広島の子育て世代に向けた、医療・健康・暮らしにまつわる情報を発信

スポーツ障害 | 症状から調べる | ファミリードクター

スポーツ障害

スポーツ活動中の反復性の動作により組織の損傷を生じた場合をスポーツ障害と呼びます。スポーツによって、一定に部位に負荷が繰り返され、負担が積み重なることで慢性的な痛みを伴う症状が続きます。スポーツ障害の種類は多岐にわたり、足、膝、肘、肩等の負担がかかりやすい箇所での発症が多く、ジャンプやダッシュ等の激しい動作の多いスポーツほどリスクは高くなります。

性別や年齢、スポーツ種目によってスポーツ障害には特徴があり、筋力や骨・軟骨が弱い成長期の子どもや、体力や柔軟性が低下している中高年が運動をし過ぎると発症しやすくなります。特に成長期の子どものスポーツ障害は、野球肘のように発見が遅れると運動器の不可逆的変化を生じ、選手生命を絶たれることもあるため早期発見・早期治療が重要です。

また、スポーツを行うのに適さない靴の着用、栄養状態の低下や睡眠不足の蓄積等も原因として挙げられます。

スポーツ障害の症状

慢性的にダメージが蓄積されることで発症するスポーツ障害は、運動時の痛みや関節の違和感等の軽い症状から現れ、少しずつ悪化し、最終的には安静時にも痛みを感じるようになります。

しかし、慢性的な外力によるものでも、骨に疲労が蓄積されて骨折を引き起こす疲労骨折は、急激な痛みが伴います。

代表的なスポーツ障害

野球肩(投球障害肩)

投球時に痛みが生じる症例の総称です。投球動作は6相に分けられ、各相ごとに肩関節のストレスがかかる部位が異なり、損傷をきたしやすい部位は腱板、関節唇や関節包などです。投球過多、フォーム不良、肘関節や下肢・体幹などの全身的要因により肩関節に負荷がかかり、肩関節前方の緩さや後方の硬さなどが原因として考えられています。まず投球制限による局所の安静を図り、フォームチェックや全身のコンディショニングを行い、肩関節のストレッチや筋力訓練を行います。成長期の子どもにおいては、上腕骨近位骨端線(骨の成長線)が損傷、開大するリトルリーグ肩と呼ばれる病気もあります。

野球肘

成長期にボールを投げ過ぎることで生じる肘の障害のことです。繰り返しの投球動作で肘へのダメージが蓄積され、肘の曲げ伸ばしが悪くなったり、急に動かせなくなることがあります。肘の外側で骨同士がぶつかって起こる外側障害、内側や後方の骨に付いている筋肉や靭帯に骨が引っ張られて起こる内側障害・後方障害があります。代表的な病気として、外側障害では上腕骨小頭離断性骨軟骨炎、内側障害ではリトルリーグ肘(上腕骨内上顆の骨化障害・骨端線離開)が挙げられます。野球以外では、テニスのサーブやバレーボールのスパイクなどのオーバーヘッドスローのスポーツに多く認めます。まず2週間から1ヵ月を目安として投球を禁止し、その間ストレッチや筋力訓練、フォーム修正、全身のコンディショニングを行います。競技再開の目安は局所の症状が完全に消失していることが重要ですが、病状によっては手術も必要となるため、主治医や専門医との相談が必要です。

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)

テニスやバトミントンなどのラケットスポーツではインパクトの時に前腕の筋肉を収縮させるため、筋肉の起始部である肘関節に大きな張力が働きます。この張力の繰り返しのストレスと筋疲労や柔軟性の低下により炎症が生じ、強い握り動作やタオルを絞る動作で痛みが誘発されます。テニスのバックハンドストローク時に肘の外側(上腕骨外側上顆)に生じるものがテニス肘と呼ばれています。テニスだけではなく、バドミントンやゴルフ、剣道等でも発症することがあります。また、フォアハンドストロークやゴルフでは肘の内側に炎症がおることがあります(ゴルフ肘、上腕骨内側上顆炎)。強い握り動作や重量物の保持を避けることや、ストレッチ、テニス肘バンド装着、湿布などの保存療法で、90%が6か月までに治ります。痛みが強い場合にはステロイド注射を行うことがありますが、3回までとされており、多数回の注射は腱の脆弱化を招き、治癒率が低下します。

鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)

