高齢期の栄養について


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2021/01/19

高齢期の栄養について、今何が必要なのか?昔と同じではなぜいけないのか考えてみたいと思います。

人間の生理機能は成熟期を過ぎると老化していきます。昔はそれが当たり前で、それに抗うことはできないと受け入れていました。しかし、人々の生活が豊かになり医療や栄養学、衛生状態などいろいろなものの進歩によって老化のスピードを緩やかにすることができるようになりました。

日本糖尿病学会では新しいガイドラインで、「高齢者では一律にBMI22を目指すのではなく、22~25の範囲を目標体重とする」と言ったガイドラインを作成しました。これは高齢者ではサルコぺニア予防の為、無理に標準体重を目指して体重を減らさない」という事です。このことは特に糖尿病患者でなくとも、後期高齢者では重要になります。そのため、65歳までは肥満・メタボの予防中心の考え方を主とし、その後の65歳から74歳の間に上手にギアチェンジをする必要があります。そのためには、50代から高齢者と呼ばれ始める65歳までの間に、食生活を適切な状態に戻しておかなければいけません。そして後期高齢期に向けて、エネルギー量とタンパク質量が必要量を下回らないようにすることが重要です。

前回でフレイルやサルコぺニアについて書きましたが、筋肉量は30歳代以降になると、毎年1~2%程度ずつ減少するそうです。サルコぺニアは高齢者において筋肉量や筋力が低下した状態を指し、転倒や要介護、死亡のリスクが高まります。サルコぺニアの原因には、加齢そのものによる原発性のものに加え、認知症や糖尿病、骨粗鬆症や心不全などのさまざまな疾患や低栄養による二次性のものがあります。

そこで、今回は少しでもサルコぺニアのリスクを減らすことが出来るように肥満やメタボの予防・改善から要介護状態にならないための低栄養予防にギアチェンジする方法を考えてみたいと思います。

75歳を超えてからはいかに食事量を減らさず、バランスよく摂るかという事が大事ですが、65歳~74歳の前期高齢者では個人差が大きく、肥満やメタボ予防に重点を置くことが多いかもしれません。しかし今まで、生活習慣病の数値を改善するためにエネルギー量を減らしたり、糖尿病や脂質異常症の治療で野菜を増やすことを考えてメニューを組み立てていた方は、筋肉量を減らさないために今一度適正なエネルギー量を知り、たんぱく質が必要量摂取できているかを考えてみる必要があります。筋肉は食後に合成されます。しかし高齢者では若い人と比べて筋肉の合成効率が悪いので、現在の筋肉量を維持するためには今まで以上に多くのたんぱく質を摂る必要があります。

具体的には高齢者はたんぱく質の摂取量が1日に体重1kg当り1gより少ないと筋肉量が低下すると言われています。通常の高齢者では体重1kg当り1~1.2g、低栄養や褥瘡等のリスクのある人は1.5gが推奨されています。

ざっくり計算してみると、150cmの身長の女性で中肉、50kgの人なら1.2g/体重1kg当たりとしても60gは最低必要です。
60gのたんぱく質を3食で摂るためには1食あたり20gのたんぱく質が必要となります。

1日あたりの食事例

朝食

食パン6枚切り1枚 バター 203kcal たんぱく質5.6g
ハムエッグ(卵1個とハム2枚) 170kcal たんぱく質11.6g
野菜とマヨネーズ 牛乳200ml 40kcal たんぱく質0.2g / 134kcal たんぱく質6.6g
計 547kcal たんぱく質24g

※乳製品の摂取のない方は、エネルギー量・たんぱく質量とも少なくなってしまいますので豆乳なども試してみてください。(無調整豆乳200ml 95kcal /たんぱく質 7.2g)

昼食

米飯 140g 230kcal たんぱく質3.4g
焼き魚(鯖1切れ70g) 大根おろし 183kcal たんぱく質14.4g
豆腐の味噌汁(とうふ30g) 40kcal たんぱく質3.3g
計 453kcal たんぱく質21.1g

夕食

米飯 140g 230kcal たんぱく質3.4g
肉野菜炒め(豚もも肉50g) 188kcal たんぱく質11.7g
豆腐の味噌汁(とうふ30g) 40kcal たんぱく質3.3g
計 458kcal たんぱく質18.4g
1日の合計 エネルギー量1450kcal たんぱく質63.5g

