薬物問題で話題になった2人の元野球選手に関連して思うこと


広島の頼れる病院・クリニック、ドクターを探すならファミリードクター
病院・クリニック 4,006件掲載中! (2020年10月22日現在)


総合TOP > 医療・健康コラム > 薬物問題で話題になった2人の元野球選手に関連して思うこと

2020/07/14

先日、広島県民にとって衝撃のニュースが報じられました。

皆さん、こんにちは。加賀谷です。

広島東洋カープで活躍したジャクソン元選手が大麻所持容疑で逮捕されたそうです。広島時代は笑顔が人気の選手でしたが、あの笑顔の奥に何かあったのでしょうか?

大麻は世界各地に生息する植物で、地域によってマリファナと言われたりハシシュと言われたり呼び名が違います。主成分はカンナビノイドで、少量の使用は酩酊感をもたらし使用者の間ではグッド・トリップと表現されます。しかし同時に不快感を生じることもあり(バッド・トリップ)、これを経験した人は使用を控えるようになるようです。また、多量や長期の使用に伴う幻覚妄想の可能性も指摘されています。国によっては合法とされていることもあり、他国の若者ではタバコと同様に使用されることもあるようです。日本では法律違反にもかかわらず、なんで大麻を使用する人が居るのでしょうか?

大麻使用は日本でも増加しており社会問題になっているので、厚生労働省でも大麻関連の精神症状について実態調査を行いました(注1)。

大麻依存症の患者を対象とした病院調査

精神科病院を受診した患者さんのうち大麻依存症の患者さんにアンケートをしています。

大麻に期待する効果(複数回答可)

実態調査の結果のうち、大麻に期待する効果の上位4つを下に示します。

気晴らし、気分転換、リラックス 70%
「ハイ」になりたい 48%
心理的苦痛(不安・焦燥・抑うつなど)の緩和 32%
仲間意識の強化 25%
  • 気晴らし、気分転換、リラックス⇒大麻が無いと、リラックスできない。
  • 「ハイ」になりたい⇒大麻が無いと、気分が沈んでしまう。
  • 心理的苦痛の緩和⇒大麻が無いと、心理的苦痛が酷くて辛い。
  • 仲間意識の強化⇒大麻が無いと、仲間と一緒に居られずに孤独だ。

このように、彼らは、何らかの生き辛さを抱えていて、それを軽減するために大麻を使用することがわかります。

ジャクソン元選手も何かに悩んで孤独だったのかなあ・・・。

多くの薬物依存症者が、自分の生き辛さを軽減するために違法であれ合法であれ薬物に依存してしまいます。これを薬物依存症者の自己治療仮説と言います。彼らの治療にとっては、大麻などの依存性薬物に代わる何かが必要です。

清原和博さん、覚せい剤乱用で逮捕されましたが、今は執行猶予期間が終了しました。清原さんは現在は薬物依存症の回復者として、厚労省主催の「依存症の理解を深める普及啓発イベント」で発表などの活動をしています。回復者として依存症の啓発という居場所を見つけつつあるのかもしれません。現在の清原さんは、「依存症は回復できる(回復途上だが)」ということを身をもって示してくれています。 清原さんはその著書で「執行猶予が明けるのが怖い・・・・」、「『最後の1回だけ』と考えている自分がいる」と記しています(注2)。

皆さん驚くかもしれませんが、正直に告白できるのはとても大事なことだと私は思います。アルコール依存症でも「祝い事があると飲んでしまう(失敗するのがわかっていても酒があったら飲んでしまう)」、「やる事が無いから飲んでしまう(孤独だから飲む)」、「明日から入院するから、入院する前に最後の一杯(止めないといけないんだけど『今は』止められない)」と思う人はとても多いでしょう。こんなことを告白されたときは、「ダメ!」と怒らずに告白してくれたことを労い、最寄りの精神保健福祉センターや保健所や自助グループへの相談や依存症専門医療機関・依存症治療拠点機関への受診を勧めていただけたら幸いです。

「もし世の中に薬物依存のことをひとりで抱えて悩んでいる人がいたら、どうか薬物の専門病院に行ってください。」「どうか人に頼ってください。ひとりでこの病気に勝てる人はどこにもいないんです。」

仲間と一緒にこの病気から回復している清原さんの言葉です(注2)。

  • 注1.松本俊彦:大麻依存症の患者を対象とした病院調査 令和元年度厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業)分担研究報告書
  • 注2.清原和博(著)薬物依存症 文藝春秋 2020

 コラムニスト紹介

医療法人せのがわKONUMA記念依存とこころの研究所 所長  加賀谷 有行 


大学院生の時に瀬野川病院に非常勤医師として勤務し、津久江一郎先生の教えを受け、精神科救急や依存症治療の必要性を実感しました。大学院生の時に国立精神・神経医療研究センター疾病研究第三部で神経精神薬理学研究の基礎を学び、大学院の卒業後は広島大学医学部神経精神医科学講座で助手・講師を務め、臨床・教育・研究に従事しました。
平成14年4月から平成28年8月まで、広島国際大学教授として、主として精神保健福祉士・社会福祉士の養成に従事するとともに、学生相談室長・保健室長・学生部長として学生支援に携わりました。
平成28年9月より、医療法人せのがわKONUMA記念依存とこころの研究所の二代目所長を拝命し研究や啓発に従事するとともに、法人内の瀬野川病院とよこがわ駅前クリニックで診療にも携わっています。
「KONUMA記念依存とこころの研究所」のKONUMAの由来は、当法人の津久江一郎会長が師事した広島大学医学部神経精神医学講座初代教授(名誉教授)小沼十寸穂先生の名前を冠しています。初代所長である小沼杏坪先生は、小沼十寸穂名誉教授のご子息で、国立下総療養所で長らく依存症の治療や研究に邁進された方です。

【経歴・資格・所属学会】
昭和62年3月:広島大学医学部卒業
平成4年3月:広島大学大学院医学系研究科を修了
平成7年6月:広島大学医学部神経精神医科学講座助手・講師
平成14年4月:広島国際大学教授、学生相談室長、保健室長、学生部長。
平成28年9月:初代研究所所長 小沼杏坪先生の後任として、医療法人せのがわKONUMA記念依存とこころの研究所において、研究や啓発に従事している。
博士(医学) 精神科専門医 精神保健指定医 産業医

column/button_type2_b

 ランダム記事

column/btn_column_page
トップ