のある子のための算数・数学(数量・測定)』(東洋館出版,2014,2,10)、共著
    『発達障害を乗りこえる』(幻冬舎ルネッサンス新書2014,4,17)、単著
    『実践 発達障害を乗りこえる 自分らしさを見つけて乗りこえるワークノート』(幻冬舎ルネッサンス、2014,7,1)、単著
    『発達障害が少年犯罪の原因ではなかった』(ザメディアジョン、2017.11.25)、単著

    【免許・資格等】
    公認心理師(2019年2月15日登録)
    臨床心理士(2019年4月1日登録)
    特別支援教育士スーパーバイザー(2007年4月1日登録) その他教育・福祉・医療関係の資格免許等多数所有

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