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夕食を少し考えてみましょう

2019/07/23

1日のうちの夕食の位置づけはとても大きいと思います。
夕食を上手に食べる方法を考えてみましょう。

夕食は1日の終わりに食べる食事です。「ゆっくり好きなものを食べたい」と思われる方が多いことでしょう。忙しくていつも深夜に自分一人で済ませているという人もいらっしゃるでしょう。 食事時間もまちまちでしょうし、食べる内容も様ざまでしょう。

健康づくりのための夕食は、何を考えて食べるのが良いでしょうか。

健康を考えた時の夕食を、考えてみましょう。夕食は「何を」「どれだけ」「いつ」たべるのが良いでしょうか?時間栄養学を考えた場合には、特に食べる時間を考えることも大事な要素になってきます。

まず「いつ」食べるのが一番良いのでしょうか?

体内時計を調節する[BMAL1]というたんぱく質は、脂肪を溜めこむ働きがあります。したがって気をつけたいのは、この[BMAL1]の働きが最も活発になる21時以降に胃腸の中に食べ物がたくさんある状態を避けなければ、食べたエネルギーのほとんどが脂肪として、取り込まれてしまいます。「20時以降にものを食べてはいけない」とか、「寝る3時間前までに食事を終えよう」と言いますが、少なくとも21時までには食事を終えるようにするのが理想的です。もちろんこの後の間食も控えましょう。やむを得ず21時以降に食事をすることになると、空腹なので少量で夕食を切り上げるのがとても難しくなってしまいます。できれば17時~18時頃に一度、おにぎりやサンドイッチなどで軽く済ませておくのが良いでしょう。その後夕食には、間で食べた分を差し引いて軽く済ませます。

夕食は寝る前に食べるものですから、軽めに設定しましょう。

とても難しいと思いますが、夕食では空揚げやハンバーグといったものではなく、できれば煮物や焼き物、豆腐や魚といったもので、糖質や脂質を少なめに、野菜中心の食事の方が望ましいです。胃の中に大量に食べたものが残っていると、消化活動により就寝後も胃が働き続けるため、興奮状態となって寝つけなくなってしまいます。野菜をたくさん食べることで野菜に含まれる食物繊維が脂質や糖質の吸収を穏やかにし、腸内環境を整えます。だからと言って、胃の中がからっぽでも消化のためのエネルギーが不要になるため、血液がすべて脳に集まってしまい、脳が覚醒状態になって寝つけません。また「遅くなるから夕食は食べるのをやめよう」と夕食を抜くのはどうでしょうか。これはお昼からの絶食の時間が長くなりすぎるので、体は危機を感じて脂肪を溜めこもうとします。したがって、脂肪を溜めこみやすい、太りやすい体になってしまいます。

夕食は一日の終わりで、一番の楽しみですし、作り手の方もご馳走を作って腕を振るいたいところです。私も長い間、夕食にご馳走を作ってきました。子供たちは8時~9時の間には寝かせていましたので、子供の食事は手早く用意して、夜遅く帰る夫のために別メニューをあとから作り足していました。しかし間違っていたようです。夕食を18時頃に食べられるのなら良いでしょうが、そうでないなら、できるだけあっさりとしたもので、腕を振るったほうがよさそうです。

レシピ案.1

ハンバーグを用意したい時は豆腐を混ぜ込んだ豆腐ハンバーグはどうでしょうか?

ひき肉を半分の量にして、その分木綿豆腐をしっかり絞って混ぜ込みます。もちろん子供用にはケチャップ味でもおいしく食べられます。大豆やキノコを刻んで入れてもおいしいです。この主菜には野菜が足りないようですから、副菜には少しピリ辛にしたゴボウのきんぴらと小松菜のお浸しはどうでしょうか?