他の競技に比べてサッカー選手での発生が多くみられ、一旦かかると治癒に時間がかかることが多いです。ランニングや起き上がり、キック動作で鼠径部やその周辺の色々なところに痛みが出現します。痛みの部位としては、鼠径部、下腹部、睾丸後方、大腿の付け根の内側、臀部があります。体幹から股関節周辺の硬さや筋力低下、不自然な使い方により、可動性・安定性・協調性の機能が低下し、痛みと機能障害の悪循環を生じて、症状が慢性化します。足首の捻挫や下肢の肉離れ、腰痛などの何らかの原因で可動性・安定性・協調性に問題が生じたまま、無理をしてプレーを続けると起こり易くなります。また、片足で立ってキックするサッカー動作そのものが発症の誘因になります。可動性・安定性・協調性の問題点を評価し、それを修正するアスレチックリハビリテーションを行います。予防としては、足首の捻挫などのけがをしたら、身体全体のバランスが崩れるので、そのまま無理にプレーを続けない、オフ明けに発症しやすいので、オフ明けには準備運動を入念に行うなどです。

オスグッドシュラッター病(Osgood-Schlatter病)

サッカーやバスケットボールなどをしている子ども(小学高学年~中学)に多く見られます。飛んだり、跳ねたり、ボールを蹴る動作の繰り返しにより、お皿の下の骨(脛骨粗面)に負担がかかり、痛みが生じます。休んでいると痛みがなくなりますが、スポーツを始めると痛みが再発します。痛みがある場合は、アイシングをしたり、スポーツや痛みを誘発する動作は控えましょう。治療としては、大腿四頭筋などのストレッチや専用の固定装具を使うなどします。お皿の骨(膝蓋骨)が似たような状態となる、シンディングラーセンヨハンソン病(Sinding Larsen-Johansson病)という病気もあります。

ジャンパー膝

バレーボールやバスケットボール等のジャンプ動作を繰り返す競技に多く見られます。ジャンプ動作を長時間繰り返すことによって、筋肉や腱が骨に付く部分に炎症が起こり、膝に痛みが生じます。代表的な部位は、膝蓋腱(お皿の下の靭帯)や大腿四頭筋腱(お皿の上の筋肉)です。痛みがある場合は、アイシングをしたり、スポーツや痛みを誘発する動作は控えましょう。治療としては、大腿四頭筋やハムストリングスなどのストレッチや大腿四頭筋の筋力訓練などを行います。ランニングなどによる膝の使い過ぎ症候群として、鵞足炎(膝の内側の痛み)や腸脛靭帯炎(膝の外側の痛み)といった、腱や靭帯が骨に付く部分で炎症が起こる病気もあります。

シンスプリント

陸上競技の中・長距離選手やサッカー、バスケットボールなどの走ることの多いスポーツで、中学・高校生の選手(特に新人選手)に多くみられ、疲労がたまった時に発症しやすく、すねの内側に痛みが起こる障害です。ひらめ筋などの足首を底屈する筋肉が繰り返し骨をけん引することで骨膜に炎症が起こることが原因です。症状が強く持続する場合には、疲労骨折の可能性があります。要因として、扁平足や回内足などの障害が発症しやすい足の形や足関節の柔軟性低下や筋力不足、すり減った靴の使用などが挙げられます。痛みが強い場合は慢性化を避けるために運動量を減らす必要があり、アイシングや湿布薬の使用、足底や足関節周囲の筋力強化やストレッチを行います。インソールも効果的で、クッション性がよく、かかとの安定した靴を選ぶことも重要です。

疲労骨折

1回の大きな力による通常の骨折とは異なり、骨の同じ部位に繰り返し加わる小さな力によって、骨にひびがはいったり、ひびが進んで完全な骨折に至った状態を言います。スポーツ選手では短期的に集中的なトレーニングを行った時に起こることが多いです。要因としては、アンバランスな筋力、柔軟性低下、未熟な技術、オーバートレーニング、不適切な靴などが挙げられます。好発部位としては、脛骨(すねの骨)、中足骨(足の甲の骨)、肋骨、腰椎などがあります。明らかな外傷がなく、慢性的な痛みが続く場合には疲労骨折を疑います。レントゲンではわからないことが多く、MRIなどの精密検査を行います。多くの場合、局所を安静にすることで治りますが、時には手術が必要となる場合があります。早期発見・早期治療が重要なので、慢性的な痛みが続く場合は病院を受診して下さい。

