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COPD(慢性閉塞性肺疾患) | 症状から調べる | ファミリードクター

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

COPDとは肺の生活習慣病の一種で、正式名称を慢性閉塞性肺疾患と言います。英語表記であるChronic Obstructive Pulmonary Diseaseの頭文字を取ってCOPD(シーオーピーディー)と呼ばれています。現代では慢性気管支炎や肺気腫等をまとめた疾患の総称として取り扱っています。

主に、タバコが原因で生じるこの疾患は、患者の多くが40歳以上の中年期で、日本には530万人程いると言われています。気管、気管支、肺胞と3つの構造でできている肺の機能が低下することで、呼吸がし辛くなり息切れを起こしやすいことがこの病気の特徴です。

COPDの原因

肺は、空気中から酸素を体内に取り込み、体内で作られた二酸化炭素を排出する機能を持つ臓器です。取り込まれた酸素は肺を通り、血液と共に体中へと巡ります。

しかし、長期間に渡り喫煙を続けると、タバコの有害物質により気管支の炎症が生じ、また肺胞が破壊され、気管支が狭くなり換気機能が低下します。タバコに含まれる有害物質でも、特に健康被害が懸念される主な成分は「タール」「ニコチン」「一酸化炭素」です。

長期に渡り刺激され続けた肺は肺胞の弾力性が失われ、気管支に炎症を起こします。その結果、咳や痰が増えて、さらに気管支の内側が狭い状態となり、息苦しさから息切れに繋がります。

日本におけるCOPDの患者90%が、タバコが原因での発症と考えられています。また、タバコの他にも、大気汚染や有害物質の吸入が原因となる場合もあります。

COPDの症状

COPDに多く見られる主に症状は、息切れ、咳・痰の3症状です。

息切れ

息切れは、COPDで最も多い症状です。運動や、階段の昇降等動きのある動作をする際に息切れを感じやすくなります。病気の悪化と共に息切れは強くなり、次第に何もしていない状態でも息苦しさを感じるようになります。

咳と痰

咳と痰は息切れと同等に多い症状です。COPDを発症した場合の咳と痰は長く続くことが特徴です。しかし、この2つは誰にでも普遍的に起こる症状の為、風邪や年のせいであると見過ごされる可能性があり、注意が必要です。感冒などによる気道感染時には、膿を伴う痰が急に多くなることもあります。

中枢神経系の障害

睡眠障害やうつ病、認知症等を併発する恐れもあります。

虚血性心疾患

長期にわたる喫煙による動脈硬化から生じる心臓疾患で、冠動脈の狭窄や閉塞による死に至ることのある病気です。さらに肺機能の低下に伴い、酸素の運搬が上手く行われないことで悪化するリスクのある疾患です。血流が悪くなることで胸を締め付けるような痛みや苦しさを感じる「狭心症」や、狭心症より重度の「心筋梗塞」が含まれる為、命の危険もあります。

肺がん

COPDの患者とそうでない人を比べた時、COPD患者の方が肺がんになる可能性が約10倍高くなると言われています。また、COPDの患者が肺がんを併発した場合、外科手術が容易でない、合併症を起こしやすい、各種治療法の妨げとなる等、その後の治療経過にも重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

持病の悪化

COPDの治療がスムーズに行かない場合、高血圧や糖尿病などの持病を持っている人は持病の管理状態も悪くなるケースがあります。双方の治療をスムーズに行う為にも、COPDが進行する前に対処することが最善です。

COPDの治療

COPDの進行を防ぎ、症状を改善させる為にはまずは禁煙が必須です。自力での禁煙が難しい場合は早めに医師に相談し、必要であれば禁煙外来を受診する事も可能です。いずれにせよ、早期の対策が必要な疾患である為、異変を感じた時は早めに医療機関を受診しましょう。

また、COPDを診断する検査方法には、肺活量等を測定するスパイログラム(スパイロメータ)と呼ばれる肺機能検査が用いられます。肺機能の数値を基に肺の老化度を診断します。その他の検査方法では、血液検査やX線、CTスキャンなどがあります。COPDは肺がんの発症率が上がる懸念もある為、これらの検査で定期的な検診を行うことが大切です。