これを見てもわかるように、毎食必ずたんぱく質を主に含む食品をしっかり食べなければいけません。また、たんぱく質を筋肉の合成に使おうとするなら、エネルギー量を減らすことはできません。また、栄養素の代謝に係わるビタミンやミネラルをしっかり摂ることも必要です。
生理機能も低下して、あまり食欲もなくなってくる後期高齢者では、毎日この量の食事をするとなると、毎朝規則正しく起きて朝食を食べなければいけません。また、家事や散歩などで体を動かしてある程度の時間を空け、昼食を食べます。時にはちょっとした菓子類も食べたいと思うでしょう。それでも夕食の時間には一日の三分の一量の食事を摂らなければなりません。なかなか難しいと思います。

私が実際に関わっている高齢者の方で、食事量が少なくなっていると思う方は、食事回数が朝昼兼用の昼食と夕食の2食になっていたり、食事の形態が維持できなくなっています。「お腹が減らないから」という答えを多く聞きます。
足腰が弱ってきて、体調もすぐれず、特に何か予定もなければ食事を適当に済ませてしまうこともあるでしょう。それこそ「お腹が空かないので」まんじゅうを食べて済ませたりということになります。まんじゅうは糖質が主となる食品ですが、エネルギー量を産生するので何も食べないよりは良いでしょう。しかしまんじゅうを食べたことで、一時的に血糖値が上がって次に食べるべき食事が入らないようでは困ったことになります。

電気屋さんに聞いた話ですが、高齢者の方では寝室にテレビを設置する人が多いとか。
―朝ゆっくり起きて、ベッドの中からテレビをつけてぐずぐずし、朝昼兼用の食事をし、食欲のわかないまま遅い夕食を摂り、なんとなくテレビを見て、「眠れなくて」と眠前薬を処方してもらうと言う状態でしょうか。
これは特に街中の高層階のマンション等に居住している独居の高齢者の方に多いのかもしれません。
私が親しくさせていただいている90歳に手が届きそうな独居のご婦人は、いつ伺ってもきちんと部屋が整理されていて、たまたま食事中に伺った時はランチョンマットの上に主食・主菜・副菜・フルーツの皿が美しく並んでいました。そうありたいものだと、帰宅してわが身を振り返り反省しました。

私が常にいろんなところで話している『あなたの食べた物であなたが出来ているんですよ』と言う言葉は、まさにこれらのことが当てはまります。毎食後食べた物が代謝されて、それらで筋肉や骨、血液等が作られます。しかし合成されたら、その後分解されますので毎食しっかり摂らなければ追いつきません。
私の母が生前「私はもう育たないから、食べなくても大丈夫」とろくにおかずらしきものも食べず、私の言うことにも耳を貸しませんでした。
少しでも老化を遅らせるためには、何としても低栄養に陥らないようにすることです。

そのためには、
規則正しく生活をする(食事を3回摂らなければ、必要量を満たすことが出来ません)
適正量を知って、バランスよく食事をする
筋肉量を維持し、筋力を低下させないためには定期的なウォーキングなどの有酸素運動に加えて、レジスタンス運動も有効です。(椅子に座ったままでも、立ったり、座ったり脚を動かすことはできます)

しかし、だれもが高タンパク質食を摂った方が良いわけではなく、進行した腎臓病や非代償期の肝硬変などはむしろ低たんぱく食を勧めている場合がありますので、主治医や管理栄養士と相談してください。

寒い時期には血管が収縮して血圧が高くなることがあります。
次回は減塩食でどれくらい血圧を下げることができるのか? 考えてみたいと思います。

 コラムニスト紹介

管理栄養士  伊藤 教子 


長年、管理栄養士として病院の給食管理・栄養管理に従事後、現在、内科糖尿病専門医院にて糖尿病を中心とする生活習慣病、高齢者の低栄養等の栄養食事指導をしています。
ライフワークとして「あなたの体は、あなたの食べたものでできている」ということを意識した「食」の啓発活動を行なっています。

【経歴・資格・所属学会】
※経歴
広島大学大学院保健学研究科修士課程修了
特別養護老人ホーム勤務を経て厚生堂長崎病院にて20年間給食管理・栄養管理に従事。
現在内科糖尿病専門医院にて栄養指導に従事。

※資格
管理栄養士 / 日本糖尿病療養指導士
高血圧循環器予防療養指導士 / 栄養相談専門指導士

※所属学会
日本病態栄養学会 / 日本糖尿病学会
日本高血圧学会 / 臨床栄養協会

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