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呉市を、誰もが住み続けたい、行ってみたい、人を惹きつけるまちに|新原 芳明さん

呉市を、誰もが住み続けたい、行ってみたい、人を惹きつけるまちに

呉市の市長として、西日本豪雨災害の復旧・復興や、新型コロナウイルスへの対応など、前例のない大きな課題に取り組みながら、より住みやすい、より魅力的なまちづくりを進めてきた新原さん。生まれ育った呉市への思い、目指しているこれからの呉市の姿、そして医療や子育てなどの福祉分野での取り組みについて、「Family Dr.」のインタビューに応えてくださいました。

ホームタウンである呉市への思いを聞かせてください。

生まれてから高校生までをこのまちで過ごし、その後も折々に帰省していましたが、2016年からまた呉市に戻って暮らしています。子どもの頃に親しんだ呉市も、今の呉市もずっと私のベースとなっており、もはや自分の身体の一部だと言っても過言ではないと思います(笑)。

仕事で国内はもとより外国でも各地の生活を経験しましたが、これほど多彩な魅力を持つまちはなかなかありません。子どもの頃から呉市が好きでしたが、市長になってさらに広く深く知るほどに、もっともっと好きになっています。

灰ヶ峰からの呉市街、呉市章のモチーフとなっている九つの峰で囲まれているのが良く分かる

呉市の魅力はどんなところにあると思いますか?

例えば、数々の映画やドラマのロケ地になっていることから紐解くことができると思います。最近(2022年4月現在)公開された映画では、『ドライブ・マイ・カー』『ぼけますから、よろしくお願いします。〜おかえりお母さん〜』が挙げられます。最新情報としては、広島出身の今村夏子さんのデビュー作が原作で、今年7月公開予定の映画『こちらあみ子』のロケも行われました。

その他にも『孤狼の血』『吟ずる者たち』『るろうに剣心』『記憶屋 あなたを忘れない』『風の電話』『君がいる、いた、そんな時。』『アルキメデスの大戦』『この世界の片隅に』など、枚挙に暇がありませんし、大崎下島の御手洗地区はCMのロケ地にも度々使われています。

他の自治体の首長と交流する機会が多くありますが、こんなに頻繁に映像の舞台となっているまちはそうそうありません。

たくさん用意してくださった資料の中から、呉市でロケが行われた映画『記憶屋 あなたを忘れない』の原作本を手に取って、呉市の魅力を語る新原市長

『ドライブ・マイ・カー』の濱口監督からも、『是非ここで撮影したい』と言っていただきましたが、それが呉市の持つ力だと感じています。瀬戸内海と島、山などの空気感のすばらしさに加えて、長い歴史を物語るここにしかない風景が多く残っていること。古くは『万葉集』や西行の『山家集』に詠まれた時代、そして何と言っても世界有数の工廠が置かれた明治から昭和の時代を肌で感じることができることが、多くの人を惹きつけるのではないでしょうか。

そうした歴史が呉市の礎(いしずえ)になっていますか?

旧海軍工廠が置かれた時代の発展は、産業、経済、インフラなど多くの面で今日の社会的基盤になっています。特に世界最先端のものづくりや生産管理などソフト面の技術が集約し、戦艦や飛行機、それらに関わる機械や部品を造ってきました。特に“ものづくり”の力は根強く、今でも「こんなものを造れないか」という話が持ち込まれると、誰かが造ることができると聞きます。

また世界を見て回っていた海軍さんたちの影響で、写真、絵画、お茶やスポーツなど、文化的な面でも活発でした。私自身も両親や祖父母から「とてもオープンでハイカラなまちだった」と聞いて育ったように、最先端のまちとして発展した記憶と誇りがいろいろな形で今も息づいていると感じます。

現在の医療・福祉環境の充実にもつながっているのですね。

海軍の病院が置かれ、医療面でも高い水準の環境が築かれたため、歴史のある大きな病院が多くあります。また、中核市になる以前から保健所が置かれていました。

医師会、歯科医師会、薬剤師会と、呉市の福祉関連機関との連携が優れていることも特長で、一緒に勉強会を開いたりしながら、地域の医療・福祉の充実に取り組んできた実績は呉市の誇れる点です。地域包括支援という考えが一般的になる前から、官民が一体となって医療と介護を一緒に考えてきましたし、糖尿病性腎症重症化予防が呉市モデルとして注目されています。2021年には、呉市と医師会、歯科医師会、薬剤師会の4者が連携して骨粗しょう症の重症化を防ぐ取り組みが、公益財団法人「運動器の健康・日本協会」が選ぶ、「運動器の健康・日本賞」の奨励賞を受賞しました。

