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【酔い止め】乗り物酔いに効く市販薬は?選び方を解説

2024/04/01

乗り物酔いを防ぐのに便利なのが酔い止めです。市販にもさまざまな酔い止めがあるため、用途に合ったものを見つけることができるでしょう。しかし、種類が多くどれを選んだらよいのか迷っている方も多いかと思います。

一見するとどれも同じように見える酔い止めですが、実はそれぞれに特徴があるため、用途に合わせて選ぶことが大切です。今回は、用途に合わせた酔い止めの選び方や使用時の注意点などについて詳しく解説します。

市販の酔い止めの選び方

酔い止めを使うシーンは人それぞれです。「観光を楽しみたいから眠気が少ないものがいい」という方もいれば、「寝てやりすごしたい」と考えている方もいるでしょう。酔い止めは配合されている成分によって眠気の出やすさや効果が異なります。

眠気が少ないものが良い方は抗コリン薬

抗コリン薬とは、アセチルコリンの働きを抑える効果がある薬のことです。副交感神経の働きを抑え、自律神経の乱れを調整することで乗り物酔いを予防します。まったく眠気が出ないわけではありませんが、抗ヒスタミン薬と比べると眠気が緩和されていることが特徴です。

そのため、「しっかり観光を楽しみたい」「眠気が出ると困る」という方には、抗コリン薬が主成分の酔い止めが向いています。抗コリン薬の代表的な成分は、スコポラミンです。

眠気をうまく利用したい方は抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン薬が配合された酔い止めは、眠気が出やすい傾向にあります。「乗り物に乗ると酔ってしまうから寝て過ごしたい」という方は、抗ヒスタミン薬が配合された酔い止めを選ぶとよいでしょう。代表的な成分には、次のものがあります。

  • ジフェンヒドラミン
  • ジフェニドール
  • クロルフェニラミン
  • メクリジン

吐き気が強い方はアミノ安息香酸エチル

乗り物酔いで吐き気が強く出やすい方もいるでしょう。そのような方は、アミノ安息香酸エチルが配合された酔い止めを選んでみてください。アミノ安息香酸エチルには、胃粘膜の神経伝達を麻痺させて吐き気の症状を緩和する働きがあります。

予防効果が高いものが良い方はスコポラミン

眠気が出にくい成分としても紹介したスコポラミンですが、実は乗り物酔いの予防効果が高いことも知られています。抗ヒスタミン薬と比べると、予防効果が高いと言われているのです。

乗り物酔いや船酔いに効く酔い止めの市販薬

ドラッグストアや薬局に行くと、多くの酔い止めが並んでいます。ここでは数ある酔い止めのなかから特に使いやすいものを5つ抜粋しました。

アネロン「ニスキャップ」

アネロン「ニスキャップ」は、乗り物酔いの予防に効果的な成分が複数含まれている酔い止めです。抗ヒスタミン薬のマレイン酸フェニラミン、抗コリン薬のスコポラミン臭化水素塩水和物、吐き気止め効果のあるアミノ安息香酸エチルなどが配合されています。1日1回の服用で効果が持続するため、飲み直しの必要がありません。

有効成分 マレイン酸フェニラミン
スコポラミン臭化水素酸塩水和物
ピリドキシン塩酸塩
無水カフェイン
アミノ安息香酸エチル
効能効果 乗物酔いによる吐き気・めまい・頭痛の予防および緩和
剤形 カプセル
用法用量 1日1回、1カプセルを乗り物に乗る30分前に服用してください
服用できる年齢 15歳以上

トラベルミン

抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミンサリチル酸塩と、中枢神経を興奮させる効果のあるジプロフィリンが配合された酔い止めです。ジプロフィリンには抗ヒスタミン薬の効果を高め、さらに眠気の副作用を緩和する働きがあります。そのため、トラベルミンは抗ヒスタミン薬が配合されているものの眠気が少々出にくいことが特徴です。

有効成分 ジフェンヒドラミンサリチル酸塩
ジプロフィリン
効能効果 乗物酔いによるめまい・吐き気・頭痛の予防及び緩和
剤形 錠剤
用法用量 乗り物に乗る30分前に、1回1錠を服用してください。1日3回まで服用できます。
服用できる年齢 15歳以上
公式サイト:トラベルミン

センパア トラベル1

センパア トラベル1は、子ども(7歳以上)からでも使える1日1回タイプの酔い止めです。抗ヒスタミン薬のクロルフェニラミンマレイン酸塩と、抗コリン薬のスコポラミン臭化水素塩水和物が配合されています。口の中で溶ける錠剤なので、水なしですぐに服用が可能です。

有効成分 クロルフェニラミンマレイン酸塩
スコポラミン臭化水素塩水和物
効能効果 乗り物酔いによるめまい・吐き気・頭痛の予防及び緩和
剤形 錠剤
用法用量 乗り物に乗る30分前に次の量を服用してください。
・15歳以上:1回1錠、1日1回
・7~14歳:1回1/2錠、1日1回
服用できる年齢 7歳以上
公式サイト:センパア トラベル1

トラベルミン チュロップ

ドロップタイプの酔い止めです。5歳以上の子どもから服用できます。服用するのに水が不要なため、急いでいるときでも簡単に服用できるでしょう。ぶどう味とレモン味があります。

