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汗も重要な役割!食事から熱中症対策をしましょう!

2021/07/15

暑い季節がやってきました。「暑いし、汗はかきたくない」と思っていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。

暑さ対策のニュースをよく目にする機会が多いですが、皆さんはどのようなことを意識されていますか?食事による「体調管理や水分・塩分補給」は熱中症対策の一つです。今回は「食事」と「汗」をキーワードに熱中症対策について考えていきたいと思います。

汗は体温を調節する役割があります。

皆さんは汗をかくことは好きですか?私は、屋外でのスポーツをしていたので、汗をかいている時に風が吹くと涼しくて気持ちよかったなあという経験が濃くあるので、暑い時期は気持ちよく汗をかきたいなと思っています!同じ意見の方がいると嬉しいのですが、、、

汗は私たちの体温を調節する機能を担っており、気温が高く体温が上昇しやすい夏場にはとても重要な働きをしています。

熱中症は暑熱環境で発生する障害の総称で、熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病などに分けられますが、体温調節をうまくコントロールできなくなってしまったことが原因で様々な症状を招いてしまいます。ポイントは「体温調節」です。

私たちは、安静時でも様々な代謝や心臓・内臓の働きにより熱を生み出しています。気温が高い日は日光や地面等から熱をもらい、運動時はさらに筋肉で熱を生み出します。上昇した熱を平熱に保つために、血液循環(皮膚血流)の増加や汗をかくことで体温を調節しています。汗をかけばOKではなく汗をかき、この汗が蒸発することで熱を外に放っているのです。室内などの湿度が高い場所や汗が乾きにくい服装をしている時は、汗を蒸発することができず熱を放てないので熱中症を招くリスクが高くなります。ですので、熱中症予防の指標に使われているWBGTは気温、湿度、そして 輻射熱(ふくしゃねつ) の3つを取り入れた温度の指標となっています。

汗をかくことは体温を調節する役割、そしてこの汗の材料になっている水分や塩分の補給が体温調節の機能を維持するために重要になってくるのです。

深部体温上昇を防ぐ

現在スポーツ現場では深部体温(体の内部:核心部)の上昇を防ぐことで熱中症予防やパフォーマンス低下を防ぐ取り組みが勧められるようになりました。

その対策として氷と飲料水が混合したシャーベット状の飲料物であるアイススラリーの摂取が注目されています。スポーツ飲料でアイススラリーを作成した場合、身体冷却に加え、水分、電解質、糖質も同時に補給できるので効果的な方法とのことでドラッグストアでも市販品が並ぶようになりました。凍らせて使用するため、使用する前にアイススラリーが溶けてしまわないように管理することが現場での課題となりますが、様々なお店で購入できるようになってきているので活用しやすくなるのではと思います。

食事も水分補給の役割があります。

体内の水分は恒常性が保たれています。1日に必要な水分量(水分出納)の例を図で示していますが、1日に失われてしまう水分量が2.5ℓなので、2.5ℓの水分補給が必要ですよという考え方になります。1日に必要になる水分量の内訳は、全て飲料だけではありません。必要量の約半量は「食事」が水分補給となります。水分補給をしているのに、熱中症になった、あるいは夏バテ気味という場合は、食事量が不足していた可能性もあります。夏場は食事量が落ちない、落とさないことも大切になってきます。

食事で水分補給と言われて想像する料理は「汁物」という方が多いと思いますが、実は「主食(ごはん、麺、パンなど)も水分を多く含んでいる食材です。特にごはんや麺類は水分を多く含んでいます。例えば、ごはん200gは120gほどの水分を含んでおり、ごはんを抜くことで食事からの水分補給を必然的に減らしてしまっているのです。麺類はのど越しがよく食欲が落ちている際も食べやすいのでおすすめですが、冷たい麺類は胃腸の働きを落としやすいので食べ過ぎには気を付け上手に活用したい食材です。麺類に対して、お米はよく噛んで食べれば胃腸のぜん動運動などの働きを促しやすいので「ごはん食」中心に時々麺類という食べ方が夏場はおすすめです。

注)水分量は体重や年齢、性別、筋肉量などによって必要量は異なりますので量は参考にしてください。

写真:200gごはん(雑穀ごはん)と120gの水

塩分を積極的に取り過ぎている場合もあります

熱中症対策をうたう市販商品はここ数年増加しています。夏場のドリンク売り場には熱中症対策、塩分補給と書かれたものがズラッと並んでいますね。どれを買おうか迷う方も多いのではないでしょうか。

