食べもの情報の根拠をご存知ですか? 第1回目『油』について


広島の頼れる病院・クリニック、ドクターを探すならファミリードクター
病院・クリニック 3,963件掲載中! (2021年10月27日現在)


総合TOP > 医療・健康コラム > 食べもの情報の根拠をご存知ですか? 第1回目『油』について

2021/07/28

食べもの情報の根拠をご存知ですか? この季節になると、お中元でいただく機会も多い『油』について書いてみたいと思います。

毎年、『コレステロール0』と大きく謳ってある油を見るたびに、「油って、ほとんどコレステロール0なのになんで?」と思って見ています。他にも『ビタミンEたっぷり』なども植物油にはビタミンEが含まれているものを、なんだかわざわざ表記されることで、特別感があるように感じられます。

こんな風に色々な情報が知らず知らずのうちに目に入ってきたり、繰り返しコマーシャルで流されることでいつの間にか『体に良いんだ』と思いこんだりすることが多くはないでしょうか?

私たち栄養士からしたら、「油はどれもコレステロールがほとんど0なのになんで?」と思いますが、コレステロール値が高くて気にしておられる人はどちらかを選ぼうとする時、『コレステロール0』と書かれたものを選ぶでしょう。

そもそも、私が子供のころには油はそんなに種類はなくて、菜種や大豆から搾った天ぷら油だけだったような気がします。一升瓶に入ったのや、四角い缶に入ったのがあったように記憶しています。揚げ物などで記憶に残っているのは頻度は少ないですが、野菜のてんぷらや、鯨の竜田揚げ、小魚の南蛮漬けなどが好きなものでした。

油の生食は、マヨネーズ作りぐらいでした。その内にサラダ油というのが出てきて一升瓶に入ったのや、ペットボトル状のものができて、物価は今よりずっと低い時代にサラダ油の値段が今よりも高かったように覚えています。

現在はどうでしょうか?大きなスーパーに行くとびっくりするくらいたくさんの種類の油があります。

栄養指導の現場では、時折「油を飲んでいます」という人がいらっしゃいます。亜麻仁油や荏胡麻油をそのままスプーンで飲んだり、野菜ジュースに混ぜて飲む人もおられるようです。効果効能をきちんと話せる人は少ないですが、「何だか生活習慣病を防ぐ効果があるらしい」ということです。

油は人が生きていく上では必要なものです。しかし炭水化物やたんぱく質が1gあたり4kcalの熱量があるのに対して、油は1gあたり9kcalと非常に高いため、日々の食事の中で食べ過ぎないように注意する必要があります。食品としての油の、基本的なことを知ったうえで使い方を考えてみましょう。

油の主成分と分類

油の主成分は脂肪酸で、脂肪酸とグリセリンという分子からできています。炭素が鎖のように結合した構造をしています。その鎖の長さや炭素間の二重結合の数と位置によって、たくさんの種類があります。

以下の図はトリアシルグリセロール(TG)と呼ばれ、中性脂肪として体内に蓄えられているものです。

大きくは炭素間の二重結合がない飽和脂肪酸と、炭素間の二重結合がある不飽和脂肪酸とに分けられます。

飽和脂肪酸は体内で作ることが出来ます。

常温で固まりやすい油で、バターやラード、牛脂などと言った動物性脂肪に多く含まれています。摂りすぎると血液中のコレステロールや中性脂肪を上昇させ、動脈硬化を進めることになります。不飽和脂肪酸は常温で固まらない油です。不飽和脂肪酸の内、リノール酸、αリノレン酸、アラキドン酸は体内で合成されないので、食物から摂らなければなりません。リノール酸などは細胞の老化予防や、血中コレステロールの低下作用があり、魚油であるDHAやEPAは免疫機能の正常化や動脈硬化予防に有効です。

しかし、多価不飽和脂肪酸は不飽和度が高く、不安定な構造のため酸化されやすく、人体に有害な過酸化物質を生じやすいので、酸化や摂りすぎに十分に注意する必要があります。熱や光、空気に弱いので加熱調理には向きません。近年話題のオリーブオイルや亜麻仁油、荏胡麻油などもこの中に入ります。高い油を購入しても、大事にしすぎて酸化させてしまっては逆効果です。却って害になります。

分類 主な脂肪酸 多く含む食品 はたらき
飽和脂肪酸 ラウリン酸・ミリスチン酸・パルミチン酸・ステアリン酸 肉類の脂肪(ラードなど)バター、生クリーム、ヤシ油 食品中のコレステロールや中性脂肪を上げ、摂りすぎると動脈硬化を進める。