他にも、代表的な治療方法は以下の5種類です。

薬物療法

一般的に、気管支を広げて呼吸がしやすくなる薬剤(気管支拡張薬)を使用します。

吸入薬で使用されることが多く、これらの薬剤は狭くなった気管支にアプローチするものであり、失われた肺機能を再生するものではありません。また、薬剤を自己判断でやめてしまった場合は症状が再び現れる為、継続的な治療が望まれます。気管支拡張薬を中心とした吸入薬治療を症状が軽い早期に使用することで、悪化のスピードを大幅に遅らせることが可能だという臨床試験データがあります。
吸入薬の他には、ホクナリンテープといった貼り薬や、徐放性テオフィリン薬、ステロイド等があります。

ワクチン接種

肺炎の病原体の一つである肺炎球菌やウイルスの感染は、COPDの悪化に関係することから、一般的には肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンなどの接種が推奨されています。

リハビリテーション

COPD患者の心身を安定化させ、薬物療法の効果が高まる期待があります。リハビリを行う患者は、基本的に中等症以上の症状で適応されますが、病院や主治医の判断によります。

食事療法

栄養バランスを考えた食事内容で、体重のコントロールや体調管理をする治療方法です。

呼吸機能の低下に伴い、低栄養の状態に至りやすくなり、また身体を動かすことが減ってしまい筋肉量が減少して筋力低下や身体機能低下をきたした状態であるサルコペニアを起こすため、食事療法も大切です。必要な人には、管理栄養士による指導が入ります。

酸素療法

室内の空気より濃度の高い酸素を、専用機器を用いて投与します。自宅での治療を行うことができる為、全国で約15万人の人が使用していると言われており、在宅酸素療法とも呼ばれています。

COPDの予防

COPDを予防する方法は複数あり、中でも有効だとされているものが以下の3つです。

禁煙

COPDを予防する為には、喫煙者は禁煙、非喫煙者は副流煙を避けることが最も重要です。禁煙をすることは、肺機能、呼吸機能の低下を防ぐ為、COPDを避けることに最も有効と言えます。また、副流煙は主流煙よりも有害物質を多く含んでいる為注意が必要です。

正しい呼吸法

適切な呼吸法を知り、日常生活を効果的な呼吸法で送ることは息苦しさの軽減に役立ちます。

息切れに効果的な呼吸法が「口すぼめ呼吸」です。やり方は簡単で、まず口を閉じた状態で鼻から息を吸い込みます。次に口を小さくすぼめ、吸う早さの2~5倍程度時間をかけてゆっくり息を吐きます。

ウォーキング等軽い運動の際に効果的な呼吸方法は、2歩の間に鼻からゆっくり息を吸いこみ、4歩の間に口をすぼめてゆっくり息を吐き出す方法です。これにより、体内で効率よく空気を循環させることができます。

感染予防対策

風邪やインフルエンザ等の感染症で呼吸器が弱まらないよう、日常生活でも気を配ることが大切です。手洗いやうがい、運動習慣を身につけ、健康な体作りをすることが予防に繋がります。

この記事の監修

はるた呼吸器クリニック 院長春田 吉則

このたび2018年12月、広島平和公園近隣である堺町におきまして新規開院させていただきました、はるた呼吸器クリニック院長の春田吉則と申します。
大学病院勤務時代には、喘息・アレルギー専門外来にて15年余り診療経験を積み、また主たる基礎・臨床研究におきましても喘息研究に専念してまいりました。また医薬連携活動として「アズマネット広島」の事務局として企画、運営させていただいており、広島市薬剤師会および広島大学病院薬剤部の薬剤師の方々と連携し、ぜんそく患者さんのための活動を10年余り携わってきました。
今後もここ広島におきましてアレルギー・呼吸器領域の専門クリニックとして、これまでの経験と連携を活かし、微力ながら地域の方々の健康のため貢献できるよう切磋琢磨して参りたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致します。

【経歴・資格・所属学会】

※略歴
広島大学医学部卒業
中国労災病院・広島大学病院・広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀等で勤務

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