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『フィトケミカル』について

2021/09/21

ファイトケミカル 又は フィトケミカル (英:phytochemical)ていったい何でしょう?本当に効果があるのでしょうか?

今回は抗酸化作用を持つものが多いことから、老化予防や免疫力の向上などの働きがあるといわれている『フィトケミカル』について調べてみました。

『フィトケミカル』とは野菜や果物、豆類、いも類、海藻などの植物に含まれる化学物質という意味です。
具体的には、植物が紫外線や有害物質、害虫などの害から体を守るために作り出した色素や香り、辛味、ネバネバ、アクなどの成分ということです。

数千種類以上あるフィトケミカルには抗酸化作用を持つものが多いことから、抗酸化作用による老化予防が期待できるほか、代謝の促進、免疫力向上、脳機能の強化などその種類により、健康を維持するために摂取したい、重要な成分があるということが近年の研究で明らかになってきました。

フィトケミカルの種類と代表例

植物性の食品には必ず何らかの機能性成分が含まれています。フィトケミカルを大きく分類すると、ポリフェノール、含硫化合物、カロテノイド、テルペン類、多糖類の5種類に分けられます。

ポリフェノール

植物が光合成を行うときにできる物質の総称です。植物の色素やアクの成分で、たくさんの種類がありますが、共通の働きとして強い抗酸化作用があります。多くは水溶性で吸収されやすいものです。

代表的なもの
アントシアニン(含まれる食品:赤ワイン、ぶどう、ブルーベリー、ナス、赤しそ)
赤や青、紫などの水溶性色素で、目の網膜にあり光を感じる働きを支えているロドプシンという色素成分の再合成を促す働きがあるといわれています。
イソフラボン(含まれる食品:大豆、大豆製品など)
女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをし、骨粗鬆症の予防や更年期症状の緩和が期待されます。
フラバノール(カテキン)(含まれる食品:緑茶、カカオなど)
茶葉に含まれている苦味や渋味の成分で、抗菌作用の他、血中コレステロールの低下や血圧の上昇を抑える働きが期待できるといわれています。

含硫化合物

刺激のある香りや辛みが特徴。ダイコンやわさび、玉ねぎ、キャベツなどの中には硫黄が含まれています。辛味と刺激臭が特徴です。これらは抗酸化力があるとされ、血行、血流の改善作用や強い殺菌作用による食中毒の予防などが期待できます。

代表的なもの
スルフォラファン(含まれる食品:ブロッコリー、ブロッコリースプラウト、キャベツ)
抗がん作用が期待できるといわれています。
イソチオシアネート(含まれる食品:大根、わさび、からし菜)
すりおろすなどして細胞が壊れたときに生成される辛味成分で、免疫力の強化や抗がん作用が期待できるといわれています。
アリシン(含まれる食品:にんにく、玉ねぎ、ねぎ、にら)
切る、すりおろすなどして細胞が破壊される際に生成される香り成分。殺菌効果などが期待できるといわれています。

カロテノイド

主に緑黄色野菜に含まれている黄色・橙色・赤色の色素成分の総称で、抗酸化作用があります。天然の脂溶性色素で、カロテン類、キサントフィル類に大きく分けられます。ポリフェノールが水溶性であるのに対して、カロテノイドは脂溶性なので油と一緒に摂取すると吸収されやすくなります。

代表的なもの

カロテン類


β-カロテン(含まれる食品:にんじん、かぼちゃ)
黄色または橙色の色素で、夜間の視力の維持や、皮膚や粘膜の健康を維持する働きが期待できます。
リコピン(含まれる食品:トマト、スイカ、あんず)
赤い色素成分で、血流を改善する働きが期待できます。
キサントフィル類(含まれる食品:緑黄色野菜)
ルテイン(含まれる食品:緑黄色野菜)
黄色の色素成分で、目の健康をサポートする働きが期待できます。
β-クリプトキサンチン(含まれる食品:温州みかん、ぽんかん)
黄色い色素成分で、高血圧や動脈硬化、糖尿病、骨粗鬆症などの予防効果が期待されています。

