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肺線維症 | 症状から調べる | ファミリードクター

肺線維症

肺線維症とは、間質性肺炎が進行し蜂巣肺になる病気です。「間質性肺炎」は、肺胞の周りにある間質が様々な原因で炎症を起こして線維化し、酸素が血液中に取り込まれにくくなってしまう病気です。間質性肺炎は進行がゆっくりで発症に気付きにくいことから発見が遅れ、肺線維症に移行することも少なくありません。線維化が進むと肺に多数の穴が開きます。このような状態を「蜂巣肺」と言います。

肺線維症は原因が不明で厚生労働省により国の難病指定になっています。一度肺線維症を発症すると、完治することはほぼありません。

肺線維症の日本での患者数は、およそ1万以上とされています。女性よりも男性の方が発症率が高く、加齢と共に患者数が多い傾向にあります。

肺線維症の原因

肺線維症は未だはっきりとした原因はわかっていません。しかし肺が何らかの原因により線維化することで発症すると言われています。

健康な肺は多少傷がついても自然に回復できます。しかし、肺が長期にわたって何度も傷つくと、傷を治すためのコラーゲン線維が必要以上に排出され、間質に蓄積します。その結果肺が線維化して固くなり、肺線維症になります。

肺が線維化するのは、線維性物質を増やすための増殖因子や受容体等のタンパク質の異常が関係していて、増殖因子は主にコラーゲンを作る指令をし、この指令が肺の線維化に関係していると考えられています。

また、喫煙や環境、生活習慣も発症に関係すると言われています。

肺線維症の症状

肺線維症の初期症状は、痰のない咳(空咳)、息切れです。さらに症状が進行すると、着替えや入浴等の少しの動作でも息切れをするようになる他、ばち指が見られることもあります。「ばち指」とはその名の通り、指先が太鼓を叩く「ばち」のような形になることで、爪も丸くなります。

さらに合併症を引き起こすこともあります。発症率の高い合併症は肺がん、気胸、呼吸不全、感染症、肺高血圧、胃食道逆流です。進行スピードや症状は人により異なりますが、早期に発見し進行を遅らせることが大切です。

肺線維症の治療と予防

肺線維症の治療

一度肺が線維化すると完治は難しい病気です。そのため進行を抑える、または遅らせることを目的とした治療を行います。主な治療法は薬物療法、リハビリテーション、在宅酸素療法です。

薬物療法では、病気の進行を抑え、呼吸機能を保つことを目的に行います。抗線維化薬、ステロイドや免疫抑制剤などの薬物療法を受ける際は医師の指示通りに行うことが大切です。特に肺を元の状態に戻すことはほぼ不可能なため、長期間にわたり薬を服用することになります。

自己判断で薬の服用をやめてしまうと、病状が急に悪化する危険があります。肺線維症で死亡した人のうち40%の方は、急性増悪といって病状の急な悪化により死亡していて、これは他の原因を含め最も高い割合で、死に至るとされています。万が一急性増悪になった場合には、ステロイドや免疫抑制剤等の薬物で進行を抑えます。尚、薬物療法は副作用が発生することがありますので、事前に服用する薬の知識や副作用について理解しておきましょう。

症状が進行し肺で十分に酸素が取り込めなくなった場合、入院治療と在宅酸素療法の二択に分かれます。在宅酸素療法を選択した場合には、自宅に設置した機器や、携帯用の容器から酸素を吸入しながら生活します。

リハビリテーションでは、呼吸困難の軽減や心身の機能の改善を目的とした呼吸リハビリテーションを行います。具体的には複式呼吸などの正しい呼吸法の活用や、平地を歩いたり、エアロバイクを漕いだりする運動療法です。

薬物療法で十分な効果が得られず、特定の条件を満たした場合には、肺移植を行うことがあります。しかし日本ではドナーの数が非常に少なく、肺移植を受けられる確率は低いです。

肺線維症は肺がんや気胸、呼吸不全等、様々な合併症のリスクもあり、定期的に検査をしながら慎重に治療を進めます。万が一合併症を併発した場合には、肺線維症と併発した病気の治療を並行して行います。

肺線維症の予防

肺線維症を予防するには、日常生活の見直しが大切です。

栄養バランスの良い食事や適度な運動、十分な休養を心がけ、規則正しい生活を送りましょう。うがいや手洗い、ワクチンの接種等で感染症や風邪を予防するのも大切です。また、喫煙は肺に大きなダメージを与える他、心臓病等様々な病気の原因になります。肺線維症と心臓病を合併すると、薬物療法で使用できる薬が大きく制限され、十分な治療を受けられなくなる恐れもあるため、喫煙は止めて下さい。

また、重症化しないための予防も大切です。定期的に検診を受けたり、いつもより息切れがしたり、空咳をする等肺線維症の症状に似た異変を感じた場合は、早めに病院を受診しましょう。肺線維症を発病して薬物療法が開始された場合は、医師の指導のもと継続することで重症化の予防に繋がります。症状がおさまったから等、自己判断で途中で服用を止めないようにして下さい。

この記事の監修

はるた呼吸器クリニック 院長春田 吉則

このたび2018年12月、広島平和公園近隣である堺町におきまして新規開院させていただきました、はるた呼吸器クリニック院長の春田吉則と申します。
大学病院勤務時代には、喘息・アレルギー専門外来にて15年余り診療経験を積み、また主たる基礎・臨床研究におきましても喘息研究に専念してまいりました。また医薬連携活動として「アズマネット広島」の事務局として企画、運営させていただいており、広島市薬剤師会および広島大学病院薬剤部の薬剤師の方々と連携し、ぜんそく患者さんのための活動を10年余り携わってきました。
今後もここ広島におきましてアレルギー・呼吸器領域の専門クリニックとして、これまでの経験と連携を活かし、微力ながら地域の方々の健康のため貢献できるよう切磋琢磨して参りたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致します。

【経歴・資格・所属学会】

※略歴
広島大学医学部卒業
中国労災病院・広島大学病院・広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀等で勤務

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