クインケ浮腫(血管浮腫)
クインケ浮腫とは、血管浮腫とも呼ばれ、突発的にまぶたや口唇が腫れる症状を有します。
多くの場合、原因を特定することは難しい疾患です。一般的にはかゆみは伴わず、突発的に腫れの症状だけが現れます。原因は特定できないことが多く、ストレスや疲労の蓄積が発症要因になりやすいです。
クインケ浮腫の原因
クインケ浮腫を発症させるメカニズムは、遺伝性と非遺伝性に分かれます。
遺伝性の場合、C1エステラーゼインヒビター(C1-INH)遺伝子の異常によって生じます。クインケ浮腫だけでなく腹部にも発症する傾向があります。口唇だけでなくまぶたの腫れが現れることもあるため、そのような症状が繰り返すようであれば採血をし、先天性のクインケ浮腫であるか診断しなければなりません。
遺伝性クインケ浮腫は、10歳代から外傷や精神的ストレスなど様々な契機から生じ繰り返されます。
一方で、非遺伝性クインケ浮腫は、深いところに生じたじんま疹が大部分で、後天的なC1-INH活性の低下、薬剤などによっても生じます。
クインケ浮腫の原因になりやすい薬剤は、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(降圧剤であるACE阻害剤)や、ARB(アンジオテンシンII 受容体拮抗薬)です。初めて投薬された薬の服用後に発症したのであれば、その薬が原因である可能性も高いため、皮膚科の受診をおすすめします。
クインケ浮腫の症状
クインケ浮腫の特徴的な症状は、突然限局した浮腫が生じ、2~5日間持続します。口唇やまぶたに生じやすく、「夕方から夜間に目が腫れる症状が現れた」または、「朝起きたら口が腫れていた」といった症状が見られます。
クインケ浮腫は血管の浮腫であるため、皮膚表面の変化や痒みはありません。そのため、単なる「むくみ」であると自己判断し、時間が出来たら病院に行けばいいとすぐに受診しない方もいます。しかし、クインケ浮腫の発生箇所は、口唇やまぶたといった粘膜に近い部分に浮腫が現れるケースが多い傾向にあります。そのため、受診せずに放置していると、目であれば充血、口唇であれば口腔内が腫れるといった症状が見られ、繰り返し発症します。
クインケ浮腫の予防と治療
クインケ浮腫は原因特定が難しいケースが多く、根本的な予防を講じることも困難を極めます。疲労感やストレスはクインケ浮腫の誘因になるため、適度な運動や読書等でストレス発散をし、睡眠時間を十分に確保することも重要です。特に、疲れを感じた後にクインケ浮腫が現れやすいのであれば、疲れを自覚し身体を休めることが重要です。
非遺伝性の治療は、蕁麻疹の治療に準じ飲み薬である「抗ヒスタミン剤」が処方されます。数週間ほど繰り返しクインケ浮腫の症状が再発する場合には、抗ヒスタミン剤を長期的に内服しなければなりません。
遺伝性の治療はC1-INH製剤(ベリナートP®︎)やトラネキサム酸を服用することもあります。症状の重症度などにより適切な治療法は異なるため、皮膚科やアレルギー科を受診しましょう。
古江駅前すみれ皮ふ科 院長東儀 那津子
【経歴・資格・所属学会】
平成18年
北里大学医学部 卒業
平成18年
北里大学病院 初期研修医
平成20年
北里大学病院 皮膚科入局
平成23年
北里大学病院 助教
令和2年
北里大学病院 診療講師
北里大学病院のほか、大和市立病院、昭和大学病院藤が丘病院形成外科、
座間総合病院、武蔵村山病院、神奈川県内の皮膚科・美容皮膚科で勤務
【所属学会】
日本皮膚科学会
皮膚悪性腫瘍学会
日本美容皮膚科学会
日本アレルギー学会
【資格】
医学博士
日本皮膚科学会専門医・指導医
厚生労働省臨床研修指導医
ボトックスビスタ®︎認定医