一価不飽和脂肪酸 オレイン酸 オリーブ油、菜種油、綿実油 HDLコレステロールを下げずに総コレステロールを下げる







n-6系脂肪酸 リノール酸 紅花油、ひまわり油、コーン油、綿実油、大豆油、ごま油、くるみなど コレステロールの胆汁への排出を促進
血液中のコレステロールを低下させる
γ-リノレン酸 母乳、月見草油 血液中のコレステロールを低下させる
アラキドン酸 貝類、レバー、卵白など 免疫機能や血圧を調節する
過剰にとると動脈硬化、アレルギー性湿疹などを発症させる
n-3系脂肪酸 α-リノレン酸 あまに油、えごま油など 一部は体内で、DHA、EPAに変換される。アレルギー疾患を予防。血中中性脂肪の低下、血栓生成予防に有効。
DHA(ドコサヘキサエン酸) マグロ脂身、ブリ、サバ・サンマ、ウナギなど 免疫機能の正常化、脳神経機能の維持に有効、動脈硬化症、血栓症、虚血性心疾患、脳卒中を予防
EPA(エイコサペンタエン酸) マグロ脂身、ブリ、サバ・イワシ、サンマ、ウナギなど 血栓や動脈硬化予防。血中中性脂肪の低下作用。アレルギー疾患の予防。

脂質の摂取量

さて不飽和脂肪酸が体に良さそうというのが分かりましたが、どれくらい摂取するのが良いのでしょうか?

脂質全体の摂取量はたんぱく質や炭水化物の摂取量を考慮に入れて、設定する必要があります。
(以下は全て厚生労働省がすすめる2020年食事摂取基準に基づいた数値です。)

脂質のうち、飽和脂肪酸の過剰摂取は循環器疾患などの原因となるので、成人の場合7%(エネルギー比)以下が目標値になっています。

それに対応する量として、脂質全体ではエネルギー比で男性、女性とも20~30%の目標値が設定されています。魚に多く含まれる不飽和脂肪酸のn‐6系・n‐3系脂肪酸は体内で合成できない必須脂肪酸なので、欠乏しないための指標が定められています。これらは動脈硬化に対して抑制的にはたらくという報告がありますが、具体的な量を定めるほどの根拠はまだ不十分なようです。

また、最近はコマーシャルを見かけなくなったマーガリンですが、これは不飽和脂肪酸である植物油に水素添加をして固形化しています。

洋菓子などにたくさん含まれるショートニングも同じようなもので、マーガリンも同様にトランス脂肪酸と呼ばれ飽和脂肪酸に形を変えています。米国では30年以上前に規制されましたが、日本でも最近話題になりましたが使用量が少ないということであまり問題視されていません。

油脂に関しては構造式が簡単なので、とても分かりやすいようでいて、しかし?はてな・・・・という感じです。私自身は何度も専門家の先生の講義を受けましたが、まだまだ分かっていません。

そこで、結論をまとめてみようと思います。

『油』についてのまとめ

脂肪酸は体に良いもの、摂りすぎると良くないもの、いろいろありますが1gで9kcalの熱量を得ることが出来ます。食の進まない人は上手にエネルギー補給に使いましょう。

しかし、動物性の常温で固形化するような油は、あまり食べ過ぎない方が良いです。

青菜などのビタミンAは脂溶性なので、油炒めして煮ることで吸収が良くなります。しかし食べ過ぎても良くないので、全エネルギーに占める割合は20~30%と目安量が決められています。これは普通のサイズの体格の女子で、大さじ2杯程度です。いろいろなところに油が使われているのでうっかりすると摂りすぎます。

油は製造方法も色々違いがありますので、安すぎる油は絞られた後の残った油に溶剤を加えて再度抽出されたようなものもあります。また安いからといって、大きなサイズを買わないで、小さめな容量のものを買って、酸化が進まないうちに使いきってしまいましょう。

また、揚げ物をいつまでも残しておいて再加熱するのも酸化したものを食べることになります。総菜など購入する食品も買い過ぎないようにしましょう。
普段使っている油も、一度油本体の注意書きなどを読んで、生食用、加熱用と保存方法などを再確認してみるのも良いのではないでしょうか?

 コラムニスト紹介

管理栄養士  伊藤 教子 


長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。

【経歴・資格・所属学会】
※経歴
広島大学大学院保健学研究科修士課程修了
介護施設、病院勤務を経て、現在内科糖尿病専門医院にて栄養食事指導に従事。

※資格
管理栄養士 / 日本糖尿病療養指導士
高血圧循環器予防療養指導士 / 栄養相談専門指導士

※所属学会
日本病態栄養学会 / 日本糖尿病学会
日本高血圧学会 / 臨床栄養協会

 ランダム記事

column/btn_column_page
トップ