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5人に1人が繊細な子ども(HSC)?育て方のポイントは

2023/12/07

幼児~小学生くらいのお子さんのママ・パパで「うちの子、初めての場所に行くと、そばを離れなくて」「風の音や雷をものすごく怖がる」「優しくていい子だけど、他の子となんだか違う…」と感じている人はいませんか?

もしかして、お子さんは、人口5人に1人の割合といわれる「HSC(Highly Sensitive Child)」かもしれません。

今回は、HSCの特徴や、繊細で敏感なHSCのお子さんのすこやかな成長のためにママ・パパがしてあげられることを紹介します。

HSCとは?特徴やおすすめの接し方

HSC(Highly Sensitive Child/ハイリー・センシティブ・チャイルド)は、日本語に訳すと「特に敏感な子」「人一倍繊細な子」といった意味です。

大人はChildがPerson(パーソン)に変わり「HSP」と呼ばれます。

HSC・HSPはアメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士が1990年代に提唱した言葉で、病気や障がい等の呼称ではなく、次のような気質や性格を表しています。

  • まぶしい光・うるさい音・肌触りの悪さなど外部の刺激に影響されやすい
  • 物事を深く考えるため、一度にたくさんのことを抱えると処理しきれない
  • 暴力的なものや怒声に精神的なダメージを受けやすい
  • 初めての場所や人に緊張してしまう
  • 他人の気持ちや痛みをわが事のように感じてしまう
  • 真面目でルールを守る気持ちが強く、他人の不正が許せない
  • 音楽や芸術などに対する感受性が豊か

児童館やイベントに同じように連れていっても、すぐに走り出して遊び出す子やマイペースに遊ぶ子がいる一方で、なかなか溶け込めない子もいます。あるいは、飛び込んではみるものの刺激が強すぎたり周りに気を使いすぎたりして、ぐったり疲れてしまう子も。

HSCは生まれつき周囲のささいな変化によく反応するため、ママが疲れている時に真っ先に気付いて優しく気遣ってくれる、音楽や絵を深く理解する、ペットの気持ちが分かるなど、さまざまな長所を持っています。

その反面、ケンカや罵声を見聞きすると自分のことでなくても気分が落ち込んだり、一度に多くのことに気を配るような局面で処理しきれず固まってしまったりする面も持ち合わせています。

携帯電話の電波アンテナに例えると、普通の子が5本のところHSCの子は10本も20本も立っているようなイメージで、良くも悪くも周囲の影響を受けすぎてしまうのです。

HSCの子どもにおすすめの接し方

周りの出来事や人々の感情に敏感に反応する特性を持ったHSCの子に対しては、以下のような適切な接し方をすることで、マイナス面を最小限に抑え、優しく感受性の高い長所を伸ばしてあげることができます。

叱る場面では?

どんな子でも時にはいけないことや悪ふざけをしますが、その場で大声で叱るのは避けましょう。

「なぜいけないのか」「どうすればいいのか」を落ち着いて説明するだけで、HSCの子はかなり小さくても十分理解できるはずです。

音を怖がっている時は?

大人やHSCでない子たちからするとなんでもないような、風の音や打ち上げ花火、人々の話し声などが気になる子もいます。

感覚が敏感な子にとっては本当にとても大きく響いているので、「気にしすぎ」「神経質」などと否定せず、まずは「気になるんだね」と受け入れてあげて下さい。

新しい環境に入っていけない時は?

児童館や親戚の集まり、クラス替えなど、慣れない環境に置かれた時にいつまでもなじめないわが子を見ていると、親としてはもどかしくなるかもしれません。

しかし、深く物事を考えるタイプの子に対して、判断や行動を急がせるのは大きなストレスになります。「〇〇ちゃんは元気に遊んでいるのに……」と思っても、比べたり急かしたりせず待ってあげたいですね。

学校や人間関係が心配…HSCって治るの?

HSCの傾向は「ちょっとした物音で目を覚ます」「ほ乳びんの乳首の種類が違うと飲まない」など、赤ちゃん時代から見られるといわれます。

保育園や幼稚園でも、優しく感受性のゆたかな面が発揮できる場面もあれば、「怖がり」「よく泣く」「気が弱い」と見られてしまうこともあります。

後者の場合、ママやパパとしては

「他の子が叱られているだけでシュンとしちゃう。小学校で大丈夫?」
「早く治さないと、集団生活の中でやっていけないのでは」

と心配になるかもしれません。

HSCは病気ではなく生まれつきの気質のため「治る」ということはありませんが、適切な接し方をしてあげることで、その子のよい面を引き出して楽しく毎日を過ごすことは十分可能です。

入学時に提出する「健康調査票」にはたいてい「学校や先生に知っておいてほしいこと」を記入する欄がありますので、そこに以下のように書いておくのもおすすめです。

  • 〇〇が苦手です(大きな音、怒鳴り声、まぶしい光、特定の食材など)
  • 新しい環境に慣れるまで時間がかかります
  • 考えているときに急かすとパニックになることがあります

そして「慣れれば元気に過ごせるようになりますので、できる限り寛大に見守っていただけると助かります」などと書き添えておくと良いですね。

おわりに

実はHSCは人間だけではなく、動物や昆虫など自然界のあらゆる生物に敏感なタイプが一定数いて、危険や異変をすばやく察知する能力で種を守るのだそう。

物事への反応がまわりの多数派と違っていると親としては心配になるかもしれませんが、周りと比べたり否定したりせず、HSCのお子さんが持つ長所や魅力に目を向けてのびのびと過ごさせてあげたいですね。

コラムニスト

認定子育てアドバイザー/育児教育ライター  高谷みえこ 

私が結婚・出産を経験したのは今から20年前の2000年。当時は今のようにインターネットやSNSが発達しておらず、育児書以外での情報源は雑誌くらいという限られたものでした。

娘たちが小さい頃はいわゆる「ワンオペ育児(核家族で平日は母親が1人で家事や育児を担うこと)」で、娘たちには喘息やアレルギーなどの持病もあり、当時は本当に毎日大変でした。

親にとって、妊娠~出産から赤ちゃんのお世話や成長発達・幼児の「イヤイヤ期」やトイレトレーニング・園や学校でのトラブル・ママ友付き合いまで、育児の悩みや苦労はその時々で大変大きなものだと思います。

しかし、せっかく工夫してその時期を乗り越えても、子どもの成長ステージにつれ受験や教育費など次々と新しい課題が現れ、過去の悩みは記憶の隅に追いやられがち。次の世代に伝えていく機会はなかなか得られません。

まさに今、かつての自分のように悩んでいるママ・パパがいたなら、自分の経験と知識から少しでも役に立ちたい…という思いから、お役立ち情報や先輩たちの体験談をもとにした解決のヒントなどを、WEBメディアでライターとして発信するようになりました。

より的確で悩みに寄り添ったアドバイスができるよう、NPO法人日本子育てアドバイザー協会の「認定子育てアドバイザー」資格も取得。発達心理学や医学・行政支援などに関する幅広い知識を身につけています。

現在は、育児教育ライターとして子育て情報やコラムを年間100本以上連載中。

かつての自分のように子育てで悩むママやパパへ、正しい知識に基づき心がふわっと軽くなるようなあたたかみのある記事をお届けしていきたいと思います。

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