塩分といえば日本人の食事摂取基準2020年版(厚生労働省)では1日の塩分(食塩)目標量が成人男性で7.5g未満、女性が6.5g未満と以前よりも厳しい基準となっています。(日本高血圧学会では1日6g未満)

令和元年の国民健康・栄養調査(厚生労働省)の結果では、1日の食塩摂取量は平均10.1gで、男性10.9g、女性9.3gでした。WHO(世界保健機構)では1日5g未満となっており、食事摂取基準では様々な現状をも配慮し塩分摂取の目標量は設定されています。

日本食は塩分を摂りやすいので、汗をたくさんかいていないにも関わらず塩分が含まれている飲料をたくさん飲んでしまうと、塩分過剰で血圧上昇やそのほかの生活習慣病を引き起こす可能性も否めません。基本は「汗で失われた水分や塩分を補給するということ」が大切です。特に市販ドリンクを飲んだ際に、しょっぱい、甘いなと感じた際はその栄養素は足りている可能性が高いです。また運動時に適した組成ではない商品もまれにありますのでラベルやパッケージだけで選ばず判断できる力を選手は養いたいです。

朝食を抜かないこと、とても大切です。

午前中に仕事や学校、練習、試合などがあるという場合は、朝食はしっかり食べることがパフォーマンス発揮につながります!寝ている間に私たちの体の中では新陳代謝が行われており、様々な栄養素や水分などが使われています。夏場は就寝中に汗をかくこともあるので、発汗により水分を失っている場合もあります。起床時すぐの排尿で普段よりも色が濃い場合は脱水しているので、コップ1杯の水やお茶をまず飲むようにしましょう!

そして、起床時は体温が低い状態です。朝食を食べることで水分や塩分を補給できるだけでなく、胃腸の動きも活性化し体温が上昇、体や脳へスイッチを入れてくれます。良いスイッチを入れるためには朝食に飲み物だけ、パンだけ、ヨーグルトだけよりも、ごはんと温かい具沢山味噌汁、卵焼きなどのたんぱく源のおかずの一汁一菜スタイルをおすすめします。また味噌汁1杯で約1.2gの塩分補給になります。味噌は塩分(ナトリウム)だけでなく、不要な塩分を体の外へ出す働きもするカリウムも含み、腸内環境も整える発酵食品なので選手のコンディション作りの強い味方です!ちなみにスポーツドリンクは500mlで約0.5g、経口補水液は約1.5gの、塩分タブレットが1粒あたり約0.1gの塩分が含まれています。

試合前に食欲がなく量が食べられなかったり、緊張してお腹がゆるくなってしまったりすると、足をつってしまうこともあります。アップ不足も考えられますが食塩(ナトリウム)などの体内のミネラルや水分不足の可能性もあります。汗の成分は主に水分・塩分ですが鉄、カルシウムなどのミネラルも微量に含まれています。ですので、汗をかいての水分補給も大切ですが暑い季節は毎日の食事をいかに食欲落とさず食べることができ体水分量を高く保てるか、ここが重要です。

また夏が旬の食材は水分量が多く、カリウムが豊富ですので積極的に活用しましょう。夏の食卓も楽しみながら、毎日の食で熱中症を予防し、良い練習・良い試合を積み重ねてパフォーマンスアップに繋げていきたいですね!

参考:日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」

コラムニスト

管理栄養士・公認スポーツ栄養士  馬明 真梨子 

ソフトボール部だった10代の頃からスポーツ傷害や体重管理、食事に悩まされた経験からNSCA認定パーソナルトレーナーと管理栄養士の資格を取得。
大学卒業後、大手フィットネスクラブ、パーソナルトレーニングジムでの運動・栄養指導に携わる。その後、学生から実業団アスリートの寮食献立作成や選手サポート、セミナー講師などの業務に従事。さらに専門的な知識やスキルを習得するためスポーツ栄養の専門家である公認スポーツ栄養士の資格を取得し、これまで700名以上の指導に携わる。
現在、「広島のスポーツを食で盛り上げる」をモットーに、スポーツ栄養サポート・普及教育活動・食環境整備などに力を入れ、セミナー講師、チームスタッフ、企業アドバイザー、専門学校非常勤講師など各分野で選手や広島の方を食で支える取り組みを行っている。

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