原因

鉄不足になる原因は次の４つに分けられます。

1. 鉄の摂取不足
   極端な偏食や無理なダイエットがもとで鉄不足になることがあります。
2. 鉄の吸収障害
   鉄は主に十二指腸で吸収されますが、消化管に何らかの異常があってうまく吸収できないことがまれにあります。
3. 鉄の喪失
   出血が原因で鉄分が失われ、食事からの補給が追いつかない場合です。例えば、月経過多(子宮筋腫、子宮内膜症など)や消化管出血(胃潰瘍、胃がん、大腸がん、大腸ポリープなど)です。激しいスポーツで引き起こされることもあります。
4. 鉄の需要増加
   成長期や妊娠時などは普段よりもたくさんの鉄が必要になります。そのため普通の食生活をしていても鉄不足になることがあります。

症状

症状としては、倦怠感、動悸、息切れ、頭痛、めまい、顔色不良などがあります。また、鉄が不足することで、爪が割れやすくなったり氷などを無性に食べたくなるといった症状が見られることもあります。
自覚症状がほとんどなく、健診などの血液検査で指摘されて初めて気づかれることも珍しくありません。

検査・診断

血液検査で血液中の赤血球数・ヘモグロビン・血清鉄などを調べることで診断がつきます。体内に貯蔵されている鉄の量を測る指標となる血清フェリチンの測定をすることも大事なポイントです。診断は血液検査で比較的簡単につきますが、重要なことは鉄不足をきたした背景を探ることです。女性で慢性的な経過をたどる場合は、月経出血量の多さによることがほとんどですが、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患の可能性もあります。また、閉経後の女性や成人男性の場合、消化管出血をきたす疾患、例えば胃がんや大腸がんの発見のきっかけとなることがあります。

治療

治療は原則鉄剤の経口投与（飲み薬による治療）を行います。注射による治療もありますが、過敏反応や鉄過剰などのリスクもありますので、内服ができない方や急速に鉄の補充が必要な方にのみ用います。鉄剤内服による副作用として、悪心、嘔吐、便秘、下痢などの消化器症状があります。これらの消化器症状は徐々に軽減することが多いのですが、症状が強い場合には主治医に相談してください。
また、鉄不足の原因となった疾患が特定された場合には、その疾患に対する治療も必要です。

予防

体内の鉄分が不足しないよう、日頃から栄養バランスの整った食事を取ることが重要です。鉄分を多く含んだ食品としては、肉類、レバー、赤身魚、大豆、海藻などがありますので、それらを積極的に食べると良いでしょう。また、妊娠中など鉄分が不足しやすく食事だけで十分な摂取が難しい場合は、サプリメントを利用するのも良いでしょう。