足のスポーツ障害

全体重がかかる足には、陸上競技やサッカー、バスケットボールなどのランニングやジャンプ動作が多いスポーツにおいて、慢性的な障害が多く発生します。足は、骨が縦横のアーチを形成するように靭帯で結ばれ、筋肉や腱がこれを補強しています。スポーツにより衝撃を受け続けると、足の骨や軟骨、靭帯や腱に障害をきたし、痛みが発生します。要因としては、足の使い過ぎ以外に、足の柔軟性の低下や筋力不足、扁平足などの障害が発生しやすい足の形、不適切な靴、悪い路面での練習などが挙げられます。よく起こる病気として、母趾種子骨障害(母趾の裏側)、外脛骨障害(内くるぶしのやや下)、足底腱膜炎(かかとの裏)、踵骨骨端症(かかと)、踵骨滑液包炎(かかと)、アキレス腱症などがあります。いったん障害が発生したら、練習量を減らしたり、一定期間の休養が必要です。これに加えて、アイシングや低周波などの理学療法、湿布薬やステロイド局所注射、インソールの使用も考えられます。発生要因をよく考えて、その要因を取り除くことが大切です。足部や足関節周囲のストレッチや筋力訓練、足にフィットした靴の選択も必要でしょう。

スポーツ障害の予防と治療

スポーツ障害の予防

スポーツをする前には、しっかりとウォーミングアップやストレッチ等を行い、スポーツの後には15分程度のアイシングを行いましょう。過剰なトレーニングを行わないことが重要です。

スポーツに適さない靴の着用も発症の原因となるため、適切な靴を履くことでも予防しましょう。また、硬すぎたり軟らかすぎる練習環境も負担を高めます。

スポーツ障害の治療

スポーツ障害の治療は様々ですが、基本的には安静にすることが大切です。軽度の場合では、患部を安静にすることで症状は改善します。

運動後にだけ痛みが出る軽症の場合や、運動中痛みはあるがプレーには支障がない中等症の場合は、スポーツは続けられるので、適切なコンディショニングによりそれ以上悪化させないことが大切です。コンディショニングとしては、運動の制限や休止、テーピングによる固定、ストレッチや筋力訓練、スポーツ動作の調整などが考えられます。

医療機関での治療としては、リハビリによる運動理学療法、装具やインソール使用、鎮痛剤や注射等を使用した薬物療法などが行われます。しかし、運動時に痛みでプレーに支障をきたす重症の場合や、腱や靭帯が切れてしまったり、高度の軟骨損傷や骨折があるなど最重症の場合、難治性の場合には、手術が必要になることもあります。

スポーツ後、身体に異変や違和感、痛みが生じた場合や繰り返す場合にはなるべく早く診察を受けましょう。

この記事の監修

やまぐち整形外科リハビリクリニック 院長山口 一敏

昭和47年に前院長が当地に山口整形外科病院を開業させていただき、私もこの祇園で育ちました。高校卒業後は県外で過ごしましたが、平成15年に広島に戻り、平成26年より山口整形外科病院・副院長として祇園に戻ってまいりました。子供の頃はまだ近所に田んぼや畑がたくさんあり、近くの野山で虫捕りや魚釣りなどをして遊んでおりましたが、今では大型商業施設もある現代的な街に変化し、時の流れと年齢を感じざるを得ません。患者様に対して専門的な言葉や用語はできるだけ使わず、わかりやすい言葉でご説明するように心がけております。説明がわかりいくい時や疑問に思われることがあれば、遠慮なくおききください。前院長が築いてきた地域に根差した医療を継承し、適切な診断・治療とともに、患者様の思いに寄り添う医療をこれからも続けてまいります。

【経歴・資格・所属学会】

【経歴】
1986年 修道高校卒業
1996年 同志社大学卒業
2003年
 関西医科大学卒業、広島大学整形外科学教室入局
 広島大学病院(研修医)(~9月)
 マツダ病院(研修医)(~2005年3月)
2005年 松山市民病院
2007年 広島共立病院
2009年 安芸太田病院
2014年 山口整形外科病院
2021年 やまぐち整形外科リハビリクリニック開業

【資格】
日本整形外科学会認定整形外科専門医

【所属学会】
日本整形外科学会

掲載情報について

本サービスは情報提供サービスであり、本サービスにおける医師・医療従事者等による情報の提供は診療行為ではありません。
診療を必要とする方は、必ず医療機関や医師にご相談の上、専門的な診断を受けるようにしてください。
本サービスで提供する情報の正確性について適正であることに努めますが、内容を完全に保証するものではありません。
※掲載情報には自由診療の内容が含まれている場合がございます。費用等については、直接医療機関にお問い合わせください。

トップ