有効成分 d-クロルフェニラミンマレイン酸塩
スコポラミン臭化水素酸塩水和物
効能効果 乗物酔いによるめまい・吐き気・頭痛の予防及び緩和
剤形 ドロップ
用法用量 乗り物に乗る30分前に次の量を服用してください。
・15歳以上:1回2錠、1日2回まで
・11~14歳:1回2錠、1日2回まで
・5~10歳:1回1錠、1日2回まで
服用できる年齢 5歳以上

センパア プチベリー

ラムネのように噛んで服用できるタイプの酔い止めです。直径6mmと錠剤の大きさが小さいので、子どもでも抵抗なく服用できるでしょう。1日に2回服用する場合は、4時間以上の間隔を空けて使用してください。

有効成分 クロルフェニラミンマレイン酸塩
スコポラミン臭化水素酸塩水和物
効能効果 乗物酔いによるめまい・吐き気・頭痛の予防及び緩和
剤形 チュアブル錠
用法用量 乗り物に乗る30分前に次の量を服用してください。
・11歳以上:1回2錠、1日2回まで
・3~10歳:1回1錠、1日2回まで
服用できる年齢 3歳以上

市販の酔い止めを使うときの注意点

酔い止めはどこのドラッグストアでも取り扱っているほどメジャーな市販薬です。しかし、いくつか注意点もあるので確認しておきましょう。

前立腺肥大症や緑内障がある方は服用できない

酔い止めに含まれている抗ヒスタミン薬や抗コリン薬は、前立腺肥大症や緑内障の症状を悪化させる恐れがあります。そのため、このような持病がある方は服用できません。

ただし、開放隅角緑内障の方は酔い止めを服用できる場合があります。服用しても問題ないかどうかは担当医に相談してみてください。

眠気が出やすい酔い止めが多い

ほとんどの酔い止めは、副作用で眠気が出てしまいます。代表的な成分であるスコポラミンやクロルフェニラミン、ジフェンヒドラミンはどれも服用後の乗り物の運転は禁止されている成分です。眠気が出にくいように工夫されている酔い止めもありますが、乗り物の運転はしないようにしましょう。

風邪薬や鼻炎薬などとの併用に注意

抗ヒスタミン薬は、風邪薬や鼻炎薬などにも含まれています。これらを併用すると成分を重複して服用してしまうことになり、副作用が起こりやすくなるので注意してください。

すべての風邪薬や鼻炎薬が併用できないわけではないため、同時に服用する予定がある方は購入時に薬剤師や登録販売者に相談してください。

乗り物酔いを予防する方法

乗り物酔いを予防するコツもあります。乗り物に乗る前に、次のことを心がけましょう。

空腹の状態で乗り物に乗らない

空腹で乗り物に乗ると、自律神経が乱れて酔いやすくなります。満腹にならない程度に軽く食事をしてから乗りましょう。

出かける前日はしっかり睡眠を取る

睡眠不足も自律神経を乱れさせる原因です。出かける前日はしっかりと睡眠を取るようにしてください。

締めつけ感が強い服装は避ける

ウエストがきつい衣類、ベルト、ネクタイなどを着用していると酔いやすくなります。乗り物にのるときはゆとりのある服装を心がけてください。

市販の酔い止めに関するQ&A

酔い止めに関して知っておきたい項目をQ&A形式で紹介します。

酔い止めはいつ飲めばいいですか?

乗り物に乗る30分前には服用しましょう。「酔ってからでも効く」と謳われている酔い止めもありますが、酔う前に服用しておくのがもっとも効果的です。

乗り物酔いは克服できますか?

乗り物酔いは3歳頃から始まり、中学校や高校生頃でピークになります。成人になると酔いやすい方は減る傾向にあるため、次第に酔いにくくなると言えるでしょう。また、乗り物に乗っても酔わなかったという成功体験を積み重ねることで、乗り物酔いを少しずつ克服できるケースもあります。

抗コリン薬と抗ヒスタミン薬で効果に違いはありますか?

抗コリン薬は、酔い止めの効果が高く眠気が出にくい成分です。酔い止めの効果は抗ヒスタミン薬よりも高いと言われています。抗ヒスタミン薬は、古くから使われており、子どもでも服用できる成分です。乗り物酔いの症状が出た後でも効果が発揮されると言われています。

眠気が出やすいのがデメリットですが、寝ていると乗り物酔いしにくいと言われているので、うまく活用するとよいでしょう。

乗り物酔いがひどいときは耳鼻咽喉科を受診しよう

乗り物酔いは多くの方が一度は経験するものです。しかし、乗り物に乗るたびに嘔吐するほど酔ったり、20歳以上になっても酔いやすい状態が続いたりしている場合はほかの病気が隠れている可能性が否定できません。乗り物酔いで少しでも悩みがある方は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。

まとめ

乗り物酔いが心配なときは、市販の酔い止めをうまく使ってみてください。眠気が少ないものが良い方は抗コリン薬、眠気を利用して寝てやりすごしたい方は抗ヒスタミン薬、吐き気を抑えたい方はアミノ安息香酸エチルが配合された酔い止めを使うとよいでしょう。

乗り物酔いの症状がひどかったり、20歳以上になってもひどい症状で悩んだりしている方は耳鼻咽喉科で診てもらうと安心です。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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