医療・福祉の優れた連携は、新型コロナウイルスの検査、感染者の対応、予防接種の実施にあたっても、迅速で適切な体制づくりに大きな力を発揮したと言えます。

子育て支援に関する取り組みについて教えてください。

2021年度に掲げた「第5次 呉市長期総合計画」の中で、目指すべき姿の一つ目に「若い世代が安心して子どもを産み育て、未来を創る人材を育てるまち」という項目を挙げました。

海上自衛隊や全国的な企業も多い呉市には、身近に親族など頼る人のいないお母さんもいます。そんなお母さんを一人にしない、不安にさせないための支援に力を入れています。

例えば、スマホで呉市のホームページを開いて下にスクロールすると、「ライフイベント」のバナーが並んでいます。その「妊娠・出産」をタッチすると、「くれ妊娠ほっとライン」「プレママほっとタイム」など、必要な情報にすぐにアクセスできるように工夫しました。さらに児童手当や乳幼児等医療費助成、保育所入所の手続きなどを、子どもさんのお昼寝中などにスマホの操作だけで行えるようにしました。それらをわかりやすく案内する「子育て手続きナビ」や、子育て中の保護者をサポートするアプリ「くれっこアプリ」なども整えて、安心して子育てできる環境づくりに努めています。

  • 画面イメージ
  • 呉市子育て支援アプリ「くれっこアプリ」

    呉市では、子育て中の方をサポートするスマートフォンアプリ「くれっこアプリ」 の配信をしています。 ●予防接種! 成長記録! 街の育児情報!
    ●妊娠から出産、育児までをフルサポート。
    ●地域とつながる、安心の子育て支援アプリです。

    呉市子育て支援アプリ「くれっこアプリ」配信中

先端技術の活用など、新しいことへの挑戦には特に力を入れていらっしゃいます。

市長選への立候補を打診された時に、お世話になった方々から「呉の人たちの話をよう聞いてください」と言われました。そのことをきっかけに、頻繁に呉市に帰ってくるようになり、いろいろな人の話を聞いて感じたのは、呉のまちが暗くなっているということでした。かつてあれほどオープンに新しいものを受け入れていたまちが、内向きに縮こまっている。実際に、事業主の2代目・3代目が新しいことを始めようとしても「どうせ失敗するからやらんでいい」と言われるという声も耳にしました。

未来の呉を活気あるまちにしていくためには、新しいことに挑戦できる気風を育てていかなくてはなりません。そのために、ビジネスプランコンテストを開いてクラウドファンディング型ふるさと納税で支援したり、リノベーションスクールやカクシン塾、創業カフェを開いたり、様々な機会を設けて、若い人も女性も積極的に起業や事業承継に取り組める環境づくりを推進しています。また、呉駅周辺の再開発を新しいまちづくりの拠点にしたいと考えており、大学院生や子ども連れのお母さんなど様々な人たちが一緒に雑談しながら、まちの将来について話ができる「アーバンデザインセンター」などを設ける予定です。

呉駅周辺地域総合開発イメージ

これからのまちづくりには、SDGsなど新しい価値観への対応や、AIやセンサーなど新しい技術を活用したスマートシティの推進が欠かせません。幸い呉市には、医療の重症化予防に関わるレセプトデータの集積など、データ活用の素地があります。新たなサービスや産業の創出、市民生活の質の向上に役立ててもらうための呉市版データプラットフォームの試作版を、呉市のHPでも公開しました。

これからも様々な視点から、誰もが安心して暮らせる、「呉が好き」と誇れるまちづくりに、皆さんと一緒に取り組んでいきたいと考えています。「こんなことができたらいい」「こんな呉になってほしい」など、皆さんの声を聞かせてください。

呉市HPに「声をお聞かせください」の コーナーを設けています。

新原 芳明(しんはら よしあけ)

1950年 呉市川原石生まれ。
呉市立港町小学校、私立修道中学・高等学校卒業、東京大学法学部卒業。大蔵省、在ベルギー日本国大使館二等書記官、同一等書記官、在フランス日本国大使館参事官、富山県副知事、内閣官房、総務省、証券取引等監視委員会事務局長、造幣局理事長などを経て、2017年 呉市長就任。2男2女の父。

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