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西本 紗織さん|インタビュー

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妊娠から出産後まで、女性のライフサイクルに切れ目のない寄り添いとサポートを|西本 紗織さん

妊娠から出産後まで、女性のライフサイクルに切れ目のない寄り添いとサポートを

広島市で助産院を開き、妊婦や産後のママへの訪問ケアを行っている西本さんが、さらなるサポート体制を充実させる必要性を感じたのは、新型コロナウィルス感染症の拡大。里帰り出産ができなくなった、ご親族に手伝いに来てもらえなくなった、母親学級が中止になったなどを耳にするようになりました。通常時でも多くの不安や負担を抱える産前産後期に、ますます困っているママたちの力になりたいと考え、助産師の仲間たちと連携して、広島県の助産院ポータルサイト「広島ママのみかた」を創設しました。

「広島ママのみかた」のメンバーの助産師たち。下段左から2番目が西本さん

「助産師」の仕事や存在を知らない方も多いのではないですか?

そうなのです。まず助産師について知っていただくことも、「広島ママのみかた」の目的の一つです。

これまで全く関わる機会がなかった方は、昔の「産婆さん」のイメージが強いようで、「若い方もいらっしゃるんですね」と驚かれることがあります(笑)。病院で出産経験がある方でも産婦人科の看護師さんという捉え方だったり、助産院(助産所)は出産施設で助産師は分娩にしか関わらないと考えられていたり。

実際には分娩以外にも産前産後のケアの拠点として、地域の母子やその家族を様々な形でサポートする役割を担っています。また自宅出産、母乳マッサージ、骨盤ケアなど、助産師によってそれぞれ得意分野も異なります。

早くは性教育や妊活から、長くは更年期まで、〝ネウボラ〟(ネウボラとは妊娠・出産・育児・就学までを一貫してサポートするフィンランドの制度です。近年日本の自治体も導入する動きが広まっています。広島県でも「ひろしま版ネウボラ」の構築に向けて各市町村が様々な取り組みを行っています。)のように切れ目なく、女性の心身のケアに寄り添うことのできる専門家が助産師。女性一人ひとりに〝かかりつけ医〟と同様に〝かかりつけ助産師〟がいるような、身近で頼れる存在になっていきたいと考えています。

「広島ママのみかた」を立ち上げた背景は?

3世代で暮らし、近隣との付き合いが密接だった時代に比べ、核家族化が進んだ現代では、自身の妊娠・出産まで妊婦さんや子どもに関わった経験のないママも少なくありません。また困った時にすぐに聞いたり、手助けを頼めたりできる人が身近にいないママも多くなっています。

一方でネットやSNSの発達により、情報過多に陥って混乱するケースや、偏った情報に翻弄されることもあります。
助産師の役割は、専門知識を持ってそんなママたちに寄り添い、心身の負担を軽くすること。

ただでさえ身体が変化し、生活が一変し、初めてのことばかりで不安な産前産後期。さらにコロナ禍で移動や集まりが制限されたことによって孤独を深めているママたちに、「ここに〝みかた〟がいるよ」と伝えたくて、私たちにできることを考えました。

助産師のネットワークを活かし、情報の集約と発信を一体化して行うことで、より広く、より多くの困っている女性に〝ママのみかた〟を知ってもらうことを目指しています。

「広島ママのみかた」HPのトップページに書かれたメッセージが、多くのママに届くことを願って。

具体的にはどのように活用できますか?

Q&Aのページからは、助産師の具体的な仕事や、悩み別に利用できるサポートを紹介しています。

またメンバーの助産師の一覧や、県内の助産院のマップのページを設けていますので、自分に合った助産師や家の近くの助産院を探すことができます。

気軽に利用してみていただきたいのは、「無料オンライン相談」です。自宅から都合の良い時間に、気になっていることを助産師に相談することができます。その内容に応じて、利用できる制度やサービスを紹介したり、より専門知識やスキルのあるメンバー助産師につないだり、必要であれば日時を調整して訪問によるケアや相談に応じます。

コロナ禍で誰にも会えずに孤独感を深めているママは、誰かと話をするだけで気持ちが楽になることもあります。また身近な人には打ち明けにくいことも、第三者には話しやすいと感じていただけるかもしれません。ぜひ気軽にお声かけください。

一人で悩んでいるママにぜひ利用してもらいたいオンライン相談。「広島ママのみかた」HPから申し込みできます

ママはもちろん、それ以外の方にも知っていただきたいことは?

産前、産後の時期に家事や育児の支援が必要な方に、必要な援助を提供する「産前・産後サポート事業」・「産後ケア事業」というサポートシステムがあり、現在全国展開に向けて急速に広まっています。

例えば広島市では、助産師がご自宅を訪問して授乳や沐浴などの指導を行ったり、訪問介護事業所のヘルパーが家事や赤ちゃんのお世話をサポートしたり、病院や助産院のショートステイやデイケアを利用して産後のママの心身のケアを行うことができます。また新型コロナウィルスの影響を受けて、広島県全域の助成金の割合が上がり、より利用しやすくなっています。

こうした情報も知らなければ、利用することができません。もし周囲に、悩んでいるかも、孤立しているかも、というママがいたら、私たちのことを思い出して、「広島ママのみかた」のことを教えてあげていただきたいのです。そのためにも、もっと広く知られて、もっと役立てていただけるポータルサイトに育てていきたいと考えています。

西本さんからのメッセージ

近年は女性の社会進出に伴い、責任ある仕事をバリバリこなしてきた女性が、妊娠・出産・子育てで急に思い通りにいかないことに直面し、必要以上に自分を追い詰めてしまうことがあります。一人でがんばり過ぎるママに伝えたいのは、何でも一人で解決することがいいとは限らないということです。どんどん周りに頼って、お母さんも楽をして、もっと子育てを楽しんでほしいのです。私たちをはじめ、たくさんの人が〝みかた〟になりますよ。

西本 紗織(にしもと さおり)

小学生の時、生まれた妹に病院で対面。新生児室のガラスの向こうで、たくさんの可愛い赤ちゃんたちのそばで働く助産師さんが「羨ましい」と感じて助産師を志す。総合病院産婦人科や産婦人科医院で助産師として働きながら、三人の子どもの自宅出産も経験。第三子の出産後、「子育てを楽しく楽に」を応援したいと考え、「楽助産院」を開業。
2020年、広島県の助産院ポータルサイト「広島ママのみかた」開設。 広島ママのみかた

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