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夏風邪の原因や治し方は?市販薬の選び方と対策方法を解説

2021/07/13

「近頃、のどの痛みがある」「空気が乾燥しているわけでもないのに、咳が出るようになった」

梅雨の時期から夏にかけてこのような症状が出ているのなら、もしかしたら夏風邪を引いているのかもしれません。夏風邪は、冬に引く風邪とはまた違う症状が出るものです。ここでは夏風邪の原因から症状、市販薬の選び方までご紹介します。

1.夏風邪の原因

風邪は基本的にウイルスが原因です。しかし夏の風邪と冬の風邪とでは、原因になるウイルスの種類が違います。

1-1.ウイルス感染

夏風邪の原因となるウイルスは、次のものが代表的です。

エンテロウイルス
手足や口に水疱ができる手足口病、40度近い高熱が突然出るヘルパンギーナなどの原因になるウイルスとして知られています。ヘルパンギーナになると、強いのどの痛みが出ることが特徴です。のどや腸でよく増殖します。
アデノウイルス
プール熱や流行性角結膜炎などの原因になるウイルスとして知られています。鼻水やのどの痛み、気道炎の原因にもなり、時には肺炎を起こしてしまうことが特徴です。

エンテロウイルスやアデノウイルスは、湿度の高い環境を好みます。そのため、湿度が高くなる梅雨から夏にかけて感染が流行しやすいのです。一方で冬風邪の原因となりやすいインフルエンザウイルスやRSウイルスなどは低温で湿度の低い環境を好みます。

1-2.冷房や扇風機

とくに冷房や扇風機の風が直接あたりやすい環境で過ごしていると、どうしてものどや鼻の粘膜が乾燥しやすくなるものです。

粘膜はウイルスや細菌が体内に侵入しないようにするバリアのようなはたらきがあります。
しかし冷房や扇風機で粘膜が乾燥すると、バリアがうまくはたらくなりウイルスや細菌に感染しやすくなってしまうのです。

2.夏風邪で見られやすい症状とは?

夏風邪では次のような症状がよく見られます。

・のどの痛み
・咳
・発熱
・腹痛
・下痢

エンテロウイルスはのどや腸で増殖する性質をもっているので、夏風邪ではのどの痛みや腹痛、下痢などが起こりやすいことが大きな特徴です。お腹の調子が悪くて医療機関を受診したときに「お腹からくる風邪ですね」と言われた場合は、エンテロウイルスの仕業も考えられるでしょう。

鼻水や鼻づまりが出やすい冬の風邪と比べると、夏風邪はまた違った症状が出やすいのです。

3.夏風邪を治す方法

本来なら体調が悪いときは家でゆっくり休むのが鉄則です。しかし試験が迫っていたりどうしても休めない仕事があったりすると、そうは言っていられないこともあるでしょう。

3-1.睡眠時間を十分に取る

体を休めることで、ウイルスや細菌をやっつける免疫機能のはたらきを活発にできます。

・熟睡できるように寝る直前はスマートフォンやテレビを見ない
・寝る時間の2時間前に湯船につかって体を温める
・夕食は寝る時間の2時間前までには済ませる

これらのことを意識して、深い睡眠を取れるようにしましょう。

3-2.体を温める

免疫機能は、体温が上がることではたらきがよくなります。そのため風邪を早く治すためには体を温めることが大切です。

体内に侵入したウイルスや菌を排除するナチュラルキラー細胞は、体を温めることではたらきが活性化することがわかっています。湯船につかったり、温かい飲み物を飲んだりするよう意識してみましょう。

4.どうしてもつらいときは風邪薬を飲んでみよう

睡眠を取っても体を温めてみても、すぐには症状が治らないこともあります。「どうしても症状がつらい」「人前で咳をしたくない」といった状況のときは、風邪薬を飲んで症状を落ち着かせるのもありです。

4-1.風邪薬は「症状を抑える」だけで「治す」わけではない

「風邪薬は風邪を治すもの」と思っている方もいるかもしれません。しかし風邪薬は、治すものではなく「風邪の症状を抑えるもの」。風邪を引く原因はほとんどがウイルスの感染です。ということは、ウイルスをやっつける薬を飲まなければ風邪は治せません。

「それなら抗ウイルス薬を飲めば風邪を治せるのでは?」と思うかもしれませんが、そうはいかないのが現状です。夏風邪はエンテロウイルスやアデノウイルスが原因になりやすいことはわかっていますが、風邪の原因となるウイルスは200種類以上もあると言われています。