多糖類

炭水化物の一種であり、海藻やきのこ、根菜類に多く含まれています。

代表的なもの
フコイダン(含まれる食品:コンブやわかめ、モズクなどの海藻類)
海藻類独特のぬめり成分で、食物繊維の一種です。腸内で余分なコレステロールや有害物質をからめとって排泄したり、抗がん作用や血圧低下など生活習慣病予防に有効だといわれています。
β-グルカン(含まれる食品:きのこ類)
きのこ類に含まれる消化しにくい多糖類は、免疫システムで重要な働きをする白血球に働きかけて活性化させ、免疫力の強化をしたり、コレステロール値の上昇を抑える働きが期待されています。
イヌリン(含まれる食品:ごぼう、玉ねぎ)
血糖上昇の抑制や血液中の中性脂肪を下げる働きが期待されています。

テルペン類

ハーブや柑橘類などの特有の香りと苦味成分です。抗酸化作用や免疫力強化などが特徴にあり、生活習慣病の予防や抗うつ作用などが期待できます。

代表的なもの
リモネン(含まれる食品:柑橘類)
リラックス効果があるといわれている香り成分で、交感神経を活性化させて血管を広げ、血流改善を助ける働きが期待されています。
メントール(含まれる食品:ハッカ)
香り成分で、免疫力を高める働きが期待できるといわれています。

以上がフィトケミカルと言われるものです。

これらの中でも一番なじみがあるのが、ポリフェノールではないでしょうか?

25年くらい前ですが、ワインに含まれるポリフェノールが動脈硬化に効くという学説が発表されて、ワインを作っている酒造メーカーがおおいに宣伝しました。そのせいか糖尿病患者さんの中にワインを飲む方が増えたことがありましたので、アルコール含有量の表を作ったり、野菜などの色素にもポリフェノールが含まれることを指導しました。

この時はワインをたくさん飲んでいるフランス人がグルメなのにもかかわらず、イギリスやドイツなどの国々より心筋梗塞の死亡率が低く寿命が長いので、何かしらワインに秘密があるのではないかということでした。その研究の結果がワインのポリフェノールでしたが、これを酒造メーカーが上手にコマーシャルに使ったのでワインが大ブームになりました。私は当時勤務していた病院の理事長に頼まれて論文を取り寄せたので、ことさらよく覚えています。

フィトケミカルというのは栄養素の中には含まれません。栄養素やカロリーを供給できるわけでもないし、摂らなかったとしても欠乏症になるものでもありません。食品の分類で考えると生体調節機能がある食品ということになります。しかし、植物が備えているその植物のための機能がどの程度我々の体に吸収されているかというと、生体への吸収効率は極めて低いという研究結果があります。

我が家でも時々流行があり、雑誌やネットの記事の影響なのか、今はブロッコリーのスプラウトを抗酸化作用が強いのだと信じて食べています。

フィトケミカルは健康に良い働きをするらしいということが分かりました。しかし、マスコミで強調されるほどの効果があるものでもありません。例えばニンニクや玉ねぎを生で食べ過ぎて胃を荒らすのではなく、それだけを単体で摂取するということより、いろいろな食品をバランスよく食べることを考えるべきだと思います。

余談ですが、小さい頃「色々な色の野菜を食べなきゃだめよ」と言われたことはありませんか?

私は小学生の頃お弁当のサンドイッチにピーマンが入っていて、みんなが下校してもまだ食べきれなくて、母が迎えに来たことがありました。お陰で今では嫌いなものは何ひとつありません。

次回はいきなりですが、ポッコリお腹について書きたいと思います。男性の狸のようなお腹が気になって
仕方がないので、どんなことになるか書いてみたいと思っています。

コラムニスト

管理栄養士  伊藤 教子 

長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。

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