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処方薬依存って何?

2020/09/16

アンサング・シンデレラは、石原さとみさん主演で、病院薬剤師が奮闘するドラマです。9月10日の放送では、処方薬依存や過量服薬(大量服薬)が話題になっていました。

皆さんこんにちは、加賀谷です。

処方薬とは、病気の治療に必要な薬で、医師が処方箋に記載して薬剤師が調剤した薬のことを言います。その処方薬に依存した状態が処方薬依存です。

どのような処方薬が依存に陥りやすいのでしょうか?

よく知られているのは、睡眠薬(睡眠導入薬)・抗不安薬や鎮痛薬や鎮静薬です。睡眠薬・抗不安薬は一般の人たちは安定剤と言うことが多いようです。鎮痛薬にはNSAIDsと言われる薬剤や医療用麻薬などがあり、痛みのある患者さんにとっては必要な薬ですが、依存に陥ることがあるので注意が必要です。鎮静薬は現在では麻酔の一方法として使われることがありますが、鎮静薬の中にも依存性の高いものがあります。

睡眠薬・抗不安薬の依存の症状の特徴を挙げてみます。

  • 大量または長期間に薬を使う。
  • 減量を試みても失敗する。
  • 薬への強い欲求(渇望)。
  • 職場、学校、家庭に対して責任を果たせない。(例えば、睡眠薬を飲みすぎて次の朝に起きれず欠勤する)
  • 薬のために、社会的、職業的、娯楽的活動を縮小する。(例えば、休日にドライブに行かずに、抗不安薬を飲んで家でボーっと過ごす)
  • 耐性。(薬が効きにくくなる)
  • 離脱。(薬の効果が切れたときに、不安や不眠などが増強する)

睡眠薬・抗不安薬を初めて使ったときの使用理由は?(参考1)

  • 不眠だったから。
  • 不安だったから。
  • 気分が落ち込んだから。
  • 自暴自棄になって。

つまり、アルコール依存症や薬物依存症と同じように、睡眠薬や抗不安薬を使って自分の辛さを軽減しているうちに依存に陥ることも多いようです。

依存に陥ると、様々な方法を駆使して薬を確保しようと試みます。例えば、ドラマでも出ていたように20か所以上の医療機関をドクターショッピングして薬を集める人も居ます。法律や規則を破ってでも薬を大量に入手するという行為が既に依存症の症状といえます。

処方薬依存症の人にしばしば見られる特徴を挙げてみます。

  • 自己評価が低い。
  • 本音を言えない。
  • 弱音を吐けない。
  • 孤独感が強い。
  • 不安が強い。
  • 人に頼るのが苦手。

太宰治、川端康成、芥川龍之介、マイケル・ジャクソン、タイガー・ウッズなど、古今東西、著名人が処方薬に依存あるいは乱用したことが報道されることがあります。文芸家や芸術家やスポーツ選手のような名を成した人も、内面では孤独だったり、不安だったり、何らかの辛さを抱えていたのかもしれません。

なお、OTC薬(over the counter:処方箋無しで薬局で購入できる薬:市販薬)にも少量の依存性薬剤を含有する薬があるので、薬局で買う薬といえども依存に陥らないように注意する必要があります。

ドラマでは娘さんの折り紙が処方薬依存の回復に一役買っていました。どうやって処方薬依存から回復するか悩んでいる方、あるいは処方薬依存ではないかと心配な場合は、専門医療機関に相談してみてください。

また、かかりつけ薬局を持ちお薬手帳を利用することは、処方薬依存の予防や処方薬の誤用防止に有効です。薬剤師さんが丁寧にチェックしてくれるので、お薬手帳を活用しましょう。

(参考1)松本俊彦;処方薬乱用・依存からみた今日の精神科治療の課題:ベンゾジアゼピンを中心に 臨床精神薬理 16: 803-812, 2013.

コラムニスト|医療法人せのがわよこがわ駅前クリニック 医院長:加賀谷 有行

医療法人せのがわよこがわ駅前クリニック

診療内容

内科・循環器内科・心療内科・精神科・デイケア・精神科デイケア・禁煙外来・予防接種

所在地・アクセス

〒733-0011 広島市西区横川町2丁目7-19 横川メディカルプラザ6F Tel:082-294-8811
  • JR 横川駅(南口)より徒歩約2分
  • 横川駅より中広通り経由で約1分

医院長  加賀谷 有行 

 よこがわ駅前クリニックは2003年7月7日に開業して以来、地域の皆さまの安心、安全を目標にして、真心を持って地域の医療・保健・福祉サービスのお手伝いができるように、こころと身体の両方の相談や治療を実践して参りました。
 2024年4月1日より下原篤司先生の跡を継いで加賀谷有行がクリニック院長に就任しました。世の中は先行き不透明な時代になり、児童から高齢者まで各世代で悩みや生きづらさを抱える人が多くなっています。
 今後は心療内科・精神科を中心として内科的にも地域の皆さまの早期治療や健康増進に寄与できるよう尽力する所存ですので、よろしくお願いいたします。

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