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特発性血小板減少性紫斑病 | 症状から調べる | ファミリードクター

特発性血小板減少性紫斑病

特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic thrombocytopenic purpura、以下ITPと略します)は、免疫の仕組みの異常によって血小板が減少し、出血しやすくなる病気です。6ケ月以内に治癒する「急性型」と、6ケ月以上続く「慢性型」に分類されます。国が指定する難病の一つです。

原因

何らかの原因で血小板に対する自己抗体(自分自身の血小板を破壊する抗体:抗血小板抗体)が産生され、血液中で血小板に結合します。この抗血小板抗体が結合した血小板は脾臓などに取り込まれ、マクロファージという細胞に破壊され、その結果として血小板が減少します。また、最近では、この抗血小板抗体は骨髄での血小板産生も障害し、血小板産生を低下させるといわれています。
しかし、なぜ自己抗体ができるのかについては、未だによくわかっていません。

症状

血小板は出血を止めるために非常に大切な役割を果たしています。したがって、血小板の数が減ることで出血しやすくなったり、血が止まりにくくなります。皮下出血(点状出血または紫斑)、歯肉出血、鼻出血、下血、血尿、月経過多など、種々の出血症状が見られます。稀ですが、重症な場合は脳出血も起こりえます。
出血症状に気づかず、検診時の血液検査などで偶然に血小板減少を指摘されることもあります。

検査・診断

白血病や膠原病、薬剤による血小板減少症などといった、血小板が減少する他の病気でないことを確認する除外診断が必要です。そのため、血液検査(末梢血液検査、生化学・免疫血清学的検査)に加えて、骨髄検査を行うこともあります。

治療

ITPの治療は、必ずしも血小板数を正常化させることではなく、危険な出血を予防することを目的に行います。そのため、軽症で出血症状がない場合には、無治療で経過観察だけのこともあります。

主な治療法は次の通りです。

ヘリコバクター・ピロリ菌除菌療法

ITPの患者さんでピロリ菌陽性の場合、抗菌剤でピロリ菌の除菌を行うと約半数の患者さんで血小板数が増加することから、ピロリ菌が陽性の場合、まず除菌療法が勧められます。

副腎皮質ステロイド療法

副腎皮質ステロイドは自己抗体の産生を抑えて血小板を破壊されることから守る働きがあります。最も一般的な治療法であり、ピロリ菌除菌療法の効果のない患者さんやピロリ菌陰性の患者さんに対して第一選択の治療となります。

トロンボポエチン受容体作動薬

血小板の元である骨髄中の巨核球を増やす薬です。

リツキシマブ療法

B細胞に作用して血小板を破壊する自己抗体の産生を抑える治療法です。

脾臓の摘出術

血小板は主に脾臓のマクロファージによって壊されるので、脾臓を除去すると血小板数が増えることが期待できます。

その他

生命を脅かす重篤な出血、手術前や分娩前などの緊急を要する場合には、効果が一過性ではあるものの高い即効性が期待できる治療法として、免疫グロブリン大量療法、ステロイドパルス療法、血小板輸血を行うことがあります。

生活上の注意

通常は、一般の日常生活に制限する必要はありません。ただし、重労働や激しいスポーツなどはなるべく控え、ケガや打撲には注意しましょう。
また、この病気を診察してもらっている医師以外の医師の診察(歯科治療や内視鏡検査など)を受ける場合は、必ずその医師にITPであることを伝えましょう。

この記事の監修

のだ内科ファミリークリニック 院長野田 昌昭

2018年3月に西区井口明神で「のだ内科ファミリークリニック」を開院させていただきました院長の野田昌昭と申します。
広島大学医学部を卒業後、内科・血液内科を中心に長年数多くの診療に携わってきた経験を生かし、お子さまからご年配の方までご家族で気軽に訪れて、何でも相談できる明るいクリニックを目指したいと考えております。地域のみなさまの健康をサポートする、頼れる「かかりつけ医」となれるよう努力研鑽してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【経歴・資格・所属学会】

【経歴】
昭和58年 広島大学附属高校卒業
平成元年 広島大学医学部卒業
平成8年 広島大学原医研血液内科大学院修了
平成8年 国立大竹病院 内科医師
平成10年 広島大学原医研血液内科 助手
平成10年 米国ウィスコンシン州Blood Research Institute留学
平成12年 国立大竹病院 内科医師
平成15年 社会保険広島市民病院 健康管理センター副部長
平成17年 広島市立広島市民病院 内科部長
平成25年 広島市立広島市民病院 血液内科主任部長
平成29年 草津病院 内科医師
平成30年3月 のだ内科ファミリークリニック開院

【資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本血液学会専門医・指導医
日本感染症学会専門医
日本内科学会中国支部評議員
日本血液学会中国四国支部評議員
日本医師会認定産業医
身体障害者福祉法指定医「免疫機能障害」
広島県もの忘れ・認知症相談医(オレンジドクター)
広島県がんよろず相談医

【所属学会】
日本内科学会
日本血液学会
日本感染症学会

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