そのため「あなたの風邪はこのウイルスが原因です」と確定することは現実的ではありません。ウイルスの種類によって治療に適した薬の種類が変わるため、抗ウイルス薬が風邪の治療に使われることはほぼないのです。

4-2.自分の症状に合う風邪薬を選ぼう

風邪を治す薬はないものの、症状を抑える効果のある、いわゆる「風邪薬」なら市販でも購入できます。熱やのどの痛み、咳や鼻水など一通りの症状が一気に出ているようなら総合風邪薬を選ぶと便利でしょう。

もしも熱だけ、のどの痛みだけのように局所的な症状が出ているのなら、症状に合わせた市販薬を選ぶのが基本です。総合風邪薬だけが風邪の症状を抑えられる薬というわけではないので注意しましょう。

一度にたくさんの症状を抑えられることは便利ですが、不必要な成分まで入っていることが多いため、総合風邪薬はいろいろな症状が出ているときだけ飲むのがベターです。

熱やのどの痛み、頭痛が気になるなら「イブプロフェン」か「ロキソプロフェンナトリウム」
熱やのどの痛みを和らげる主な成分には、イブプロフェンとロキソプロフェンナトリウム、そしてアセトアミノフェンがあります。解熱効果や鎮痛効果はロキソプロフェンナトリウム>イブプロフェン>アセトアミノフェンです。

アセトアミノフェンは効果が控え目な成分なので、症状によっては効き目がいまいちの可能性もあります。
のどの痛みだけが気になるなら「鎮痛剤」や「トローチ」
のどの痛みしか症状がないのなら、あえて総合風邪薬を飲む必要はありません。鎮痛剤やトローチを選ぶのが無難です。トローチを購入する場合は、炎症を抑えるグリチルリチン酸が入っているものがよいでしょう。

総合風邪薬にはのどの痛みだけなら本来は必要ない咳止めや鼻水を止める成分も入っているため、眠気やのどの乾きなどの副作用が起きてしまう可能性があります。
咳だけが気になるなら「咳止め」
咳止めは主に「痰のからみを取る薬」と「咳そのものを抑える薬」があります。痰がからんで「ゴホゴホ」という咳が出るときは痰の粘りを取るカルボシステインが配合されたものを選ぶとよいでしょう。

痰がからまず「コホコホ」と乾いた咳が出るときは、デキストロメトルファンやジヒドロコデインなどが向いています。
腹痛や下痢がメインなら「胃腸薬」
お腹の調子が悪いのなら風邪薬ではなく胃腸薬を選びましょう。「お腹からくる風邪です」と言われると、風邪薬を飲みたくなるかもしれません。

しかし一般的な風邪薬は、かえってお腹の調子を悪くしてしまう可能性があるもの。解熱効果や鎮痛効果を期待して配合されているイブプロフェンが胃腸に負担をかけてしまうことがあるのです。ただし、下痢止めはウイルスの排出を遅らせてしまう可能性があるのでおすすめできません。

5.市販の風邪薬を1週間ほど飲んでも治らないときは医療機関を受診しよう

風邪のように見えても、実は違う疾患にかかっていることもあります。たとえば咳の症状だけが続く場合は気管支炎、鼻水や鼻づまりだけが続くときは花粉症や副鼻腔炎の可能性もあるでしょう。

このような場合は、いくら風邪薬を飲み続けても症状はなかなか治りません。市販の薬を一週間ほど飲んでも症状がほとんど変わらないときは、飲み続けずに医療機関を受診しましょう。

6.【番外】抗生物質は風邪に効かない

「風邪を引いたら抗生物質」は、実は間違いです。風邪の原因のほとんどはウイルスですが、抗生物質はウイルスに効果はありません。抗生物質は菌をやっつけるものなので、風邪の症状で飲んでも意味がないのです。

むしろ抗生物質を飲むことで腸内細菌のはたらきが悪くなり、胃腸の調子が悪くなってしまうこともあります。風邪に効果がないだけでなく返って体調を崩すこともあるため、抗生物質は「風邪のときには飲まない」のが正解です。

7.まとめ

夏風邪はエンテロウイルスやアデノウイルスなど、湿度が高い環境を好むウイルスが原因です。のどの痛みや咳、腹痛や下痢などがよく見られます。風邪を早く治すためには睡眠をよく取り、体を温めることが基本です。

どうしても症状がつらいときは、市販の風邪薬を飲んでみるのもよいでしょう。ただし、むやみに総合風邪薬を選ぶのではなく、症状に合わせたものを選ぶことが大切です。

もし風邪の症状が長引くときは、気管支炎や花粉症などほかの疾患の可能性もあります。1週間程度を目安に医療機関を受診しましょう。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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