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少し複雑なお話になるのですが、前回コラム(Vol.3:アトピー性皮膚炎の治療について)で登場した飲み薬(ネオーラル®︎)、注射薬(デュピクセント®︎)がなぜ効くのか?ということを解説します。
皆さんもご存知のように皮膚炎は見た目が赤く、ガサガサしてかゆく、その名の通り“皮膚に炎症を起こしている”状態です。では、その炎症は皮膚の下ではどのような反応が起こっているのでしょうか?
アトピー性皮膚炎の皮膚の下には、リンパ球がたくさん集まっていることが知られています。リンパ球とは、炎症を起こす役割をもった細胞で、その中でもT細胞というリンパ球が主な役割を果たしています。特にTh2(ティーエイチツー)というアレルギーに関係するタイプのT細胞が皮膚に集まり、皮膚炎を起こしています。
ではどうして、Th2細胞が皮膚の下に集まるのでしょうか?まず、皮膚炎が悪化すると皮膚でTARCという物質がたくさん産生されます。次に、このTARCにはTh2細胞を皮膚に呼び寄せる作用があるため、皮膚炎では皮膚の下にTh2細胞が集まり、かゆみやアレルギー症状を誘発し、最終的には慢性的な皮膚炎につながります。前回のコラム(vol.3:アトピー性皮膚炎の治療について)で紹介したTARCを測定しながらアトピー性皮膚炎の治療をするということは、つまり皮膚の下まで病態を把握して治療していることにもなるわけです。
また、Th2細胞はIL-4という物質(サイトカイン)を産生し、IL-4がさらにアトピー性皮膚炎を悪化させます。これをブロックするのがデュピクセント®︎という注射薬になります。
また、飲み薬(ネオーラル®︎)はTh2細胞の活性化を抑制して、効果を発揮します。皮膚の下での免疫反応はすごく複雑ですが、簡単に病気のメカニズムを説明するとTARC、Th2細胞を中心とした炎症があるということになります。飲み薬や注射はココをブロックして、治療効果が出るという訳です。
当たり前のことですが、人間の体は皮膚によって守られています。日常生活で、皮膚には様々なものが付着します、ひょっとすると体に有害な細菌もあるかもしれません。皮膚は、これら外からの細菌が不必要に体の中に入るのを防ぐ一方で、過剰なアレルギー反応が出ないようにも上手く調整してくれています。これらの免疫調整は、普段自分で意識しなくてもうまく皮膚にいる細胞たちが行ってくれています。
そのために皮膚の中には免疫アレルギーを司る細胞がびっしりと配置されています。その細胞の名前は“ランゲルハンス細胞”というもので、皮膚表面にある異物や細菌などを見極めて、皮膚のバリア機能・免疫アレルギーを保っています。
左の図は実際に、私がドイツ留学中に人間の皮膚のランゲルハンス細胞を染色した写真です。緑に光っているのが1個1個のランゲルハンス細胞です(文献1)。右下のスケールは100μm(マイクロメートル)で、0.1mmのサイズに相当するのですが、わずかこれだけの範囲にも星空のような数の皮膚を守るランゲルハンス細胞が存在しています。この写真を初めて顕微鏡を通して自分の目で見たときに、やはり人間の体はうまくできているな、と感心したのを今でも覚えています。
アトピー性皮膚炎は、アレルギーに傾いた過剰な免疫反応による皮膚の病気とも捉えることができます。皮膚の表面に付着する汗や細菌(次に詳しく説明します)なども、この反応を悪化させることもあるため、スキンケアはとても大切になってきます。
アトピー性皮膚炎の皮膚、特に皮膚炎がある部分には黄色ブドウ球菌(S.aureus)という細菌がたくさん付着していることが以前より知られています。問題となるのは、皮膚を引っかくことで、黄色ブドウ球菌が増殖し、とびひ(伝染性膿痂疹)になりやすくなることです。実際、統計的なデータをみても、アトピー性皮膚炎の患者さんはとびひ(伝染性膿痂疹)に罹りやすいことがわかっています。
さらに最近では、皮膚の表面に付いている細菌(細菌叢といいます)が黄色ブドウ球菌に偏ることで、皮膚炎が悪化することも分かってきました(文献2)。そのため、アトピー性皮膚炎では皮膚炎の沈静化と、普段から適切なスキンケアを行い、細菌叢を整え合併症を防ぐことも重要となってきます。(腸内細菌を整え、お腹の調子を良くするのに似ています)
余談になりますが、アトピー性皮膚炎という病気は大昔にはほとんどなく、生活が近代化し衛生状態がよくなるに連れて、発症するようになってきたとも言われています。確かに、様々な疫学調査で乳幼児期に様々な感染症にかかったり、非衛生的な環境がアレルギー疾患の発症を減らすとも報告されています。ある意味、ある程度汚いほうが、アレルギーになりにくいのかも知れません。これは衛生仮説と呼ばれ、現在も、この点を糸口として免疫の研究が続けられています。
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