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くも膜下出血 | 症状から調べる | ファミリードクター

くも膜下出血

くも膜下出血とはくも膜下腔という場所を走行している脳の太い血管のこぶが破れて出血した状態のことです。こぶが破裂すると一気に出血が拡がり急激に頭蓋内圧が高まり、呼吸停止、心停止を来たすことがあります。死亡率が非常に高く、短時間で重い障害に至る可能性がある病気です。また脳卒中の中で唯一、男性より女性の発症が多いとされています。

くも膜下出血の原因

約90%は脳動脈瘤という血管のコブに圧力が加わって破裂することで発症すると言われています。脳動脈瘤には自覚症状がなく、なぜ出来るのかは明らかにされていませんが、遺伝が関与している場合もあります。通常は分岐部等の血管の弱い部分に出来やすい特徴があります。脳動脈瘤には、嚢状動脈瘤、紡錘状動脈瘤、解離性動脈瘤といった種類があります。くも膜下出血を引き起こす要因には高血圧や喫煙、多量のアルコール摂取等生活習慣に基づいたものがあります。

脳動脈瘤は通常5ミリ以下の大きさですが、5ミリ以上になると手術適応があると言われています。大きくなると脳や神経を圧迫し、稀に症状が現れることがあります。

破裂していない脳動脈瘤は年間約0.5~1%の確率で破裂するとされていますが、出来た部位やサイズ、形によって破裂率は変わります。破裂脳動脈瘤には手術でも治療が困難な時があります。しかし未破裂の場合は手術を行うことでくも膜下出血を防ぐことが出来るため、適切な判断が重要です。

くも膜下出血の症状

くも膜下出血の症状は、突然の激しい頭痛、めまい、嘔吐等です。くも膜下出血が原因で起きる頭痛は、よくバットで思いきり殴られたような痛みだと言われていますが、これは脳動脈瘤が破裂し、脳に掛かる圧が非常に高くなる(頭蓋内圧亢進)からです。しかし、必ずしもこのような激しい頭痛が起こる訳ではなく、軽微な頭痛の場合や、突如として呼吸停止・心停止を来たし意識を失い昏睡状態に陥ることがあります。

くも膜下出血の重症度は主に発症した際の意識障害がどの程度かによって決まります。意識がはっきりせず、昏睡に近い状態になる程重症と診断されます。そのようなケースでは治療を行っても回復が難しいのが実情です。では、くも膜下出血が起きる前にはどのような前兆があるのでしょうか。

一つは血圧の急激な変化です。血圧の大きな乱高下を数日間くり返した後にくも膜下出血を起こす例があったため、このような症状が見られる時は注意が必要です。

また、脳動脈瘤からのわずかな出血によっておこる軽度の頭痛「警告頭痛」が見られることがあります。嘔気・嘔吐を伴った頭痛が1~2日持続しますが、自宅で様子を見てしまい見逃される場合がほとんどです。

他にもまぶたが下がる、物が二重に見えるといった目の異常や、頭にもやがかかったような違和感を感じる人もいます。これらの前兆は暫くすると治まることが多いものの、数日後経ってから大きな発作(本格的な出血)を起こす例もあります。このような症状があった時は出来るだけ早く受診して下さい。

くも膜下出血の治療

まず出血の有無を確認するためCT検査を行います。発症から時間が経っていたり、頭部CT検査で出血の有無の判断が難しい場合、施設や医師の裁量にもよりますが腰椎穿刺を行うことがあります。これは腰から針を刺して脳の髄液を調べ出血の有無を確認する検査です。

そして出血が認められたら、出血部位を特定するため脳血管造影検査を行います。これはカテーテルを動脈に挿入し首から頭の動脈まで到達させ、造影剤を注入して動脈の輪郭を写すという方法です。

外科的処置にはクリッピング術と血管内コイル塞栓術があります。クリッピング術は開頭し専用の手術顕微鏡を使って出血を取り除きながら脳動脈瘤を出し、金属製のクリップを用いて動脈瘤頚部を閉鎖する方法です。また脳血管攣縮(術後に血管が細くなる合併症)の予防のため、くも膜下に出た出血を出来るだけ取り除いた上で、脳の隙間から入れた管から髄液の排出や、薬を入れて残った血腫を洗い流す治療を継続することがあります。

血管内治療(コイル塞栓術)は、カテーテルを動脈瘤がある部分まで進め、細いプラチナ製のコイルを動脈瘤の中に詰めて出血を防ぐ方法です。手術をしてから2週間は非常に不安定な状態が継続しますが、30%の人は殆ど後遺症なく回復します。しかしそれ以外の方は、治療が適切なタイミングで施されたとしても何らかの後遺症が残る可能性があります。これは発症時の重症度にもよります。

考えられる後遺症は、意識障害(手術をしても意識が戻らない事もあります)、体の片側の筋力低下や麻痺、感覚消失や言語障害、高次脳機能障害があります。後遺症のためリハビリテーションが必要となる方もありますが、脳の機能でも特に判断力の低下や言語障害のような高次脳機能障害が残った場合は、回復のためのリハビリテーションには長い年月がが掛かります。くも膜下出血は発症すると死亡率が半数近いと言われている恐ろしい病気ですので、気になる症状が出現した時は、自己判断をせずにまずは専門医の診断を受けましょう。

この記事の監修

ながお脳神経外科クリニック 院長長尾 光史

超高齢化社会を迎えつつある日本において、これからの医療は予防医学がますます重要となってくる中で、脳卒中は3大死因のひとつでもあり、また寝たきりになる原因疾患の第1位です。その再発予防はさることながら、いかに発症を予防していくかが最重要であると考えています。
そこで、高血圧症、高脂血症、糖尿病などのいわゆる生活習慣病を背景とした動脈硬化の予防管理も含め、既存のクリニックにはないMRI機器を導入することにより、早期発見・早期治療に努め脳卒中の予防を中心に地域の皆様の健康維持に微力ながら貢献してまいりたいと思っております。不安を持っておられる方が気楽に受診できる環境を整え、迅速に検査を行い当日結果説明ができる体制をとっておりますので、どうぞお気軽に受診、ご相談ください。

【経歴・資格・所属学会】

略 歴
平成7年5月 大阪医科大学附属病院 脳神経外科教室 入局

[主な勤務病院]
畷生会脳神経外科病院
翠清会梶川病院
弘田脳神経外科病院
大阪府三島救命救急センター
児玉病院
大阪医科大学附属病院 麻酔科
みどりヶ丘病院
新生病院 部長
荒木脳神経外科病院 副院長
平成22年12月 ながお脳神経外科クリニック 開院

免許・資格
平成7年5月 医師免許取得 平成13年7月 医学博士号取得 平成13年8月 日本脳神経外科学会専門医取得

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