肥満は放っておくと肥満症という健康障害をひき起こす元になります。
日本ではBMI(体重/身長の2乗)25以上の人を肥満と呼びますが、アメリカではBMI25~30の間は過体重という呼び方をして、30以上を肥満と呼んでいます。脂肪をたくさん蓄積していると寒さに強くなるでしょう。また、飢餓に対しても少々なら耐えることができるでしょう。
しかし、それ以外に何か特典があるでしょうか?

私の子供時代(昭和20年代~30年代)に太った人はあまり記憶にないですし、大学生の頃もできたての管理栄養士養成課程で学びましたが、糖尿病の人も少なかったので特に力を入れて教えてもらった記憶がありません。その後日本では生活が豊かになって食生活の欧米化や車、電化製品の普及により少しづつ肥満者の割合が増えて、糖尿病人口もうなぎ登り、今や30歳~60歳の男性の約3割が肥満だと言われています。
そもそもメタボリック症候群のチェック項目として腹囲を測り始めたのは、主に動脈硬化症など内臓脂肪の蓄積が体にとって害をするからです。肥満による健康障害のリスクが高い人を肥満症と診断します。
この肥満症という状態では、治療として食習慣や運動習慣を見直して、改善する必要があります。
肥満症とならないように減量に取り組んでみませんか?

あなたのお腹はあなたが食べたものでしか膨らみません。これはあなたが食べたもののエネルギー量が消費するエネルギー量をはるかに上回っているという事でしょう。
肥満気味の方の食事指導をする際に「私は水を飲んでも太るんですよ」と、昔はよく聞いたものですが、さすがに最近は聞かなくなりました。どちらかと言うと「○○の食べ過ぎですかね」と何となく気がついてはいるのですが・・・・という事が多いように思います。
ただ、肥満の人の中には自分の摂取量をかなり低く見積もっておられる方がおられるように感じます。昔から言われていることですが、人は食べてはいけない間食などは少なめに、たくさん食べた方が良い野菜などは実際より多めに申告するようです。これは実際には間食は減らして、野菜などは多めに摂る必要があると認識しているという事です。
内臓脂肪が多くて太っている人は、継続的に単純糖質を控えて運動を行うと生活習慣病の予防・治療に効果的だということが明らかになっています。これができれば痩せることができるはずです。極端なダイエットは一時的には減量できても、継続できなくてリバウンドするというケースがよくあります。
無理なダイエットはストレスになります。現在の食習慣を細かく書き出して、量が多すぎたのか? 食事内容に偏りがなかったか? 食事時間は適切か?など、何が太る原因になったのかしっかり認識した後に改善のための食習慣を身につけましょう。
ただ単に食事量を減らすのは、ストレスになるでしょう。我慢できなくなって、反動で爆食いという結果になったという報告も聞きます。あまり量にこだわらず、食べる順番を考えたり、咀嚼回数を意識して増やしたり、夕食が遅い時間だという方は、少し早めに食べられるように工夫したり、無理なら夕食は軽めに済ませるように変えてみませんか?
また、運動は苦手という方も、脂肪を燃焼させるためには『有酸素運動』が効果的です。ジョギングや水泳は無理だと思われる方は、エレベーターやエスカレーターを止めて階段を使ったり、大げさに体を動かして家事をするとか、少し遠くまで買い物に行くとかを考えてみませんか?私はいまだに電動自転車を買ったことがありません。通勤も買い物も一番重い変速ギアにして乗っています。
ウォーキングの脂肪燃焼の効果は20分以上歩かないと効果が期待できないと言いますが、歩いて筋肉が増えるだけでも摂取したブドウ糖を取り込む場所を作っていると思って、たとえ5分でも10分でもこまめに歩くようにしましょう。

まずはメタボ検診で設定されている男性の腹囲85cm、女性90cmの腹囲をめざして食生活の改善を始めてください。それにはできれば食事記録(ざっくりで良いです)と毎日の体重測定から始めましょう!
私は寝る前に体重を測り、朝起きて排尿後に測って比較しています。体重が昨夜とあまり変わらないようなら夕食の食べ過ぎです。そのままだと体重が増える恐れがあります。朝の体重が減るような食べ方を目指してください。
とにかく狸のようなお腹は格好が悪いだけでなく、確実にあなたの体に害をします。今すぐ何とかする決心をしてください。
次回は最近気になっている骨粗しょう症の予防について書いてみたいと思います。高齢になる前から食生活に気を付けたいものです。
長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。
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