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腸チフス | 症状から調べる | ファミリードクター

腸チフス

腸チフスとは、チフス菌に感染することで全身に様々な症状が現れる病気です。特に東南アジアや中南米、アフリカで多く発生しており、定期的に世界中で流行しています。日本でも昭和初期から終戦後にかけて流行しましたが、衛生環境が改善したことから現在は毎年20~30人程度と発生率は大幅に低下しています。近年日本で発症した患者の多くは、腸チフス流行地域からの帰国者です。

腸チフスの原因

腸チフスはチフス菌に感染することで発症します。チフス菌を含んだ水や食べ物を摂取する感染経路が一般的です。東南アジアや中南米、アフリカ等腸チフスが流行している国への渡航がきっかけで感染することが多いですが、これらの国から輸入された食品を食べることで感染する場合もあります。

腸チフスの症状

腸チフスには約2週間前後の潜伏期間があり、その間も人に移す可能性があります。潜伏期間は、摂取した菌量が多いほど短期間となります。

潜伏期間が経過すると徐々に症状が現れ始め、38℃を超える高熱・頭痛・全身倦怠感・咳・発疹・便秘・下痢等が起こります。腸チフスには高熱で脈が遅くなる特徴があります。また、一度解熱しても再度発熱する可能性があります。

さらに重症化すれば、意識障害や難聴、腸出血が起こったり、腸壁に穴が開くこともあります。特に、腸出血や穿孔は命に関わる危険性があります。

腸チフスは合併症を引き起こすこともあり、合併症を併発すると死に至ることもあります。しかし、多くの腸チフスは発症から4週間程度で回復します。

腸チフスの治療と予防

腸チフスの治療

腸チフスの治療は、チフス菌に効果を持つ抗菌薬の内服が一般的です。抗菌薬の使用により症状を改善し、死亡リスクを低下させます。抗菌剤を使用すると、死亡リスクは1%未満になると言われています。

チフス菌に効果を持つのはフルオロキノロン系抗生物質で、主にシプロフロキサシンが用いられます。しかし、南アジア等では薬剤耐性菌が確認されており、薬剤耐性菌に感染している場合はシプロフロキサシンが効かない恐れがあります。

世界中で一般的に使用されている抗菌薬は「クロラムフェニコール」です。しかし、クロラムフェニコールは血球を作る骨髄の細胞を傷つける危険があることから、日本では使用を推奨されていません。

抗菌薬が処方された場合には症状の有無に関わらず、処方された期間中は適切に服用することが大切です。また、腸出血が起こる危険性もあるため、完治するまでは安静に過ごさなければなりません。

正しい治療を行わなければ、生涯にわたり保菌者となる可能性があります。腸チフスは周りの人に移す可能性がある危険な病気です。自分自身を守るだけではなく、周りの人を守るためにも正しい治療を受けて下さい。

腸チフスの予防

腸チフスに最も効果的な予防策は「手洗い」です。帰宅時や食事の前、トイレの後等、こまめな手洗いを徹底しましょう。

腸チフス流行地を訪れた際には、氷や煮沸処理・塩素処理されていない飲料水、生野菜や常温で調理・保存された食品は口にしないことが重要です。水はボトル入りを飲むように徹底して下さい。また、胃切除後や制酸剤内服中は感染のリスクが高まるため、特に注意が必要です。

腸チフスにはワクチンもあります。腸チフス流行地へ渡航する場合や、家族に保菌者がいる場合には、経口ワクチンや多糖体ワクチンの接種で予防を行いましょう。なお、ワクチンを摂取すれば必ず腸チフスを発症しないという訳ではありません。ワクチンの予防効果は50〜80%と言われています。ワクチンを摂取したからと安心せず、手洗いや食事には十分に注意しましょう。経口ワクチンは5年後に、注射ワクチンは2年後に追加ワクチンを摂取することで、より効果が高まります。

この記事の監修

仁愛内科医院 院長今川 宏樹

わたしの専門は消化器内科で、これまで特に食道がん、胃がん、大腸がんの内視鏡治療に力を入れてまいりました。その中で病気は早期発見して治療することが大切であると痛切に感じております。たくさんの方々のがん予防と早期発見に貢献するため、当院では皆様に安心して内視鏡検査を受けていただけるよう、できる限り痛みのない、苦しくない検査を心がける所存です。

また複数の基幹病院で消化器内科だけでなく、総合内科専門医としても経験を重ねてまいりました。その経験を生かし一般内科や生活習慣病の治療などにも積極的に取り組んでいきます。

地域の皆様のかかりつけ医として身体の不調や健康面のことなど些細なことでもお気軽にご相談ください。仁愛内科医院をどうぞよろしくお願いいたします。

【経歴・資格・所属学会】

※略歴
広島大学医学部医学科卒業
広島大学医学部附属病院・県立広島病院・中国労災病院・井野口病院・公立みつぎ総合病院・JA尾道総合病院・国立病院機構 呉医療センター・広島記念病院などで勤務

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