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食物アレルギー | 症状から調べる | ファミリードクター

食物アレルギー

アレルギーは体の免疫システムが過剰に働いてしまう疾患です。中でも食物アレルギーはアレルゲンを食べられないだけではなく、重症度によっては命にも関わる症状を引き起こします。

昔は食物アレルギーをもつ人は少数でしたが、この15年余りで患者数は急増しました。現在では日本人の約1~2%が食物アレルギーを持っていると言われ、乳児では約5〜10%と報告されています。

食物アレルギーは症状によって命に関わる問題です。また、食物アレルギーを発症する割合が高いのは小児です。そのため、保護者は普段から食べていいものと食べてはいけないものを管理し、周囲の人に共有しておく必要があります。

さらに、災害がおきた場合は、食物アレルギーがある人の多くが食糧に困ります。命を守るために、食べられるものを最低1週間分は備えておくことも大切です。

食物アレルギーの原因

特定の食物を食べる、または触れることで身体の免疫システムが過剰にはたらいてしまう疾患です。

たとえば、牛乳アレルギーの人が牛乳を飲んだ場合、身体が牛乳の成分を異物だと判断して血中の抗体が反応します。本来反応しなくてもいい牛乳のタンパク質に対してこの抗体を介してアレルギーにかかわる細胞が過剰反応してしまうため、ヒスタミンなどのアレルギー物質が大量に放出され、息が苦しくなる・皮膚が痒くなるなどの様々な症状が生じます。

この時、アレルギー物質に対して反応する抗体が「IgE抗体(免疫グロブリンE)」というタンパク質です。IgE抗体は各食べ物によって異なるため、牛乳アレルギーの人が卵を食べてもアレルギー反応が出ることはありません。

食物アレルギーの人は普通なら反応しないものに対し抗体が反応してしまうため、症状を起こす原因となる食物を避ける必要があります。

食物アレルギーの症状

食物アレルギーの人を苦しめる最も多い症状は、じんましんなどのかゆみを伴う皮膚症状です。約80~90%の人に皮膚症状が見られます。

次点で20~30%の人が発症している呼吸器症状です。呼吸困難や止まらない咳、「ヒューヒュー」「ゼロゼロ」という喘息のような呼吸に苦しむことがあります。

他にも、唇やまぶたが腫れる粘膜症状や、腹痛・嘔吐・下痢などの消化器症状が出る場合もあります。神経症状が出るケースもあり、頭痛が起こる・急にぐったりするなどの症状や、意識障害を起こすこともゼロではありません。

さらにひどくなると急性アレルギー反応を引き起こし、ショック状態に陥ります。血圧の低下とともに深刻な意識障害や活動性の低下を招き、直ちに処置しないと死に至る危険性があります。この急性アレルギー反応のことを「アナフィラキシーショック」といい、とくに注意が必要です。

特殊な食物アレルギー

上記で説明した、アレルギー症状を起こす原因となるものを食べるとすぐに症状が出るものを「即時型アレルギー」と呼びます。中には食べただけではすぐに症状が現れない特殊なアレルギーも存在します。

口腔アレルギー症候群

口腔内に症状が現れる疾患です。

口の中に蕁麻疹ができ、喉のかゆみやイガイガ感などの違和感を覚えることもあります。多くの場合、症状は口腔内の症状のみあらわれます。原因となる食物としてはモモやリンゴなどの果物や野菜で、樹木や草花の花粉に対するアレルギーによって生じてくるので、花粉-食物アレルギー症候群とも呼ばれています。

口腔アレルギー症候群の場合も、まれにショック状態に陥る危険があります。

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

特定の食べ物を食べただけでは症状が出ず、食後に激しい運動をすることで症状が出る稀な疾患です。

また、特定の食べ物を食べた後に運動をすれば、必ず発症するわけでもありません。ストレスや体調なども関わっていると言われています。原因となる食べ物は小麦製品や甲殻類が多いです。

症状はまず蕁麻疹が出現してから呼吸器症状に発展していきます。最終的に、ショック状態に陥る可能性もあります。

食物アレルギーの治療

従来、食物アレルギーの治療法はアレルギー物質を摂取しない方法や、症状を発症してからの対症療法を主に行ってきました。しかし、現在では新たな治療法の研究も進められています。

除去療法

アレルゲンとなる食物を特定し、必要最低限の食物を食事から除去する治療法です。

除去療法では、どの食品にアレルゲンが含まれているのか学び、栄養表示の見方を理解できるように指導します。また、除去療法では除去した食物の栄養を別の食材で補うことも重要です。

食品の除去とあわせて抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の薬物療法も行います。

症状が出た時の対症療法

アレルゲンとなるものを口にしてしまった時は症状に応じて経口薬や吸入、注射を行います。

蕁麻疹などの皮膚症状が現れた時は抗ヒスタミン薬の投与が一般的です。

呼吸器症状の場合は吸入薬で呼吸を楽にします。しかし、呼吸症状が現れた場合、ショック状態になることも少なくありません。呼吸症状が出たらすぐに医療機関の受診が必要です。いきなりショック状態を呈した場合は「エピペン」というアドレナリンを太ももに注射する必要があります。

経口免疫療法(食物経口負荷試験ともいわれています)

現在研究段階である経口免疫療法は、希望した人のみに行われている治療方法です。この治療法は必ず医師の指導を受けて行う必要があります。

医師の指導を元に、特定の食物を症状が出ないごく少量から経口摂取することで、アレルギーに対する耐性をつけて症状を出ないようにする治療方法です。摂取後は定期的に症状の有無を確認し、一定時間が経過しても症状が出ない場合は徐々に量を増やしていきます。量を増やす過程で症状が現れる場合もあり、患者にとっては辛い治療です。

経口免疫療法はあくまでも研究段階であり、自宅など医師の指導の元以外で行うのは大変危険です。自己判断をせず、必ず医師の指導を受けて行いましょう。

注意すること

現在では、食品衛生法に基づき「卵・乳・小麦・そば・落花生・エビ・カニ」の食材は表示する義務があります。

上記の食材は発症頻度が高い、または、重篤な症状に陥りやすいため、微量でも含まれていると必ず表示があります。上記以外のアレルゲンは加工食品の場合表示されていない可能性もあるため、加工食品を食べる際は注意が必要です。

また、コンビニエンスストアや飲食店などの店内で調理されたものには表示の義務がありません。たとえば、ホットスナックやおでんなどです。表示の義務はありませんが、店員に尋ねることはできます。食物アレルギーがある場合は、アレルゲンが含まれていないか確認する必要があります。

この記事の監修

はるた呼吸器クリニック 院長春田 吉則

このたび2018年12月、広島平和公園近隣である堺町におきまして新規開院させていただきました、はるた呼吸器クリニック院長の春田吉則と申します。
大学病院勤務時代には、喘息・アレルギー専門外来にて15年余り診療経験を積み、また主たる基礎・臨床研究におきましても喘息研究に専念してまいりました。また医薬連携活動として「アズマネット広島」の事務局として企画、運営させていただいており、広島市薬剤師会および広島大学病院薬剤部の薬剤師の方々と連携し、ぜんそく患者さんのための活動を10年余り携わってきました。
今後もここ広島におきましてアレルギー・呼吸器領域の専門クリニックとして、これまでの経験と連携を活かし、微力ながら地域の方々の健康のため貢献できるよう切磋琢磨して参りたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致します。

【経歴・資格・所属学会】

※略歴
広島大学医学部卒業
中国労災病院・広島大学病院・広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀等で勤務

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