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まずはともあれ次のグラフをご覧ください。
これは、1961年から1971年までの日本の出生率のグラフです。
正確には、合計特殊出生率を表したグラフです。15歳から49歳までの年齢別出生率を合計したものを合計特殊出生率(合計出生率)といいます。1人の女性が一生の間に何人の子を産むかを表します。
1966年は、「丙午(ひのえうま)」の年でした。
「丙午」の年には、日本人は子どもを産まなかったのです。
なぜなのでしょう。
解説しましょう。
干支(えと)は皆さん知っていますね。年末に次の年の置物を買いに行きますね。
ねずみ年とかうし年とか、いのしし年とかいうあれです。
干支というのは、厳密にいうと60種類もあるのです。12種類ではなかったのです。「丙午」は、60年に1度巡ってくる干支(えと)のひとつです。
干支とは、十干(じっかん)と十二支(じゅうにし)を組み合わせたもので、全部で60種類あります。十干が「丙(ひのえ)」、十二支が「午(うま)」にあたる年を「丙午(ひのえうま)」といいます。
十干とは「甲(きのえ)、乙(きのと)、丙(ひのえ)、丁(ひのと)、戊(つちのえ)、己(つちのと)、庚(かのえ)、辛(かのと)、壬(みずのえ)、癸(みずのと)」の10種類をいいます。
十二支とは「子(ね)、丑(うし)、寅(とら)、卯(う)、辰(たつ)、巳(み)、午(うま)、未(ひつじ)、申(さる)、酉(とり)、戌(いぬ)、亥(い)」の12種類をいいます。
次の「丙午」は2026年です。前回の丙午は1966年、前々回の丙午は1906年でした。
60年に一度やってくるわけです。
2026年、すなわち令和8年が丙午(ひのえうま)です。あと4年でやってきます。
そこで、今考えてほしいのです。
「丙午」の迷信には、「丙午の女性は気性が激しく夫の命を縮める」や、「丙午の女は男を食い殺してしまう」などがあります。さらに、江戸初期の八百屋お七の放火事件以降、丙午の年に生まれた女は、夫を食うとか殺すという迷信が生まれ、社会に浸透してしまいました。そのために現在に至るまで統計的にも丙午の年には出産数が少なく、1966年に出生率が低下しました。もちろん、その60年前の1906年にも出正率は低下しています。
もともと干支が生まれた中国では、丙午や丁巳(ひのとみ)の年には、天災が多いという迷信がありました。それが日本に伝わり、「丙午の年には火災が多い」と変わり、江戸時代には「丙午の女性は気性が激しく夫の命を縮める」と言われはじめたようです。
中国から伝わった迷信が、なぜ日本で変化したのでしょうか。原因はいくつか考えられます。
一つは「陰陽五行思想」があります。
陰陽五行思想では、十干、十二支は「木・火・土・金・水」に分けられます。丙(ひのえ)と午(うま)はどちらも火の要素を持ち合わせていることから、火災が多くなると結び付けられたと考えられます。
もう一つが前述した「八百屋のお七の放火事件」なのです。
1683年に江戸で「八百屋のお七の放火事件」が起きました。お七は江戸の大火から避難した際に出会った男性と恋仲になり、再会を果たすため放火事件を起こし火刑となりました。彼女の生まれ年が丙午前後だったそうです。これが、歌舞伎や浄瑠璃で大ヒット作となります。そして、日本中に拡散してしまったのです。
その後にも、この「八百屋のお七の放火事件」がテーマとなった歌舞伎や浄瑠璃が江戸の舞台で何度も何度も上演され、大ヒットが続いて迷信としてさらに広まったと考えられます。
1906年(明治39年)の「丙午」のこと。
1906年(明治39年)前後の出生数を見ると、1906年は男児の出生割合が不自然に多くなり、逆に前年と翌年は少なくなっています。丙午生まれの女性に対する偏見を避けるため、女児の出生日を前年または翌年にずらして提出したためと考えられています。これを「生まれ年の祭り替え」と言いました。出生日の設定が今と違いかなり自由度が高かったのですね。
さらに、60年後の1966年(昭和41年)の「丙午」のこと。
1966年(昭和41年)前後の出生率を見ると、1966年は出生率が不自然に減っています。翌年には何事もなかったかのように元に戻っています。この頃には出生届は生まれて2週間後までに提出することになっていましたので、妊娠出産を避けた夫婦が多くいたと考えられています。
このように、昭和になっても影響が出ているのです。
厚生労働省が2022年6月3日に発表した2021年の人口動態統計によると、1人の女性が生涯に産む子どもの数に相当する合計特殊出生率は1.30だったということです。6年連続の低下となってしまいました。下落幅は縮まらず、新型コロナウイルスの感染長期化が影響した可能性があると厚生労働省は分析しています。出生数は81万1604人で前年より2万9231人減少し、過去最少を更新しました。
グラフでは、2030年以降出生率2.07を維持という夢のようなシナリオが描かれていますが、夢で終わらないことを期待します。
1.30という2021年の出生率は、とんでもなく低い数字です。危機的な状況なのです。1966年当時に迷信を信じて出産を控えた年でさえ、1.58あった出生率を大きく下回っています。このままいけば、若者がいない高齢者が多い国になるかもしれません。すなわち、日本は老人だらけの超スーパー高齢社会になってしまうかもしれないのです。
長生きをする人が多いことは悪いことではありません。しかし、若者がこの国で子どもを産まない、そして産んで育てたいと思わないというような国になっているとしたら、それは変えなければいけません。
超スーパー高齢社会になってしまう日本については、またの機会にお話しします。
またあなたの周りにいる人たちに出産について何を伝えますか?
次の「丙午」は2026年です。
丙午の女性に関する迷信は、ほんの300年前に日本で出来た根拠のない迷信で、現在では気にする人はほとんどいないと思います。しかし、もし現代でも同世代の人数が減るようなことがあっていいのでしょうか?
私は少し心配しています。取り越し苦労ならいいのですが。
それは、次のようなことを思うからです。
現代にあっても、一部の都道府県への偏見をモチーフにした映画がヒットしたり、一部の宗教法人によって法外な霊感商法が行われたりしています。科学的根拠のないことをもとにして「個人の尊厳」がないがしろにされている現状は多々見受けられます。
次の「丙午」は2026年。
あなたが、出産について相談を受けた時、きっぱりと「迷信」を打ち消すことができるでしょうか?
どんな世の中にしていきたいかは、私たちの今の考え方と生き方にかかっていると言っても過言ではないように思います。
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