レシピ案.2

鮭フライをやめたらムニエルにして良いのですが、鮭にキノコやネギ、ニンジンの千切りを載せて酒を振り、2切れくらいなら耐熱容器に並べてラップをして、電子レンジ調理でも簡単に火が入ります。 レモンやスダチで食べても良いですし、ポン酢をかけて食べても良いでしょう。主菜に手がかかりませんので、副菜には切り干し大根やひじきなど少し煮る時間がかかるものを足しても良いでしょう。 また、現代のように季節感のない時代ですから敢えて、カボチャの煮物やナスの味噌煮など夏野菜を使って、子どもたちに野菜の季節を教えるのも大切なことだと思います。

献立の整え方

夕食は野菜を多めに、糖質、脂質の少ない食事にしましょう。(鮭の酒蒸し、焼きナス、金平ごぼう)



夕食を家族で共にすることのメリット

かなり前の日経ビジネスの記事ですが、ハーバード大学の基礎研究の中から、親が子供と一緒にできる最も大切なことは「家族と夕食を共にすること」だということが書いてありました。ハーバード大学医学部のアン・フィシェル教授によると、20年間にわたる北米、ヨーロッパ、オーストラリアでの研究を通じて、家族と夕食を共にすることが、子供の心と体に重要だという結果が得られたと報告しました。定期的に家族そろって食事をすることは、10代の子供の喫煙、アルコール、薬物使用、暴力、学校での問題、性的行為、うつ症状や自殺願望など高リスクな行動を減らすことが分かっています。また、これもハーバード大学の研究ですが子供の語彙力も家族との夕食時の会話で日常使われる3000語以外の、稀に使われる1000の単語を覚えるという結果がありました。米国の調査ですが、1996年の初めての調査では10代の若者51%が週に5回、家族と食事を共にし、2007年にはこれが56%に増えているそうです。

日本の調査では、これは日本栄養士会の調査ですが、5歳児では夕食を『母親とほぼ毎日食べる』子どもは89.7%でしたが、「父親とほぼ毎日食べる」子供は34.6%ととても低い数字が示されています。

確かに、私が子育てをしていた30数年前とはずいぶん社会も変わってきていますが、まだまだそれぞれが仕事だ、塾だ、お付き合いだと忙しく、子供と一緒に夕食を食べるのが難しいと思います。しかし、1日に一度でもゆっくり家族が顔を合わせて、お互いのことを話して、お互いのことを知り理解を深めるには一番簡単な方法だと思います。しかし、両親が共に働き大急ぎで食事の用意をして、ゆっくり食事をというにはあまりにも時間がなさすぎます。食事に1時間近くかけていては、どう考えても時間が足りません。つい「早く食べてしまいなさい」と言ってしまいそうです。管理栄養士の職業的には、夕食は良い食育の機会でもあります。食物の大切さや、体のこと、また食材のこと、できればお箸の持ち方や食べ方の作法なども教えたいところです。週に数度でも決めて家族で食事をしたいところです。

私の子育て中、夫は子供が寝しずまって帰るという状態でしたから、やむを得ず朝食だけは一緒にしようと決めていました。しかし、これもクラブの朝錬で早朝に家を出る子がいたりすると、難しくなります。

日頃の家族関係がうまくいっていないと、時折の家族と共にする食事もうまくいかないでしょう。

夕食を考えた時、改めて子育て中の食事のことや現在の食事内容までいろいろ考えさせられました。私の子育て中はコンビニもなく、そんなにお弁当屋さんや惣菜売り場も多くなかったので、かなり計画的に作らないと間に合いませんでした。不便な時代が逆に懐かしい気がしています。「もう2度とあんなには頑張れないな」と思うこともあります。 30年前と比べると栄養学も随分変わってきています。まるで反対の学説が飛び出してくることもあります。まだまだ新しい学問ですので、発表された新しい論文の1つ1つに振り回されることのないようにしましょう。 ただ1つ言えることは食事は基本的には飢えを防ぎ体を維持し、動くためのエネルギーを補給していくためのものであるということです。現代は楽しみであったり、娯楽の一部になっている部分が多過ぎるように思います。

8月はアメリカ旅行を計画しています。次回は異文化の国で経験したいろんなことを書きたいと楽しみにしています。

コラムニスト

管理栄養士  伊藤 教子 

長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。

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