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誰ひとり取り残さない社会実現のために Vol.3

2021/09/15

「誰ひとり取り残さない社会実現のために」というテーマでこれまで、「生活困窮者支援制度」の概要や医食住などで困った状況に対応した時に支援してもらえる制度や仕組みについて触れてきました。

「生活困窮者支援制度」の内容について述べた様に、この制度の目的は、何らかの要因によって生活が困難に陥った方に対して、仕事に就くまでの支援、或いは自立できるようになるための期間が区切られた支援制度になります。

生活困窮者自立支援制度の内容 参考:広島市ホームページより

参考

そこで、今回は「生活困窮者支援制度」の柱の一つ、就労支援の中身についてご紹介したいと思います。図にあるように、本制度の就労支援は、就労準備支援と就労訓練の2ステップになっています。

まず、就労準備支援は、これまであまり仕事に就いた経験がない方や、仕事から離れて長時間空いてしまい、直ぐに就職する事に不安を感じておられる方のために、仕事に就くための準備、所謂、トレーニングを行う所です。

また、この就労準備には1年という期限が定められています。1年間の中で、自分がどんな仕事に向いているのか?自分が思う仕事に就くためには、どんな知識や技術が必要なのか?等を支援者と共に考え、希望に沿う様に進めて行きます。また、仕事に就く為の体調管理やお金の管理等についても必要に応じてアドバイスを受ける事もあります。

次に、就労訓練ですが、これは、非雇用型と雇用型があります。但し、相談機関によっては、明確に区別されていない所もあると思います。

何れも、一般雇用に向けて、実際に職場に行き、仕事を行います。但し、急に正規雇用の時間帯や業務内容は負担になる事もありますので、就労訓練の中では、非雇用型の形式をとって、週に2日からとか、1日3時間から等、時間帯や日数等は自分に合った所から仕事をして行くというものです。また、支援者がご本人に伴走する形でサポートしますので、仕事の慣れ具合に応じて、徐々に日数や時間を増やして一般雇用に向けてアドバイスを受けながら進める事が出来ます。

徐々に安定した働き方が出来るようになれば、雇用契約等も結び、一般就労で他の従業員と同じように仕事をするようになります。

一般就労になると何が違うかというと、他の従業員と同様の契約を結ぶ事になる事や、指導者の伴走支援が無くなります。

生活困窮者自立支援制度の就労支援

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参考

さて、ここで、もう一度おさらいですが、これまで、説明してきた就労準備支援や就労訓練は生活困窮者の就労支援であり、中間的就労と呼ばれています。これは、障害者手帳を持った方が仕事に就く為の練習をする、「障害福祉就労」とハローワークや求人情報で応募し採用される「一般就労」の間に位置するものになります。では、障がいを持たれた方の就労支援にはどんなものがあるのか?についても、少し説明しておきたいと思います。

障害者総合支援法における就労支援系障害福祉サービス

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障がい者といっても、知的障がい、身体障がい、精神障がいとあります。いずれの障がいであっても、障害者手帳をお持ちの場合、表にお示ししているように、障害者総合支援法に定められている就労支援を受ける事が出来ます。

こちらも就労支援のタイプにより、支援内容や利用できる期間が異なりますし、賃金体系も変わってきます。また、障害によって、エレベーターやハンディキャップ用のトイレの有無、スタッフの専門性など、ご自分にあった利用しやすい事業所を選ぶためにも、地域の精神保健福祉センターや相談支援専門員に相談する以外に、見学や体験利用などを通じて決められるといいと思います。

また、精神障害者手帳をお持ちの方、心療内科や精神科への通院をされている方では、医療保険を使って、就労に向けてのトレーニングを受けることも出来ます。特に、医療機関(病院やクリニック)に併設されているデイケアで、就労に向けたプログラムを行っている所もありますので、そういった場所を利用するという選択肢もあるかと思います。この場合は、かかりつけの医師に相談されるといいと思います。

ここまで、生活困窮者自立支援制度による就労支援と障害福祉サービス(障害者総合支援法)による就労支援についてご説明しましたが、いずれも制度や法律の下で行われている就労支援です。ちょっと名前が堅苦しいですし、「ちょっとハードルが高いなー」と思われる方もおられるのではないでしょうか?そこで、これ以外の一般就労の準備ツールとして、ボランティア活動に参加するという事をお勧めしたいと思います。

ボランティア活動

ボランティアと聞くと、スーパーボランティア尾畠さんを思い浮かべる方も多いかもしれませんね!私の記憶が正しければ、尾畠さんは、災害時に支援に向かわれたり、子どもさんが行方不明になった時に捜索の一員としてボランティアをされていたと思います。

また、最近では子ども食堂やフードバンクといった活動にボランティアとして参加される方も多くおられる様で、災害から子ども支援まで、ボランティアにも様々な種類があります。

ボランティアの種類

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体力を使うものもありますし、コミュニケーションスキルが必要なものもあります。災害時など、緊急を要する時にはいきなり支援活動に参加する事もありますが、ボランティアを行う前に、そのボランティアの説明会や研修を開催されているものもあります。ボランティアの良い所は、1日だけ(場合によっては半日程度)の短時間の参加でも可能ですし、何よりも人の役に立つ経験を得られる事、そして同じボランティアに参加される者同士、仲間を作る事ができます。

就労支援を受ける事とは、目的は違いますが、ボランティアでの社会貢献は、職場体験で職場の一員として役に立つ事と同様な体験がえられるのではないかと思います。

ボランティアは、様々な形で募集がかかっておりますが、何かボランティアがしたいけど、探し方が分からないという方は、まずは広島市や広島県のボランティア窓口を利用されることをお勧め致します。

今回は、様々な就労支援についてお話させて頂きました。仕事への思いは、その時の状況や体調などにより、個人で異なります。また、自分の思いと周りの人との思いが食い違う事もよくあります。そんな時に、就労支援の制度や相談窓口を使って、第三者からのアドバイスを聞いてみる事が役に立つと思います。

コラムニスト

理事長  下原 千夏 

広島生まれ、広島育ち、生粋の広島っ子。
公認心理師・精神保健福祉士
家族は夫一人、息子一人、ミニチュアシュナウザー1匹。中学校から大学までの約10年間、テニス部に所属。1994年頃から実父が理事長を務めていた医療法人で、心理士の仕事に携わり、2000年から生活訓練施設(現障害者グループホーム)の施設長。2006年に同医療法人副理事長、2014年に理事長に就任。2018年からは特定非営利活動法人FOOT&WORKの理事長を務める。コメディカルとしての現場経験を活かし、FOOT&WORKでは障がい者スポーツのイベント開催や、「地域でこんなのがあったらいいなー」という思いを存分に込めて、障害を問わず、性別を問わず、年齢を問わず、人種を問わず、皆が理解し、支え合う事が出来る共生社会を目指した活動を実行中。

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