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外出自粛が明けても・・・徹夜でネット?ゲーム?

2021/10/27

皆さん、こんにちは。加賀谷です。今日は新しい依存症と言われるネット・ゲーム依存に関する話題です。

コロナ禍で外出自粛を要請され、学校にも行けず、友達とも会えず、朝から晩まで家でスマホを使い続けた若者が多いのではないでしょうか。自粛期間が明けてもスマホを使うことを止められず、気がつけばネット・ゲーム依存と言われる状態に陥っているかもしれません。

ネット・ゲーム依存の特徴としては、

出典:久里浜医療センターHP

  • インターネットに過度にのめり込み、コンピューターやスマホが使用できないと何らかの情緒的苛立ちを感じる。
  • 実生活での人間関係を煩わしく感じたり、対人関係や日常生活に弊害が生じているにも関わらず、インターネットに精神的に没頭する。

ということが挙げられます。

ネット・ゲーム依存の種類としては

出典:久里浜医療センターHP

  1. リアルタイム型チャット依存:チャットやオンラインゲームなど、利用者同士がリアルタイムにコミュニケーションを行うことを前提としたウェブサービスへの依存
  2. メッセージ型ネット依存:ブログ・BBS・SNSへの書き込みやメール交換など、利用者同士がメッセージを交換しあうウェブサービスへの依存
  3. コンテンツ型ネット依存:ネット上の記事や動画などのコンテンツなど、受信のみで成立する一方向サービスへの依存

に分類されるそうです。

熱中しやすいネット・ゲームの特徴

では、熱中しやすいネット・ゲームの特徴は何でしょうか。特定非営利活動法人アスクの調査では、

出典:特定非営利活動法人アスク

  • 「ゲーム内コミュニティ」がある
  • 「コレクション要素」がある
  • 「人対人の対戦モード」がある
  • 「チームプレイ」ができる

という特徴が挙げられています。

私が若いころにも、テレビっ子とか、深夜ラジオとか、インベーダーゲームとか、親から見たら問題視されることは多かったと思います。かつてはテレビも深夜ラジオも、送り手の都合で強制終了の時刻が来ていました。でも、今のネット・ゲームはエンドレスに続けることが出来ます。ネット・ゲームを休みの日には1日10時間以上やるという若者も居るようで、『親の立場』としては、「10時間のうち少しでも勉強しろ」と言いたくなるのも無理はないかもしれません。

現実社会で生き辛さを感じたときに、バーチャルな世界に居場所を求めるとも言われています。すなわち、「学校で嫌なことがあった」「友達とうまくいかない」「家族とうまくいかない」「先生に信じてもらえない」など現実社会で多くの困難に直面した時に、ネット・ゲームの世界に楽しい事を見つけてそこが若者の居場所になることがあります。「止めたらゲーム仲間に迷惑をかける」「ゲームの中ではちょっとは有名です」と彼らは言います。ネット・ゲームの世界での責任を果たしたり自尊心が満たされる経験をすると、バーチャルな世界が彼らの居場所として心地よい空間になるのでしょう。

ネット・ゲーム依存の治療はまだまだ手探り状態ですが、それでも一部の医療機関ではテキストを使ったカウンセリングや、リアルな世界での軽作業や、家族支援などを行っています。最近はネット・ゲームに関する相談を受けることもありますが、ほとんどが親からの相談です。しかし、不満ながらも親と一緒に来てくれる若者もきっと「このままではマズい」と考えているに違いありません。思春期や青春期は心理的に疾風怒濤の時代とも言われるくらい感情の荒波に振り回されやすい時期です。自分が思春期・青春期だったころのことを思い出しつつ、ネット・ゲームにのめり込む若者たちの心の奥にある苦悩を理解しようとする姿勢が肝心なのかもしれません。

星の王子さま サンテグジュペリ(作) 内藤濯(訳)岩波少年文庫kindle版

「おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない。)」

いつかのどこかの17歳 家族のかたちcase01(松尾修)SIGNATURE No.633, 7月号, 22-23, 2020.

「あの屋根の上の高校生の僕が、階下から聞こえる家族の団欒の声を、なんとなく煩わしく思っていたのは、まだ何者でもなく何処へも行けない自分に対して一定のイラツきを感じていたからにほかならない。旅立ちを待つ者にとって家族の愛情と庇護は、時に足枷のように感じるものなのかもしれない。」

 コラムニスト紹介

医療法人せのがわKONUMA記念依存とこころの研究所 所長  加賀谷 有行 


大学院生の時に瀬野川病院に非常勤医師として勤務し、津久江一郎先生の教えを受け、精神科救急や依存症治療の必要性を実感しました。大学院生の時に国立精神・神経医療研究センター疾病研究第三部で神経精神薬理学研究の基礎を学び、大学院の卒業後は広島大学医学部神経精神医科学講座で助手・講師を務め、臨床・教育・研究に従事しました。
平成14年4月から平成28年8月まで、広島国際大学教授として、主として精神保健福祉士・社会福祉士の養成に従事するとともに、学生相談室長・保健室長・学生部長として学生支援に携わりました。
平成28年9月より、医療法人せのがわKONUMA記念依存とこころの研究所の二代目所長を拝命し研究や啓発に従事するとともに、法人内の瀬野川病院とよこがわ駅前クリニックで診療にも携わっています。
「KONUMA記念依存とこころの研究所」のKONUMAの由来は、当法人の津久江一郎会長が師事した広島大学医学部神経精神医学講座初代教授(名誉教授)小沼十寸穂先生の名前を冠しています。初代所長である小沼杏坪先生は、小沼十寸穂名誉教授のご子息で、国立下総療養所で長らく依存症の治療や研究に邁進された方です。

【経歴・資格・所属学会】
昭和62年3月:広島大学医学部卒業
平成4年3月:広島大学大学院医学系研究科を修了
平成7年6月:広島大学医学部神経精神医科学講座助手・講師
平成14年4月:広島国際大学教授、学生相談室長、保健室長、学生部長。
平成28年9月:初代研究所所長 小沼杏坪先生の後任として、医療法人せのがわKONUMA記念依存とこころの研究所において、研究や啓発に従事している。
博士(医学) 精神科専門医 精神保健指定医 産業医

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