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乳がん検診の必要性と注意点

2021/12/02

乳がん検診の必要性と注意点について知りましょう!

皆さんこんにちは!
乳がんは女性の最もかかりやすいがんです。

2020年度 女性部位別予測がん罹患者数(新たにがんと診断された人数)

一方で医療の進歩により早期乳がんは根治(完全に治る)できる可能性が高くなっています。早期乳がんを発見するためには定期的な検診がだいじです。

乳がんの病期別10年相対生存率(女) 2008年 診断症例

国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター
がん診療連携拠点病院等院内がん登録 2008年10年生存率集計報告書,2021,改変

「乳がん検診」の必要性について

乳がん検診ではマンモグラフィ検査が行われます。40歳以上の女性(40~74歳)がマンモグラフィ検診を行うことで死亡率が25%程度、明らかに減少することがこれまでの複数の臨床試験の結果で証明されています。日本では40歳以上の女性に対して、無症状であっても2年に1度のマンモグラフィ検診が推奨されています。マンモグラフィは乳がんを早期発見し、乳がんによる死亡率を減少させることができますが、一方で注意点もあります。次にマンモグラフィの注意点について説明します。

「高濃度乳房」を知っていますか?

マンモグラフィを行った際、乳房内の乳腺の割合により『見え方』が違います。乳房は、主に乳腺組織と脂肪組織により構成されています。脂肪が多い人はマンモグラフィ検査で乳房全体が黒く写るので、白い塊として写る乳がんのしこりを見つけやすいです。一方、乳腺組織は白く写ります。乳腺組織が多い人のマンモグラフィでは乳房全体が白く写るため、白く写るしこりを見つけにくくなります。このように乳腺組織が多い場合を、「乳腺濃度が高い」と表現します。 乳腺濃度が高い順に「極めて高濃度」「不均一高濃度」「乳腺散在」「脂肪性」の4つのタイプに分かれます。

脂肪がほとんどなく乳腺組織が多い「極めて高濃度」と、乳腺組織の中に脂肪組織が混在している「不均一高濃度」を合わせて「高濃度乳房」と分類します。「高濃度乳房」はマンモグラフィ検査で乳房が白く写り、乳がんが見つけにくくなります。日本人を含むアジアの人は「高濃度乳房」が多いとされています。「高濃度乳房」は特に20歳~閉経前の方には多くみられます。自分の乳房がどのタイプかはマンモグラフィを見ることで分かります。乳房の大きさや硬さでは判断できません。検診などの機会に確認しておきましょう。また「高濃度乳房」だからといって、将来必ず乳がんになることではありません。過度に心配をしないよう、医師と相談することが重要です。

エコー検査の併用で発見率向上

日本ではJ-STARTという臨床試験が行われています。この試験では高濃度乳房の方が多いとされる40歳代の女性に対して検診で、
マンモグラフィ+乳腺超音波検査(エコー検査)をする方 VS. マンモグラフィのみ検査をする方を比較します。→2年後に同様に検査をします。

2016年に1回目の結果が出ています。結果としては、

  • がん発見率はマンモグラフィ+エコー検査がマンモグラフィのみより1.5倍高い
  • 感度(乳がんの方の中で、検査により要精密検査になった方)はマンモグラフィ+エコー検査のほうが高かった
     →つまりエコー検査併用は乳がんをより見逃さない
  • 特異度(乳がんのない方で、検査で異常なしの方)はマンモグラフィ(エコーなし)が高かった
     →つまりエコー検査併用は乳がんでないのに要精密検査になる方が多い

マンモグラフィにエコー検査を併用することで乳がんの発見できる可能性が高くなりますが、一方で乳がんではない方の精密検査が増える結果でした。

つぎにJ-START では2021年8月に追加の結果が出ています。
『乳房濃度別の感度はどうなのか?』をみています。

高濃度乳房の方

マンモグラフィ+エコー検査 93.2%
マンモグラフィのみ 70.6%

非高濃度乳房の方

マンモグラフィ+エコー検査 93.1%
マンモグラフィのみ 60.9%

高濃度乳房の方(全体の59.3%)ばかりでなく非高濃度乳房の方もマンモグラフィ+エコーの方が良好な結果でした。
若い年齢、40歳代の方は高濃度乳房の方ばかりでなく、非高濃度乳房の方もエコー検査の追加は有力であることが示されたのです。
若い方はエコー検査も受けることを考えてはいかがでしょうか。
自身の乳房に関心を持って、乳がんを早期発見しましょう。

新型コロナワクチン接種する際の乳癌検診の注意点

コロナワクチンを接種すると、接種した側のわきの下のリンパ節の腫れが最長10週間、持続することがあります。このワクチン接種による反応性のリンパ節腫大は、良好な免疫反応を獲得している兆候ですので心配ありません。一方で乳がんは脇のリンパ節に転移することがあるため、乳がんの検査をする際に脇のリンパ節も確認します。そのためワクチン接種による脇のリンパ節の腫れを乳がんの転移と間違えてしまうことがあります。ですので日本乳癌検診学会ではマンモグラフィやエコーによる乳がん検診は「ワクチン接種前にするか、2 回目のワクチン接種後少なくとも 6~10 週間の間隔をおいてから行うこと」が推奨されています。

コロナ禍で検診を見送っている人もいると思います。乳がんの種類にもよりますが、乳房の中の1個のがん細胞から1cmの大きさになるのに8年ぐらいかかるとされています。しかし、2cmになるのはわずか1年、その後の成長スピードはさらに速くなります。早期乳がんで発見された場合は完全に治る可能性が高いです。早期発見のためにも定期的な乳がん検診を行いましょう。

コラムニスト|ますもと乳腺クリニック 院長:舛本 法生

ますもと乳腺クリニック

診療内容

乳腺科・乳腺外科・乳がん検診・マンモグラフィ・エコー検査・超音波検査・骨塩定量検査・細胞診検査・組織生検検査・駅近

所在地・アクセス

〒739-0011 東広島市西条本町12-2 木阪クリニックビル3階 Tel:082-424-2633
  • JR西条駅から徒歩2分

院長  舛本 法生 

皆様、はじめまして。ますもと乳腺クリニックの院長「舛本法生(ますもとのりお)」です。

私は乳腺専門医として手術や薬物治療などの専門治療を行う基幹病院で診療してきました。2011年からは広島大学病院で乳腺診療に携わらせて頂きました。多くの患者さんの精密検査や治療に携わる中で、乳房に不安のある方が気軽に相談し、しっかりとした精密検査のできる場所を提供できればと考えるようになりました。

乳がんを患う日本人女性は年々増加しており、女性のがんの中で最も多くなっています。今や、9人に1人の女性が乳がんになる時代です。一方で早期に発見すれば治る可能性が高いがんでもあります。当クリニックでは、心配をお持ちの方に気軽に受診頂き、早期発見・早期治療につながるお手伝いをしたいと考えています。「なんだか調子がおかしい」「気になる症状がある」など、不安を感じた時に気軽に受診頂ければと思います。

手術など専門的な治療の必要な患者さんは、できるだけ早く基幹病院にご紹介し、最善の治療を受けて頂ければと思います。また手術などの治療が一段落ついた方が、継続的な検査と治療を提供できる、そしていつでも相談できる乳腺のかかりつけ医になりたいとも考えております。

患者さんのご要望やご意見をお聞きし、常に乳腺疾患の最新の知見を患者さんに提供できる乳腺クリニックを目指しています。
どうぞよろしくお願いいたします。

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