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竹内 吉和さん|インタビュー|ファミリードクター

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一人ひとりの悩みを解決し社会の前進に取り組む発達障害の支援者|竹内 吉和さん

一人ひとりの悩みを解決し社会の前進に取り組む発達障害の支援者

「こんにちは」と休日の時間を割いて笑顔で迎えてくださった竹内先生は、カジュアルな服装で眼鏡もかけておらず、HPなどで事前に拝見していたよりずっと親しみやすい雰囲気。発達障害支援のスペシャリストとして、幅広いサポートを手掛ける竹内先生に、発達障害との関わりや活動内容について聞きました。

プロフィールを拝見したら、いろいろな分野の学問に触れていらして驚いたのですが、発達障害と関わるきっかけは何でしたか?

大学では現代数理科学を勉強していて「統計学」などを専門にしていました。卒業後に公立中学の数学教師になったのですが、当時はいわゆる〝荒れている〟時代で、生徒たちの非行問題に関わり家庭裁判所などにも同行することも。「人権問題」について学んでおきたいと思い、大学の夜間コースで法学の勉強をしました。

また問題行動を起こす子どもたちに向き合っているうちに、彼らが認知能力だったり、コミュニケーション力だったり、何らかの〝発達的な課題〟を抱えているという共通項が見えてきて、その根本に迫らない限り解決しないと実感しました。そこで通信で「養護学校課程」を修了し、養護学校への転勤を希望したのですが、教科主任などいろいろ兼任していたので、なかなか希望が通らなくて…。

その後、転機がありましたか?

そうこうしている間に、教育委員会に転勤になったのです。ちょうど文部科学省が「特別支援教育」に力を入れ始めたタイミングでもあり、「広島市立広島特別支援学校」の立ち上げにがっつり関わりました。ようやく認知されつつあった〝発達障害〟への教育的観点からのアプローチという課題に取り組むことができるようになったのです。けれども公務員の立場でできる活動には限界があったので、広島特別支援学校開校後に統括的な立場として赴任して2年間見届けた後に退職し、「竹内発達障害支援Co.」を開設しました。またカウンセラーとしても活動できるよう大学院で「臨床心理学」も学びました。

現在はどのような活動をされていますか?

これを見てもらうとわかりやすいと思います。

経験を活かした教育現場へのサポートを中心としています。教育委員会の専門アドバイザーとして、小・中・高校など教育機関の先生方への指導や助言、大学では教員課程の必修になった「特別支援教育」の講師、幼児教育アドバイザーとして幼稚園や保育園を訪問したり、スクールカウンセラーとして学校に赴くこともあります。

講演会などで用いるスケッチブックをさっと開いて説明

幼稚園を訪問した時の様子。図画や作文などの作品を見ただけでそれぞれの傾向を把握し、問題を抱えていそうな子どもをチェック。その早さと的確さに、初めて体験する先生方は驚くそう

各家庭への対応より、教育現場に重心を置いているのはなぜですか?

もちろん、そうした活動の合間をぬって、個別の発達相談にも対応しています。けれどもその子の傾向によっては、家庭では特に困っていなくて問題と感じられないこともあります。保育園・幼稚園や学校という社会の中に入って、集団教育に触れてはじめて学力、協調、コミュニケーションなどの難しさが現れることが多いのです。そうした最初の現れの時期に、教育に関わる人がそれぞれに合わせた教育的な支援ができるように、理解を広める啓蒙や指導サポートに力を入れています。医療や心理学からの視点とは異なり、教育の現場を知っている僕だからこそできる、ある意味僕しかできない取り組みだと感じています。

「発達障害」という言葉はよく知られるようになってきたものの、実はまだよくわからないという人も多いと思います

一口に発達障害と言っても、大まかに4つの傾向に分かれており、それらの重なり方や程度の大小は人によって大きく違います。欧米ではかなり以前から一般的に認知されてきたものですが、日本ではまだまだ認識が広がっていませんね。

まず知っておいてほしいのは、発達障害は親のしつけや教育の問題ではなく、脳機能の障害によるもので、程度の差こそあれ誰しも持っている一種の個性のようなものだということです。実際に、スポーツ選手や芸能人、芸術家などにはこれらの傾向が強い人がよく見られます。彼らが能力を発揮した背景には、その特性を理解してその能力を伸ばした指導者の存在があることが多く、そのような出会いがその後の人生に大きく影響します。傾向が顕著に現れ始める子ども時代に、できるだけ早く、それぞれの向き不向きや力を発揮しやすい環境や声掛けなどを把握して導くことで、成長後も社会で自分の力を発揮することができます。そしてそれは、いじめ、不登校、引きこもり、家庭内暴力など幅広い問題の解決に繋がっていきます。

竹内先生からのメッセージ

発達障害は「治す、治さない」ではなく、それを個性として認識し受け入れた上で適切な対応が「できるか、できないか」です。それを社会全体で行うことができるようになれば、少子化や犯罪などの社会問題の解決に繋がり、社会の発展を大きく前進させることにも役立ちます。そのためには、保育園や幼稚園、学校、家庭、企業、そして社会全体が協力関係を結び連携していくことが必要になります。その実現に向けて、教育と発達障害の専門家の立場から啓蒙活動を続けることが、僕が社会のためにできる使命の一つだと考えています。

家庭でも、学校でも、悩んでいる本人でも、保護者でも、教育者でも、話を聞いてほしい、乗り越えたいと感じている人の窓口になって支えていきますので、僕の学んできたこととや経験してきたことを役立ててください。

竹内 吉和(たけうち よしかず)

昭和34年広島県生まれ。
広島大学総合科学部卒業後、広島市立中学校、養護学校を経て広島市教育委員会主任指導主事、特別支援教育専門家チーム委員を歴任し、特別支援教育士スーパーバイザーとして発達障害の子どもを支援。2014年に「竹内発達支援コーポレーション」を設立。講演、各種相談、就労支援、学校・施設・企業へのコンサルテーションおよび、子どもの発達(運動・ことば・社会性)などに関する保護者からの相談を受け付け。

経 歴
広島大学総合科学部、法学部卒業
佛教大学文学部教育学科養護学校課程修了
広島修道大学大学院修士課程 法学研究科 国際政治学専攻修了
広島市立大学大学院 後期博士課程 国際学研究科 教育経営学専攻 博士後期課程満期退学
安田女子大学大学院 文学研究科 教育学専攻臨床心理学コース修了(予定)
著 書
『発達障害と向き合う』(幻冬舎ルネッサンス新書)
『障害のある子のための算数・数学(数量・測定)』(東洋館出版/共著)
『発達障害を乗りこえる』(幻冬舎ルネッサンス新書)
『実践 発達障害を乗りこえる 自分らしさを見つけて乗りこえるワークノート』(幻冬舎ルネッサンス)
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